《暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが》第161話 〜一緒に〜
「お前、何を言っているのか分かっているのか!?」
珍しくクロウが相を変えてリアに詰め寄った。
ここまで揺したクロウを見たのは初めてだ。
というか、聲を荒げたクロウを初めて見た気がする。
「分かっています。アキラ様たちが今から向かわれるのは魔族領。そうですよね?」
リアがこちらを向いて確認とる。
俺は頷いた。
クロウが俺を睨みつけたが気にしないでおく。
おおかた、可がっていた、素直に自分を慕ってくれているリアを危険な目に合わせたくないのだろう。
「だとすれば、私の結界が必要となる時が來るはずです!私も同行します!」
おそらくそれが理由ではないだろうが、決意の固そうなその瞳を見て流石のクロウも首をわずかに縦に振った。
その様子を見ていたアメリアの顔がにやけていたのだが、一何を考えていたのだろうか。
「さ、出発ですね!」
リアが一旦王城に帰った後、グラムが死んだ今もうウルクに滯在している理由はないと、クロウの言葉で急いで荷をまとめてウルクの町の外れまで來たはいいが、そこには準備萬端とばかりに大荷を抱えたリアが待ち構えていた。
おそらくクロウがリアを置いて行こうとしていたのを察して先回りしたのだろう。
「クロウ様ばかりがこの町を知っているとは思わないことです!私だって長年過ごしているうちに抜け道の一つや二つ……」
「何をしに來た」
得意げに言葉を並べるリアとは対照的に、遮ったクロウの聲は靜かだった。
靜かすぎるくらいだ。
唸るようなクロウの言葉に空気が固まる。
殺気こそないものの、重圧が凄い。
「先ほどクロウ様は私が同行すると言ったとき頷きました。合流地點は伝えられていませんでしたので先読みした次第です。それに、私にはもう帰る場所はありませんし」
を張るリアだったが、そこまでクロウの行を読むことが出來たのなら、今クロウが明らかに怒っていることが分からないのだろうか。
それとも、分かっていて怒らせているのか。
あと、帰る場所がないとはどういうことだろうか。
あの深そうな王たちが彼を手放すとは思えないが。
「お前が思っているよりも魔族領は數百倍は苛烈だぞ。王族として甘やかされていたお前が耐えられると思っているのか」
なおも渋るクロウに、リアは元気いっぱいに頷いた。
「大丈夫です!私はクロウ様が思うほど弱くはありません!それに、王族とは縁を切ってきました。もう私はただのリアです。リア・ラグーンではないですから」
「……そうか」
王族の王族と縁を切ったとはどういうことだ?
そう思って首を傾げると、アメリアが先に聞いてくれた。
「一度養子に迎えれたあなたを王族が手放すとは思えない。どうやったの?」
「簡単ですよ。あの人たちがしかったのは私の結界で、私自ではないのは知っていましたから。養子でなくなっても結界を継続することを約束しただけですよ。まあ、約束したのは王としてなので王をやめた後までは知りませんけどね」
悪戯が功したような顔で笑ったリアに俺は驚いた。
王族であったころよりも生き生きしている。
こちらの方が素なのだろうか。
「賢明な判斷だ。今の王家も奴が暗殺されたことで々と不正が明るみになるだろう。グラムは見逃されていた代わりに王族、上級貴族連中の不正を隠蔽したりしていた」
そうだったのか。
今のところ、エルフ族の王族以外の王族にいい思い出がないのだが。
ああでも、獣人族のヴィクターや城の兵たちはいいやつばかりだった。
の気が多いのが玉に瑕だが。
クロウはくるりとリアに背を向けて歩き出す。
「もっとも、獣人族が忌む人売買をあろうことか王族がしていて、王も黙認していたようなものだからな。俺が報を流しておいた。そろそろ王城には住民たちが詰めかけているころだろう」
……ん?
ということは、クロウはそんな中にリアを置いていくつもりだったということだろうか。
リアもそれに気が付いたのか、俯いてわなわなと肩を震わせている。
いや、クロウのことだし、リアだけは守れるように何かしら布石は打ってあるだろう。
いつものツンデレか?
「……さて、行くか」
「さて行くか、じゃありません!クロウ様!どういうことですか!」
ぎゃおぎゃおとクロウに食って掛かるリアだったが、その口は弧を描いていた。
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