《暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが》第77話 〜怒り〜
『……アウルム・トレース』
辺りに漂っている魔力の斬新に覚えがあった。
そして、アメリア嬢が攫われたときにちらりと見えた緑。
十中八九奴だ。
「……おい、アメリアがどっちに攫われたかは見たか?」
いつもよりも低い聲で主殿が聲をかけてくる。
きっと、荒れ狂ったを表に出さないためだろう。
今にでも駆け出したい気持ちをぐっとこらえているに違いない。
『分かる……が、今の主殿では奴にはかなわない。俺は、力を溜めるべきだと思う』
自分の聲がいつもよりも幾分か低いことに気づいた。
自分でもし驚いているのだ。
奴がき出したということは、魔王様がいているということ。
現在は主殿を主君と定めているとはいえ、生みの親である魔王様のきに嫌悪を抱くなど、ブラックキャットだったときからは考えられないことだ。
「アメリアを攫ったのは誰だ?」
夥しい量のが飛び散った場所の真上に立って主殿は聲を絞り出す。
にも、僅かに魔力は宿っている。
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魔力が強いものほど、に宿る量は多くなり、しばらく経ったあとでもそのが誰のものであるかが分かることがある。
明らかに致命的な量のそのは、アメリア嬢の魔力を宿していた。
『魔族で三番目に強い者に與えられる“トレース”の名を持つ男。アウルム・トレースだ』
主殿はしゃがんで、足元のが大量に染み込んだ砂を拳に握り込んだ。
「……ひとまず、ここいらの魔を一掃する。出し惜しみはもうしない」
アメリア嬢のの匂いを嗅ぎつけてか、それとも主殿と俺の気配をじてか、殲滅しきれなかった魔が辺りに集まりだしている。
『了解した』
最後まで、主殿は俺に顔を見せなかった。
「影魔法、起」
主殿の怒りに発されてか、今まで以上に魔力を込めているからか、アメリア嬢が作ったと思われるクレーターの中からも影たちが躍り出て主殿の影に合わさる。
これまでの影魔法は最高でも自の近くにいるものの影を使うくらいしか出來なかったはずだ。
メリットも大きいが、日が當たりやすいところでは使いずらいというようなデメリットもでかい魔法であったのに、今の主殿は影魔法をコントロール出來ていなかった。
『……変』
俺は息をついて、の形を変える。
ドラゴンはまだ攻撃をしたことがないために鱗の強度がイマイチだが、こちらは違う。
俺が直々に手を下してやった魔なのだから。
が俺を包み、造形や力の種類に至るまで変わる。
が晴れたあと、俺の目線は貓型のときよりも幾分か高くなっていた。
そして、視野が三つに別れている。
「ケルベロスか……。カンティネン迷宮といい、有名どころ出しすぎじゃないか?」
主殿が何かを呟いていたが、この魔特有の兇暴の為に口から涎がとどめなく出て、思考がぐちゃぐちゃになっているのが分かる。
言葉が半分も今は理解出來ていなかった。
この魔の変はブラックキャットだったときよりも遙かに強大な力が手にる上にとてもきやすく、普通の攻撃ならば傷一つはいらないような頑丈な作りをしているのだが、考慮しなければならないことが多すぎるのだ。
攻撃力としては迷宮下層くらいで申し分ないのに、まるで薬漬けとなったかのように思考が安定せず、ずっと何かを破壊したいような衝が起きている。
そして、一番面倒なのは、誰かに止めてもらわないといけない。
今は主殿がいるから何とかなりそうだが、軍を率いる立場だったときは絶対に使えなかった。
『主、殿。俺は今から、暴れる。終わったら、俺を、止めてくれ』
主殿の返事も聞かずにが勝手にき出す。
一瞬にして一番近くにいた魔に飛びかかり、を食いちぎった。
その魔が息絶えたのも確認せずに、ただを求めて次の魔に飛びかかった。
に飢えていた自分が、どんどん潤されていくのが分かる。
「おーおー、なるほどな。お前、その姿のときは自分をコントロール出來ないのか」
麻痺したような頭の中で、主殿の聲だけが響く。
「俺も影魔法を制出來てなかったが、ようやくしは出來た。お前の時間稼ぎのおだよくやった」
ただ、その聲だけが俺の中に染み渡った。
今は何を言っているのか理解できないけれど、元に戻ったらじっくり考えることにしよう。
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