《暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが》第76話 〜魔族〜
それは、夜がアメリアの元を離れてから數分のことだ。
「……はぁ、はぁ、流石に、數が多い」
アメリアの魔力が盡きることは有り得ないが、大量に魔力を消耗すると流石に疲れてしまう。
その前に夜が帰ってくるのがいいのだが、夜はまだ帰ってきていなかった。
まあ、彼のことだからすぐに帰って來るとは思うが、それでもが安全な所に老人達を運び、全員を下ろすのにはかなりの時間がかかるだろう。
「それまで、ここはなんとしても死守」
アメリアはかすり傷で傷ついた両腕を水平に上げた。
その傷も數分で跡形もなくなくなってしまうのだが、それでも付けられる傷の方が多い。
現在、アメリアの目の前には、見えるだけでも千程の大軍。
見えないところ、放棄された家の中や別の魔の後ろなどの死角を合わせれば二千は超えるかもしれない。
死んでも自に蘇生魔法をかければいいのだが、蘇生した後は魔力がごっそりと取られ、なくなることは無いものの、しばらくはけなくなるのだ。
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「『グラビティ』」
前方數十メートル程の地面と魔が沈んだ。
沈んだ地面の中には、上からとてつもない質量の何かに押し潰されて、ぺちゃんことなった魔が數十匹ほどが蔵をぶちまけてこと切れていた。
完全にR指定のはいる景だ。
とても子供には見せられない。
ちなみに街には、家まで考慮していられないアメリアが中途半端に押し潰した家などが大量にあり、例え魔から逃げきれてもこれから生活するのは難しいだろう。
「……ヨル遅いな」
何もなければいいけど、と思いながら、仲間の死も気にせず、豬突猛進に突っ込んでくる魔に再び重力魔法をかけた。
「へぇー。そっか、その重力魔法はあのときの……君がエルフ族のお姫様ー?」
どこからか、落ち著いてはいるがい子供特有の高い聲がした。
アメリアは首を巡らせる。
ここには自分以外の人間の聲はないはずだ。
あってはならない。
だって、それは逃げ遅れたということなのだから。
でも、アメリアにはその聲にどこか聞き覚えがあった。
どこだっただろうかと考えながら探す。
「こっちだよぉ。君、気配察知とか危機察知系のスキル持ってないのー?」
再び聲のした方を見ると、髪と瞳がエメラルドのような緑をした、エルフ族までとはいかないものの、可らしい顔をした、い子供が首の長い魔の頭の上に座っていた。
きっとこの場に晶がいたのならその魔を見た瞬間にキリンだと言っただろう。
緑の瞳はこの狀況を楽しんでいるようにじた。
そして、思い出す。
「あなたは……昔エルフ族領を襲った魔族?」
晶にも言っていないが――父親である王にも言ってなかったので――キリカが原因で迷宮から現れた魔の中にはそれを統率する魔族がいたのだ。
ほんの一瞬、“またねー”と言う聲と、緑のがみえた。
そのときはまだ子供で、魔族の存在なんて分からなかったが、大きくなって魔族が何たるかを知ってからは、あれが魔族だという確信を強くしていった。
いかんせん一瞬だったもので、王に報告すべきか迷っていたのだ。
魔族が出てくるということは魔王がき出したということなのだから。
もし見間違いだったら大変なことになる。
エルフの大陸、フォレストだけでなく、魔族が現れたとなれば、いくら他族とのかかわり合いを嫌っているとはいえ、協力制を敷かずにはいられなくなる。
そんな一大事、一瞬見ただけでは判斷しきれなかったのだ。
「おっ!あったりぃ!いやぁ、君の妹ちゃんには本當に謝してるよぉ?わざわざ僕達が出てくる場を作ってくれてさ!」
アメリアが魔族だと警戒を始めると、急に嬉しそうに聲のトーンを上げだす魔族。
その頬は、まるで新しい玩を與えられた子供のように紅していた。
いつの間にか、魔の侵攻が止まっている。
まるで、アメリア一人に標的を絞ったように魔がアメリアを囲んだ。
四方八方、見渡す限り魔だ。
晶と共に潛っていた、人族のカンティネン迷宮のトラップ、モンスタールームでもここまで多く、大きな魔は出てこなかった。
アメリアを囲んでいる魔は下手するとドラゴン狀態となった夜に匹敵するような大きさのものまでいる。
重力魔法が一気に殲滅できる魔法だとはいえ、完全に不利だった。
「君にはちょっとした仕事があるんだよねー。だから、殺すわけにはいかないのがちょっと殘念」
急に聲のトーンを低くする魔族の年。
その緑の瞳が怪しくったと思ったら、今まで靜かだった魔達が一斉にき始めた。
それも、これまでのような豬突猛進ではなく、なにかに統率されて命令に従っているようなきだ。
アメリアは思わず舌打ちをしそうになって、やめた。
もし晶に知られたら、とこんなときでも晶本位なアメリアは、その代わりに大きく顔を顰めた。
「君の魔法は知ってるよ?だから、とりあえず君を殺すね?」
魔の年はニッコリと笑った。
その瞳はどこまでも純粋で、そのから出る強烈な魔力のプレッシャーがなければ、普通にそこら辺にいる子供と変わりない。
「あと、君の仲間の勇者召喚された暗殺者君だけど、魔王様は邪魔だって言ってたから殺すよ。僕もあいつきらーい。なんか気味が悪いし。目的を果たされる前に殺さないとね」
可らしい顔を顰める魔族の年。
アメリアも顔を顰めたい気分だった。
晶のことを魔王が知っているのは、夜が伝言を屆けに來たから知っている。
だけど、晶がここにいる目的は、魔族領で生き殘るためにクロウに剣を修復してもらうこと。
自分が呼んだくせにその邪魔をするとは、なんて勝手な魔王だろうか。
「じゃあ、僕に殺されるかもしれない暗殺者君の為にも、蘇生魔法使って自分も生き殘らなきゃね。あ、暗殺者君を殺すのは今日じゃないから安心して使っていいよー」
年は手を挙げた。
魔たちのが狹まる。
「あ、そうそう、僕の名前はアウルム。アウルム・トレース。覚えておいてよね」
年が手を下ろすのと同時に魔たちが飛びかかってきた。
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