《暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが》第60話 〜ナンパのテンプレ〜

船の中ではこれと言ったトラブルはなく、むしろ船を降りた後にトラブルが向こうからやって來た。

いや、俺が呼んだのだろうか。

「おいそこのガキ、隣のエルフ置いて失せな」

「・・・は?」

そう、すっかり失念していたのだ。

アメリアが類まれなる貌の持ち主だという事と、その隣に平凡顔が並ぶととても目立ってしまう事を。

あっという間に獣人族の男達に囲まれる。

皮のせいであまり良く分からないが顔が赤いし、酒の強烈な匂いがするため、きっと朝からずっと飲んでいたのだろう。

そして、その男達はこれみよがしに首から冒険者ギルドのドックタグを下げていた。

は黃

裝備からして、見るからに戦士パーティーだ。

は今のところ一番上の金の下の下の下くらいだろうか。

下から數えると三番目だから、下から數えた方が早いな。

フェイクならともかく、世界眼でも男達が戦士系のスキルしか持っていないことは確認済みだ。

雑魚・・・いや、モブ?

よく漫畫でいる、顔すら描かれないやつだな。

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と言うか、ごつい男の貓耳と尾って需要ないし、気持ち悪い。

せめて顔を整形するか貓耳と尾とってから出直してこい。

心の中で俺がそんなことを考えているとは知らない獣人族の男達は、俺がビビって何も言えないと思い、下卑た笑い聲をあげた。

俺は周りに聞こえないように深々とため息をついた。

「・・・はぁ、テンプレ回収。俺乙」

「アキラ、私が潰そうか?」

「いや、俺がしないとずっと狙ってくるだろう」

アメリアと出會った頃に思っていた事が的中した。

そう言えば、貌揃いのエルフ族はともかく、普通の人間がこれだけいる中を歩くのは初めてかもしれない。

「おい、何ごちゃごちゃ言ってんだよ。男には興味ないぜ?それとも、お前の方があんのか?」

リーダー格の男がイライラしたようにそうんだ。

短気は損気だぞ、と言いたいところだが、今のセリフにはカチンときた。

「誰が何に興味あるって?」

自分でも口角が上がるのが分かる。

夜が肩から俺を止めようと必死に聲をかけているが、後で聞こうとスルー。

さて、こいつらをどうしようか。

俺をホモ扱いするだけならともかく、アメリアを汚い目でじろじろ見るなよ。

「とりあえず、相手してやるから死にたいやつから來いよ」

「あ゛?」

そうは言っても殺す気はサラサラない俺は暗も“夜刀神”も出さないまま、指をクイッと曲げた。

「人族のガキが獣人族の俺達に勝てるとでも言ってんのか?」

「てめえこそ、逃げるなら今のうちだぜ?」

「ママのしくなる頃じゃねえのか?」

「俺達を敵に回したらやばい事になるぜ?」

今度はアメリアがぴくりと反応した。

肩の上で夜がやれやれと呆れたように首を振る。

「あなた達こそ、こんな所で騒ぎを起こしたりしたら不味いと思うけど」

なんだなんだと俺達の周りにワラワラと集まってくる一般市民を見てアメリアが言う。

今まで黙って俺に守られるだけだったアメリアが喋ると、途端に男達はめきたった。

反応したのは、アメリアの言葉にではなく、そのしい聲にだが。

「おい、聞いたか?今の聲」

「ああ、ヤバイな」

「尚更あんなガキには勿ねぇや」

「売ったらいくら位になると思う?」

俺、結構我慢したと思う。

自分を褒めたいくらいだ。

だが、流石に我慢の限界というものがあるんだよな。

俺は手を前に差し出した。

アメリアは俺が何しようとしているのか悟って止めようと手をばしてくる。

が、ひと足早く俺はその言葉を発していた。

「影魔法起

ああ、言っておくが、もちろんこんな街中で影魔法を全力で発したりしない。

アメリアの聲を聞いた一般市民の男達が獣のような目でアメリアを見ていても、行していないだけこいつらよりましだからだ。

それに、今更アメリアにフードを被ってもらっても、ここまで目立ってしまうと無意味だ。

それなら、俺が強いことを証明して諦めてもらう方が斷然いい。

『やるな、主殿』

「ぐぁぁぁぁ!!」

「くっそ!なんだこれ!!」

「ヤバイヤバイ!取れねぇ!」

影を小さくしたものを男達の目にぶつけたのだ。

そして、遠隔作でその影を眼球にコーティングしてやった。

つまり、一時的に目が見えなくなるのだ。

強さを見せつけたことにはなってないが、見る人によれば俺の実力が分かるはずだ。

「ほう、やるじゃないか」

突然、ギャラリーの中から聲が上がった。

人垣が割れ、ざわめく人達の中を一人の長の男がゆったりとした作で歩いてくる。

あの耳と尾は豹だろうか。

黒っぽい服にを包む、爽やかそうな男だった。

だがその顔は能面で、ピクリとも表筋がいていない。

「そ、その聲は・・・!」

「や、やべぇぞ!」

「く、くそっ!!」

「なんであの人がここに!?」

ギャラリーと男達の反応からして、どうやら偉い人のようだ。

若そうなのにすごいな。

あと、やばいやばいうるさい。

「さて、まずは自己紹介といこうか。俺はこの街の冒険者ギルドを束ねる者、名はリンガだ。よろしく頼むよ人族の子」

「俺は織田晶。よろしく。あんたがギルドマスターなら話は早い。これ、エルフの王からの手紙だ」

「ほう、筆不の奴が書くとはなかなかの案件のようだな」

周りの人達は俺がリンガさんをあんた呼ばわりしたことにざわめいているが、當の本人が気にしていないから俺も気にしない。

俺がエルフからの王の手紙を渡すと、リンガさんはその場で開封して読み始めた。

「なるほど、なかなか興味深い。そして字が汚い」

「娘の前で言ってやるなよ」

ちらりとアメリアを見ると、アメリアは気にしていない様子で、それよりもリンガさんの観察に忙しいようだ。

「ふむ、あいつの娘ということはアメリア姫か。この時期に來るとはなかなかがあるな」

「・・・この時期?」

顎に手を當てて心したように呟く言葉に、俺は反応する。

どういう意味だ?

「知らないで來たのか。まあいい、こんな所ではなんだから冒険者ギルドへ行こう。・・・ああちょうど良い所に。ヤマト君、そこの小者達は冒険者ギルドから除名の後、ぐるみを剝がして野に放ってやれ」

「かしこまりました」

くるりと踵を返したリンガさんは思い出したようにいまだに目を抑えて蹲っている男達を冷たい目で見下ろして、近くにいた青年にそう命令した。

どうやら冒険者ギルドで働いている人がたまたま近くにいたらしい。

リンガさんが歩みを進めると、人垣は勝手に開いていく。

人々がリンガさんはに向けている視線は、恐れ。

この人、何をしたのだろうか。

「君もなかなかの策士だな」

ギルドへ向かっている道すがら、人気のなくなった所でリンガさんがそう言って俺を見た。

俺はニヤリと笑う。

「乗ってくれて助かった。これでアメリアは當分安全だろう」

「え・・・。アキラ、どういうこと?」

キョトンとするアメリアと夜。

この二人はやけに素直というか、純粋というか、とにかく策や罠と言ったものにとことん疎い。

俺は二人のために説明した。

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