《暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが》第174話 〜『悪食』〜 津田友也目線

攻撃が効かない。

それは、対抗する手立てがないものと同じだった。

つくづくこの森は僕たちに試練だけを與えてくる。

「二刀流――『れ刃』」

目に見えないほどの速さで銀と白のが走る。

七瀬君が地に落とした魔を朝比奈君が二刀とも抜いて攻撃をするも、傷一つついていなかった。

「はあぁぁぁぁ!!」

佐藤君が素早い作で剣を振り下ろしても、ただはじかれる。

後方援護している七瀬君の風魔法がクジラの魔を地面に押さえつけてはいるけれど、いつまでももつわけではない。

魔法も理攻撃も効かない。

打つ手なしとはこのことだろうか。

「諦めないでください!」

クジラの真正面に來てしまった僕は盾を必死に構えて魔の攻撃から後ろにいる細山さん、上野さん、和木君を守る。

先がテラテラしていて、明らかに毒が塗ってあるような針を三人にれさせるわけにはいかない。

じりじりと後退しつつ、何か策はないかと頭の中で考えていると、不意に僕の後ろから人影が飛び出してきた。

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「細山さん!?」

「何してんの!?」

僕と上野さんが戸った聲を上げる。

どこでに著けたのか、細山さんは素早いきでクジラの魔の攻撃をかわしながら徐々に魔に近づいて行っている。

何かを狙っているようだけど、それが何なのかは僕ではわからなかった。

でも、細山さんは無駄なことはしないだろう。

朝比奈君と佐藤君、ジールさんがぎょっと目を見開き、彼を守る制にった。

七瀬君は魔法に集中していて気づいていないが、細山さんのそばには今はジールさんがいるのだから、おそらく大丈夫だろうと思う。

しかし、細山さんはその顔に似合わず意外と行派だ。

三人に口頭で作戦を伝えたらしいが、その聲はここまで屆かない。

後ろにいる二人は細山さんのようにはけないだろうし、現在僕たちが一方的に大量の針の攻撃をけているからこそ他のみんなが攻撃に専念できているのだ。

どちらにせよ僕たちは作戦に參加できないだろうけど、一言くらい何か言ってほしかった。

本當に心臓に悪い。

「よし、行くぞ!」

ジールさんの號令を合図に三人が魔に一斉に攻撃をする。

同じ箇所を攻撃しているのに、お互いの邪魔を一切しない流れるような連攜だが、ほぼぶっつけ本番なのだから三人ともすごい。

召喚された者は普通の人族よりステータス値が高いらしいから、すごいのは朝比奈君と佐藤君についていけているジールさんなのだろうか。

「いまだ!細山!」

ここからではよく見えないけど、おそらく全員の攻撃を一點に絞ってを空けたのだろう。

の人差し指がぎりぎりるくらいの小さな

攻撃が完全に無効化されているわけではなかったらしい。

だとしても勇者と侍、騎士が全力で攻撃をしてそれでも小さな一つしかあかなかったのだから、その強度は推して知るべしだ。

そして、攻撃が効かないとパニックになっていた僕たちと違って、じっと観察をして完全に効いていないわけではないことに気付く細山さんがすごい。

って土壇場とかで強さを発揮するってよく聞いたことがあるけど、本當にそうみたい。

『ギャァァァァアアアアア!!!!』

大きな悲鳴と共に、魔の攻撃が弱くなり、そして止んだ。

油斷することなく盾は構えたままだけど、急に衰弱した魔の様子からしてもう攻撃をする力がないことが分かる。

おずおずと僕の後ろから出てきた二人に警戒を促しつつ、僕らも魔の近くに寄る。

攻撃を合わせていた三人と魔を抑えていた七瀬君が細山さんの周りに集まっていた。

細山さんは一何をしたのだろうか。

「生命力を奪った!?」

和木君が大きなを頬張りながら目を剝く。

円になった中央で焼かれていた魔を僕は自分が食べられる分だけとって齧る。

ちなみにこのは細山さんたちが倒したあのクジラの魔である。

死んでからは普通のナイフでも切り裂けるほどらかくなった魔を食べようと言い出したのは細山さんで、本人のスキルによって毒見は完璧である。

すこし不安をじて、遅効の毒も検知できるのかと聞いたところ、満面の笑みと力強い頷きが返ってきた。

どうやってそれを確かめたのかは僕には聞く勇気がない。

というか知りたくない。

倒した魔のおを食べるのはいまだに慣れていないけど、魔の方が家畜のよりもよほどおいしい。

どうやら死んでもわずかに流れている魔力のおかげらしいと聞いたことがある。

道理で僕が冒険者ギルドに行ったときに魔をしきりに勧められるわけだ。

引退した冒険者も総じて立派なお腹をしていたし。

「そう。ちょうど、自分の魔力を他人に分け與える治癒と逆だね。悠希ちゃんの解呪を見て考えついたの。魔力と違ってじることができるわけじゃないからかなり難しかったけど、無事取得しました。スキル『悪食』」

ピースをしてにっこりとほほ笑む細山さんだが、スキル名がかなり不吉だ。

『悪食』ということは、つまり何でも喰らうということだろうか。

毒見といい、細山さんがいないと困ることがまた増えたが、彼は一どこに向かっているのだろう。

「直接らなければだめだし、さっきのように強度が高いものにはその下にれなければだめなんだけど、今回のような魔が出てきたなら攻撃の一つとして數えてほしい」

真剣な表の細山さんに僕は願ったりだと頷いた。

が、佐藤君はそうではないらしい。

「今回はうまくいったけど、次もそうなるわけじゃない。しかも、津田君に知らせずに盾の後ろから出るなんて自殺行為だ。もし君に気を取られて津田君の盾が緩んでしまっていたら、今ここに津田君、上野さん、和木君はいない。もちろん一歩間違えれば君も死んでいた」

思いのほか厳しい言葉に僕はおや?と首を傾げた。

記憶にある限り、佐藤君がこうやって聲を荒げるのは織田君を相手にした時だけだ。

いつも優しそうに笑っている佐藤君が眉を寄せて怒る姿を見せるのは珍しい。

しょぼんと顔を俯かせた細山さんに佐藤君はさらに言う。

「俺は勇者だが、全能じゃない。全員を守ることはできない。だから、次にやるときはしっかりと許可を取って、誰か一人護衛役をつけてからやってくれ。ここにいる誰か一人でも欠けることがあれば、俺は耐えきれない」

「ごめんなさい、淺慮だったわ」

「いや、分かってくれたのならいい。食事を続けよう」

素直に頭を下げる細山さんを見つめる佐藤君の瞳に熱が宿っているのが見えた。

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