《暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが》第67話 ~冒険者登録~

「ちょっと待って!」

アメリアはそう言ってクロウの手を摑んだ。

クロウはため息をついて立ち止まる。

「何の用だ、エルフの王

アメリアは息を呑む。

相手をすくめるような視線は、普通の鍛冶師のそれではなかった。

「・・・確かめたくて」

俯いて聲を絞り出すアメリアに、クロウは首を傾げる。

クロウが手に持つ“夜刀神”の刃が白い布に包まれて黒と白のコントラストが目を引いた。

「あなた、もしかして先代勇者様の勇者メンバーだった・・・」

先代の勇者のパーティーメンバーは魔王の討伐に失敗し、勇者と獣人族の代表だけ帰ってきたのだ。

人族とエルフ族はあとしのところで倒れてしまったとか。

クロウは眼力を強めた。

「だから?」

クロウの冷たい目線を耐えて、顔を上げたアメリアはクロウの瞳を真っ直ぐに見つめた。

「戦いを教えてしい」

アメリアが出ていったあと、夜がのそのそとベットから起き上がった。

『主殿、追いかけなくても良かったのか?』

俺は刃がない“夜刀神”の黒い鞘と柄、鍔を懐にしまった。

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ここなら取られる心配もないし、スられでもしない限り安全だ。

まあ、これをスっても刃がない限り価値はないだろうけどな。

「アメリアにもアメリアの考えがあるんだよ。それに、あのアメリアが俺たちに不利になるようなことをするわけがない」

の數と切れ味を確かめて、々なところにしまう。

夜はサイズを小さくして俺の肩に飛び乗った。

一枚の紙がひらりと俺の掌に落ちる。

「俺達は俺達の仕事をしよう。・・・で、夜はアメリアの方についてくれ」

俺とともに行く気満々だった夜は肩の上で用にガクッと崩れ落ちた。

『主殿、明らかに今のは従魔と主の冒険開始だったのではないか?』

俺は夜の首っこを摑んで顔の前まで持ち上げた。

ついこの間気づいたのだが、貓のときは普通の貓のようにこうされると力が抜けるらしい。

ドラゴンのときはその時で逆鱗がちゃんとあるとか。

「俺とお前はどこにいても繋がっていられるが、アメリアはそうじゃない。それに、魔ならこの獣人族の迷宮に潛れば一発で狩れるだろうし、幸いなことに迷宮はこの町にある」

夜は口を尖らせた。

俺の言いたいことが分かったらしい。

「アメリアの気が済むまでそばにいてやってくれ。・・・この大陸にってからというもの、なんか騒ぎがするしな。あと、夕飯までには帰ってくるように伝言も頼む」

金の瞳が俺を黙って見つめ、ふっと閉じた。

『主殿の仰せのままに』

俺は夜を落とすと、宿を出た。

夜はアメリアの臭いを頼りに反対方向へ向かう。

俺はその足で冒険者ギルドへ向かった。

アメリアと夜がいない時の俺はやはりそれほど目立たず、一切注目されることがなかった。

・・・自分で言っていてなんだが、すこし悲しいな。

見つかったら見つかったで面倒くさいことになるのだが。

冒険者ギルドの場所は生憎覚えていなかったが、鎧姿の冒険者達が歩いている方向に行っていたらいつの間にか著いていた。

これも、エクストラスキルの幸運のおかな。

冒険者ギルドにると、リンガと來た時と違い、併設された酒場はよく賑わい、別に設置された依頼表の前には大勢の冒険者が肩をひしめきあっていた。

っていうか、酒臭い。

「すいません、登録はどこですればいいですか?」

出來るだけ丁寧な口調で、初めて來た時に飲みを持ってきたマイルというギルド職員に聲をかけた。

「あ、登録でしたらここで結構ですよ」

俺の顔をちらりと見ても何の反応も示さないと言うことは、やっぱり覚えられていないな。

まあ、暗殺者という職業からしたら願ったり葉ったりだが。

一人の人間としてはあったことのある人に忘れられているというのはやはり悲しいものがある。

更に、このマイルとかいう職員に會ったときはギルドマスターが一緒だったためにかなり強烈な印象だったはずだ。

それなのに、覚えていない。

・・・嬉しいよ畜生。

「文字は書けますか?代筆も可能ですが」

俺の心も知らず、マイルは一枚の紙とペンらしき棒を差し出した。

「いえ、大丈夫です。名前と職業と種族だけでいいんですか?」

マイルが頷いたのを確認して、俺は必要なことをその紙に書き込む。

「・・・はい、これで登録は完了です。こちらが一番最初のランク、灰ランクのドッグタグとなります。一応分証にもなるので無くさないようにいつも首にかけておいてください」

のプレートと俺の報が書き込まれたプレートが通してあるチェーンを首にかけて服の中に押し込む。

「手っ取り早くランクを上げるにはどうすればいいですか?」

どうやらこの街では迷宮に潛るのにランクの規制しているらしく、最低でも黃はないとれない。

今は灰で、その次が青で、それから黃だから、あと二つ上げなければならないのだ。

「ああ、迷宮に潛りに來たのですか?言っておきますけど、あそこの迷宮は人族の迷宮やエルフ族の迷宮のように明確な弱點はなく、理攻撃が弱かったり魔法攻撃が弱かったりまちまちですよ?」

だからこそ臨機応変に対応できるスキルが磨かれるのだが、一般人はそれほど攻撃の幅は広くないため、一點集中型の方がいいのかもな。

「大丈夫です。これでも腕には自信ありますから」

俺の顔をしばらくじっと見た後に、マイルは深々とため息をついた。

「そう言われた初心者冒険者が何人最初の冒険で命を落としたことか・・・。とりあえず、ここの冒険者ギルドでのマナーとルールを言いますので聞いてください。話はそれからですよ」

早くランクを上げて迷宮に潛りたかったが、渋々俺は頷いた。

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