《暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが》第160話 〜訪問〜

俺が目を覚ましたのは太が真上に昇ろうかというとき。

この世界でも屈指の観地、水の町ウルクには似つかわしくない、激しい怒聲で目が覚めた。

カンティネン迷宮での経験から、俺は睡眠の深さを常にコントロールできるようにしていたのだが、帰ってきた後のアメリアの言葉で安心しきって睡してしまった。

こんなにすっきりとした狀態で目が覚めたのは魔力切れで倒れた時と、アメリアに強制的に寢かされた時以來だな。

つまり、今の俺にとってアメリアの言葉は魔法並みに強大なものになってしまったらしい。

ベッドからのそりと起き上がり、俺は一つ欠をする。

ばすと、が異様にすっきりとしていた。

外を見ると、太が高い位置にある。

夜明けに帰ってきてから晝近くまで眠ってしまったらしい。

「……!!……!」

「……!」

防音に優れた部屋のおかげで俺の耳でも會話の容は聞き取れないが、どうやらリアが誰かに會いに來ていて、アメリアがそれを止めるために珍しく聲を荒げているらしい。

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クロウの聲も聞こえるからおそらくリアの要件は俺に関するものだろう。

そこまで考えて、俺が昨夜殺した獣人族が一応は王族であったことを思い出した。

おそらくリアの耳にもっているはずだ。

すっと背筋が寒くなる。

「どうかしたのか」

寢室の扉を開けて尋ねると會話が止み、アメリアが駆け寄ってきた。

「アキラ、まだ寢てなくていいの?」

「ああ。久しぶりにぐっすりと寢られたおかげでスッキリしてる」

安心したような表のアメリアに、心配をかけたのだと申し訳なく思っていると、続いてリアが近づいてくる。

には珍しく何やら興しているようだった。

「アキラ様、突然訪問して申し訳ありません。し確認したいことがありまして」

十中八九グラムのことだろうな。

「叔父を、ギルドマスターグラムを暗殺したのはアキラ様で間違いありませんか」

そう聞きながらも、リアは俺以外の可能を考えていないようだった。

疑問符すらついていない。

隠す意味もない俺は一つ頷く。

「ああ。確かに俺は昨夜グラムとその部下たちを暗殺した。……だが、勘違いするなよ。グラムを暗殺したのはお前の父親からの依頼ではない。父親には報酬に何を用意していたのかは知らないがいらないと伝えろ」

あくまで俺がグラムを暗殺したのはクロウからの依頼があってだ。

そこははっきりさせておきたい。

何も知らないリアは首を傾げた。

大方、クロウから何も聞かされていないのだろう。

俺はクロウをちらりと見て、目線で言ってもいいのかを問うた。

クロウは表現の仕方はともかく、リアのことを可がっていた。

こうしてグラムの事をリアに伝えなかったのはクロウなりに理由があったのではないかと思ったのだ。

俺の予想に反してクロウはあっさりと頷いた。

俺はため息をついてリアの疑問に答える。

「俺にグラムの暗殺を依頼してきたのはクロウだ。お前の父親よりも依頼が早かったからそちらを優先させてもらった。グラムを殺すのは俺の悲願でもあったが」

ますますリアは首を傾げた。

リアの視線がまずクロウに向けられる。

「俺の妹を殺した同胞。それがグラムだ」

昨日とはどこか違う、すがすがしいような、どこか吹っ切れたような顔をしてクロウが告げる。

リアはそれだけで察したようだ。

一気に顔が悪くなる。

「あのときの"若者"はアキラ様で、復讐相手が叔父様……とういうことですか!?」

比較的冷靜だったさっきとは違い、リアはクロウに詰め寄った。

クロウの顔は変わらないが、いい雰囲気ではないことは分かる。

「……では復讐を、たとえアキラ様の手だとしても果たされたクロウ様はどうされるのです!?」

それは悲痛な聲だった。

隣でアメリアが顔を顰める。

アメリアにとって、リアはキリカとまではいかないが妹分であった。

だから、彼の痛みに敏になってしまうのだろう。

「……今はアキラとの約束がある。それを果たした後は……分からんな」

今までのクロウの生きがい――生きる理由――は妹の仇を討つこと。

つまり、グラムを殺すことだった。

それを達したクロウはどうなるのか……想像に難くない。

クロウの回答を聞いて、リアは俯いた。

「アキラ様は、こうなることを分かっておられましたか?」

俺は素直に首を振る。

俺としてもグラムはサラン団長の仇だったし、俺が決めることではないと分かっているが、死んでも良い悪黨だと理解していた。

別に、神として人間を裁いているわけではないが、それでもグラムが死ぬことで前に進める人がなからず一人はいた。

だから俺は俺の心に従ってグラムを殺した。

グラムの部下を殺したのは、薬でもはや何かを考えることすらできなくなっていると分かったからだ。

しばらく下を向いていたリアは何かを決めたように顔を上げた。

「私もアキラ様に……いいえ、クロウ様にお供いたします!!」

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