《暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが》第152話 〜クロウ様〜 リア・ラグーン目線

「ウルクの案をしますと言ったのに……」

いつの間にかいなくなってた後ろの三人と一匹。

いつからいなくなっていたのかは分からないが、私がそれに気づいたのはかなり後だった。

これでは案人失格だ。

「クロウ様は気づいていたのですか?」

「當たり前だろう。私を誰だと思っている」

こともなげに言うこの人をこんなに恨めしく思うのは初めてだ。

私は頬を膨らませてキッとクロウ様をにらみつけた。

「ではなぜ止めてくださらなかったのですか!」

「案係はお前だ。私ではない。會話に夢中になっていたお前が悪い。……そんなことより、その呼び方どうにかならないのか」

話を変えられた気がしないでもないが、どこかおかしいだろうかと私は首を傾げた。

どれだけ考えてもクロウ様という呼び名におかしいところはないような気がする。

それを見たクロウ様はため息をついた。

確かに、何も知らなかった昔はクロウ様を"クロウ"と呼んで後ろをついて回っていたが、元勇者パーティーで獣人族の英雄とまでいわれているクロウ様を呼び捨てで呼ぶことなどもうできない。

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そんな私の心を読んだかのようにクロウ様は目をすがめた。

「私とお前の関係は何だ」

「えっと、名付け親と名付けられた子供でしょうか?」

私の名前は親ではなくクロウ様がつけてくださったのだと教えられた。

由來は知らないが、クロウ様が尊敬している人の名を一部借りたのだとか。

それが誰なのか、私はいまだに分からない。

當時の私はその栄さが理解できず、クロウ様のことをお隣に住んでいるおじさんくらいにしか思っていなかったが。

「どこの世に名付け親を様付けする子供がいるんだ」

「ここに……」

ここにおりますと言おうとしたが、鋭すぎる目で睨まれて口を閉じた。

そういえば昔もこうして睨まれていたなぁ。

クロウ様の姿は変わりないが、昔よりも私の背がび、顔の距離が近いため威圧が昔より増している。

どうして昔の私はこの目を怖がらずにいられたのだろうか。

じっと私のものよりも深い青の、その瞳を見ていると、クロウ様は照れたように私から目を逸らした。

「……まあいい。それより場所を変えるぞ。ここは居心地が悪い」

あたりを見渡して、私は顔を赤くした。

アキラ様とアメリア様が仲であると、昨日アメリア様ご本人から確認が取れたため、水の町ウルクの有名なデートスポットを回っていたのだ。

周りには人目をはばかるどころか、むしろ見せつけているように接吻をかわす者たちが多數いた。

居心地が悪いなんてレベルではない。

「も、申し訳ありません!すぐに別の場所に參りましょう!」

クロウ様の手をとって、慌ててその場所から抜け出した。

ひとつ隣の通りに駆け込んで、やっと一息つく。

「ふ……ふふ、ははは!」

立ち止まってれた息を整えているときに、吹き出すような音がしたため顔を上げると、音の出どころはクロウ様だった。

萬年顔をしかめているような、微笑みさえもレアなこの人が、目の前でお腹を抱えて笑っている。

「ク、クロウ様!?」

クロウ様以外の方相手なら私も同じように笑っていたかもしれないが、この人相手なら別だ。

村の祭りでみんなが大笑した一発蕓を見ても、その表筋はピクリともかなかったのだから。

まさか何か変なものを食べたのだろうか。

「やっぱり、お前は面白いな」

笑顔のまま、クロウ様の手が私の頭に載せられる。

長差のせいで見下ろされているその顔は初めて見る笑みに彩られていた。

クシャリとなでられる頭とその顔に、私はピシリときを止める。

顔に熱が今までにないほど集まっているのが自分でも分かった。

「あ、わ……な」

何をするのかと言いたいのだが、言葉がの奧で詰まって出てこない。

言いたかった言葉は理解のできる単語にならず、その斷片のみが口かられ出た。

クロウ様は今も獨を貫いているがお顔はかなり形で、獨りなことが不思議なくらいだ。

いつも仏頂面でなければすでに妻の一人や二人いたのではないだろうか。

つまり何が言いたいかというと、そんな男の笑顔とスキンシップは破壊力がすさまじい。

「おい、大丈夫か」

ハッと我に返ると、クロウ様は相変わらずの何を考えているか分からない顔をしていて、その手はどこにも乗せられていなかった。

不思議そうな顔をしているクロウ様に何でもないと首を振ると、そうかと言って歩き出す。

夢なのだろうかと思いながらさっさと前を歩くクロウ様に追いついて顔を見上げれば、その口元は先ほどの余韻のように弧を描いていた。

「夢ではなかった……」

「何か言ったか?」

呆然と呟く私を見下ろすクロウ様に慌てて首を振る。

「いえ!なんでもありません!……ときに、どこへ向かっているのですか?」

ぶらぶらと目的もなく歩いているのではなく、目的地が決まっているように足取りがしっかりとしているようにじた。

り組んでいる迷路のような町であるがため、私でも目的地が分からない。

「ついてからの答えてやる」

「そのときには答え出ていますよね!?答えるのが面倒なだけですよね!」

私の抗議の聲に反応はなかった。

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