《暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが》第72話 ~アメリアとクロウ~

ーーー迷宮にてーーー

「やばいやばいやばいやばい!!は、早くこのことをギルマスに知らせないと、大変なことにっ!!!」

薄暗い迷宮に、男が慌てて駆け出す音と、の奧から唸るような獣のき聲が響いた。

そして、それに混ざるようにして高いい男の子の聲も。

「ふふふふふふ。全部全部、壊れちゃえ」

「そう。なら、あなたは今何をしているの?」

明らかに言うべきでない言葉をスッパリと言うアメリアに、夜がハラハラと落ち著きなくを揺らした。

そう言えば、アメリアは前から思ったことを率直に言うことが多々あった。

その上、アメリアは人に傅かれることに慣れた王族。

人の気持ちを考えてものを言った事は數える程しかないのだ。

そして、それは全て晶の為だった。

幸いにも、今回はアメリアのその格がいい方向に転んだようだ。

「何も」

そう言って、クロウは自嘲気味に笑った。

クロウが、あの丘の上での一件以來初めて自分のを他人に打ち明けようとしているのだ。

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「俺は所詮妹も助けられない弱蟲だ。それに、とっくに気づいてんだよ。妹が復讐なんかんでいないのを」

クロウが機を毆り、修繕し終わった武であろう重そうなメイスが機の上で跳ねた。

アメリアはそんなクロウを冷めた目で見ている。

夜はそんなアメリアの目を見てゾクリと背中に冷たいものが流れた気がした。

『あ、アメリア嬢?』

呼びかけるも、アメリアからの返答はない。

アメリアの赤い瞳に確かに魔力が宿ったのを夜は見た。

晶とアメリアが持っているという“世界眼”については仲間になったその日に聞いている。

何でも、相手のステータスが見えるとか。

晶は夜に、人間には過ぎたスキルだと言っていた。

そのスキルは常時発しているのだが、魔力を込めると更に別のものも見えるとか。

「・・・私なら、何がなんでも復讐してほしいけど」

クロウが靜かに目を見開いた。

そして、アメリアの怪しげにる瞳を見て息を呑む。

「エクストラスキルか。今、お前には俺がどう見えている?」

クロウはアメリアのそれが“世界眼”であることに素早く気づいてそう言う。

アメリアは靜かに目を閉じた。

『知らないわ。自分で考えて。・・・でも、全てを見る者として助言を一つ。自分が逃げるのに妹を使うのはやめた方がいい。虛しいだけ』

アメリアの瞳にはハッキリと、悲しげな顔でクロウに寄り添う黒貓の獣人族のの子が映っていた。

“世界眼”は全てを見せるエクストラスキル。

幽霊が見えたとしても不思議ではない。

最も、レベルの関係で晶にそんな蕓當は出來ず、アメリアも意識して魔力を込めないと長時間は見えないのだが。

クロウは靜かに瞳を伏せた。

「・・・味かった。今日のところは帰れ」

そう言って、背中を向けるクロウに、アメリアは一禮してその場を去った。

夜はアメリアについて行きながらチラチラとクロウのいる工房の方を気にして何度か振り返った。

完全に工房が見えなくなってからようやくアメリアを見上げる。

『アメリア嬢、良かったのか?』

「いいの。立ち止まって下を向いている人に技を教えて貰っても晶に屆かない。あの人見かけによらず優しい人だから」

出會って數日だろうとその人をさらけ出してしまう“世界眼”に寒気をじながら夜はそうかと呟いた。

そして、珍しく晶関係でない人に気を使っていたかと思えば、やはり晶本位なアメリアにいっそ尊敬の念さえ浮かぶ。

「ふふふふふふ・・・。行け。行って、地上の人間は皆殺しだ」

やれやれと嘆息の息を吐く音が途中で止まった。

アメリアもしたってそれに気づく。

二人は揃って地面を見つめた。

「・・・・・・・・・何これ」

『・・・アメリア嬢、これはやばくないか?』

である夜と“世界眼”を持つアメリアはそれにいち早く気づいた。

しばかり獣が混ざっている周りの獣人族も首をかしげて地面を見る。

まるで、おぞましい何かが誰かの號令で一斉にき出したかのような。

『っ!アメリア嬢、あれを!!』

夜の聲に指された方向を見ると、黒い何かが吹き出しているのが見えた。

「お、おい、あれって迷宮の方向じゃ・・・」

「まさか百年前の災厄が來たのか!?」

「噓っ」

周りの獣人族達が口々にそう言って、空を見上げる。

吹き出した黒い何かは一瞬にして空に登り、澄んだ青空を黒く染めた。

『・・・“アドレアの悪夢”』

夜は忌々しそうにそう言った。

百年前に同じようにして獣人族領の首都、アドレアを襲った魔は今は襲われる側として黒い空を見上げる。

「・・・狀況を把握したい。夜!」

『了解!』

アメリアの一聲で夜は自分のサイズを調節して巨大化した。

アドレアを襲った黒貓の大きな魔が突然出現したことで周りの獣人族がパニックに陥っているが、今は気にしている場合ではない。

夜はひとっ飛びで彼らの頭上を飛び越え、近くの高臺を目指した。

「・・・ついに來たか、百年前の悪夢の再來が」

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