《暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが》第170話 〜長〜 津田友也目線
「実は朝比奈君の目印のおかげなんだ」
佐藤君は苦笑して僕たちがどうやってここにたどり著けたのか説明した。
朝比奈君が木に目印をつけていたのはみんなが見てる。
だけど僕たちは一つの方向に進むから目印はいらないだろうと目印さえつけていなかった。
ということは、木についている不自然な斬り痕はすべて朝比奈君の班が通った後だと考えることができる。
木の魔につけた分ではなく、本の木につけられた痕を追えば、自然と朝比奈君たちのもとにたどり著くことができる。
そして、治療が終わった上野さんが見つけたのはまさに朝比奈君がつけた痕だったのだ。
佐藤君はそのことで朝比奈君たちにお禮を言った後、真面目な顔をして僕たちの方にも向き直った。
「そして、俺が何らかの呪いにかかってしまったせいでみんなを危険な目に合わせてしまった。本當にごめん」
深々と頭を下げる佐藤君に、僕は真面目な人だと心した。
黙っていればみんながそのことを知ることはなかったのに。
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言ったところで呪いはもう解けているし、過ぎたことだ。
僕もそうだけどおそらく上野さんも、みんなに言うつもりはなかったと思う。
「そうか、グループ分けをした時にはもう佐藤は呪いにかかっていたのか」
みんなあまり関わり合いがない人と組まされていたから訓練的な意味をはらんでいたのかと思っていたらしい。
さすがに佐藤君のようなストイックな人でも、こんな一瞬気を抜いただけで死ぬような場所では訓練しないと思う。
やはり朝比奈君はどこか抜けている。
「そういうことだ。津田君の機転と上野さんの努力がなければ、ジールさんと七瀬君が森の主について知らせてくれなければ僕たちの班は全滅していただろう」
申し訳ないと、佐藤君がさらに頭を下げる。
僕たちは顔を見合わせた。
アイコンタクトをして代表で細山さんが口を開く。
「頭を上げて、佐藤君。私たちのリーダーは佐藤君で、々と決める決定権を持っているのは確かだけど、佐藤君だけに重荷を背負わせたつもりはないよ」
結果論にすぎないけど、今回だれも死ななかった。
死ななければ大丈夫。
死ななければ、僕たちは家に帰ることを諦めないでいられるのだから。
「今回佐藤君が悪かったのは、前に一度呪いをかけられていたのに何の対策もしていなかったこと、そして何でもかんでも一人で背負ってしまうことだけ。たかが魔族領に近づいただけでまだ獣人族領なんだから、こんなところで躓いていたら、魔王城にもたどりつけないし、家に帰るのも夢のまた夢だよ。私たちも長しないと」
ねぇみんな、という細山さんの言葉に全員が頷く。
その様子をみて佐藤君はぐっとを噛み締め再び頭を下げたあと顔を上げると、とても清々しいような、どこか憑きが落ちたかのような顔つきになった。
確かにそうだ。こんなところの魔に躓いていたら、魔族領にいる魔には手も足も出ないということになる。
今回心を決めてから前よりはましになったとは思うけど、まだ足りない。
もっと鍛錬しないと。
朝比奈君に追いつけるくらいに、もっと強く。
「では、お腹も心も落ち著いたところで今後のことを確認しよう」
ジールさんの言葉に顔を上げる。
みんながよく見えるように円の中心に佐藤君が地図のようなものを広げた。
僕たちが授業で使うような細かく地名が書かれているようなものではなく、どこか歪な、手書きの絵だった。
いや、僕たちが立派なものを見慣れているだけで、昔の日本地図もこんなじだったはずだ。
「これは僕がレイティス城で見て記憶していた地図を手書きで描いたものです。私には絵の才能は皆無でしたので、大変雑ですが勘弁してください」
そう前置いて、ジールさんは四つの島のうち一番左に位置する島の北側を指さした。
「おそらくこの辺りが現在位置です。この部分のみを拡大したものがこちらになります」
下にあったもう一枚の紙を上に置く。
この森だけを拡大したものだった。
「この森の中を通り、合流地點に到達するのはこの調子でいけば十三日。しかしこれは休みなく歩いた場合のことで、休憩や戦闘などで時間を消費して実際は三十日ほどかかるとみていいでしょうね」
約一か月かかるということだ。
飛腳の人ならこれよりもさらにない日數で移することができたんだろうな。
この世界にはまだ車や電車、飛行機などが普及していない。
本當に、僕たちは恵まれた時代に生まれていたのだと実した。
「晶がこっちに來るまでには何としてもたどり著いていないと、何ていわれるか……」
顔をしかめて佐藤君がつぶやく。
小聲だったが、みんなにも聞こえていたようで、僕たちはそろって苦笑した。
僕は高校で佐藤君と知り合ったから大したことは知らないが、佐藤君が一方的に織田君のことを嫌っているのには薄々気が付いていた。
だって、何かするたびにちらちら織田君の方を見ていたし、そのたびに悔しそうに顔を歪ませていた。
嫉妬というは彼らの績の差的にはあてはまらないだろうし、人は言わずもがな。
だけどどうしてか佐藤君はいつも織田君だけを目の敵にしていた。
一方、織田君の方はよくわからなかった。
佐藤君が見ているのにも気づいていないようだったし、そもそも織田君はクラスの隅の方にひっそりといた人だったので、クラスのまとめ役だった佐藤君よりも関わり合いがなかったこともある。
織田君は、どこか僕たちとは違う目線で事を見ているような、目の前のものを見ていないような、そんなじの空気を纏っていた。
よくわからない織田君だったけど、この世界に來て、生き死にの瀬戸際を経験して一つだけわかったことがある。
織田君はいつだって生きることにもがいていた。
家庭の環境が悪いのかそれとも借金を抱えているのか、その理由はわからないし、容易に踏み込んでいい領域ではないので知ることはないだろうけど、いつも織田君は生きていた。
僕たちのように今日も明日も分からないような、日々を惰で過ごしていたわけではなく、ただただ生きることに必死だったんだと思う。
こっちの世界に來てからもそれは変わらず、生きること、帰ることに執著している。
多分それが佐藤君の気にらないところなんだろうなと思う。
だって、織田君は絶対に僕たちのことを見ない。
一人で前を見て、一人でずんずんと奧へ進んでしまう。
僕は別にそれでもかまわないけど、佐藤君はそれが嫌なのだろう。
アメリアさんや夜さんと一緒に行しているもの、その苛立ちに拍車をかけているような気がする。
僕たちの方が一緒にいたのに、同じことを志している仲間なのにって。
まあ、織田君が出て行ったときの僕たちは呪いでどうかしていたから、佐藤君もぐっと堪えているのだろうけど。
二人とも難儀な格をしているなぁ。
間に挾まれた朝比奈君が可哀想だ。
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