《裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚》1話
覚がなくなり、意識が途絶えるのを待っているのだが、砂嵐のような音がなかなか止まない。
これが『死』という覚なのだろうか?
それにしては意識がハッキリしている。
ん?
そもそもの覚があるぞ?
後頭部の痛みがなくなってるから全の覚がなくなったと思い込んでいたが、手がく…
これなら隼人も殺せる。
まずは狀況の確認をしようと薄目を開けてみたが、眩しくてよく見えない。
徐々に慣れてきた目に映ったのは見たことのないガキどもの顔だった。
「 ︎」
「「「「 ︎」」」」
ビックリして目を見開くと、それにビックリしたのか俺の顔を覗き込んでいたガキ4人が一歩下がった。
変な勢で倒れたはずなのに仰向けにされてたみたいだから、死んだと思われて外まで運ばれたのか?
とりあえず起き上がろうとしたところ、段差のある場所だったようで著こうとした右手が空振り、そのままこけて…
バッシャーン…
水の中に落ちた。
結果だけをいえば底が1メートルもない淺い場所だったから問題なかったが、寢起きでダイブとか溺れたってしょうがないだろ…
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底が淺いと気づいて起き上がったらガキどもは走って逃げたみたいでけっこう遠くに後ろ姿が見えてるし。
「はぁ…」
とりあえず狀況整理をすると、砂嵐みたいな音の正は噴水だったようだ。
もちろん俺が落ちたのがその噴水で、どうやら噴水のふちに寢かされていたようだ。
スウェットが水を吸ってめちゃくちゃ重い。
上はTシャツとジャージだからそのうち乾くだろう。
水が綺麗でマジで良かった…
そして今いる場所は公園…いや、噴水と木々しかないから噴水広場の方がしっくりくる場所だ。
だが一切見覚えがない。
そういえば後頭部の痛みが消えていると思いってみるが、が出ていないどころかコブにすらなっていないみたいだ。
完治する程の長い時間気絶していたとは考えづらいし、もしかして死後の世界とか?
夢の可能も否定できないが、正直わからないから、しばらく様子を見るか。
というかさっきから目の端に映るゴミのような黒點?が気になってイライラする。
その黒點に意識を集中させると脳に直接報が流れ込んできた。
神野 力 16歳
人族 LV1
狀態異常 なし
スキル 『観察眼』『忌魔法:憤怒』
加護 『慕』
他にもステータスのような報が流れ込んできたが、もしかして後頭部を毆られたせいで頭がおかしくなったのか?
「これじゃまるでゲームじゃないか。」
脳に直接報がる形に違和が半端ないと考えていると視界にMP、PPのゲージが現れた。
さっきのレベルやスキル、ステータスも視認できるようになり、思考で作ができるようだ。
俺はなんとなしにスキルの『忌魔法:憤怒』を選択してみるとけっこう長めの文章が現れた。
「これを読めば魔法が使えるのか?」
死後の世界だろうが夢の世界だろうが、魔法があるなら使ってみたいと思うのが普通だろう。
まだ現狀把握がほとんどできていないが、興味本位で魔法を使ったって仕方がないことなんだと自分に言い訳をしつつ、詠唱を始めた。
「我願う。古の力にて、度の越えしを…」
目の端にあるMPゲージが凄い勢いで消費されていると思ったら、あっという間に0になってしまった。
そのまま続けようとしたらPPゲージまで減り始め、それに比例するかのようにが怠くなり、危険をじたために詠唱を中斷した。
「もしかして俺は魔法に適がないとかか?」
いや、忌魔法とかなってるくらいだから、この魔法が特別なんだろう。きっとそうであるに違いないはずだと思いたい…
今の減り方からMPは魔力なんだと思うが、PPはなんだろう?
ステータス確認をしたときには既にし減ってたしな。
ゲージが減るとが怠くなるってことは力的なものかな?
そういやもう1つスキルがあったなと思い選ぼうとしたが何も起こらない。
観察眼っていうくらいだから何かを見ようとしないと使えないのか?
それとも常時発型とかか?
「ってかこんなことしてないで現在地の確認をしなきゃな。」
とりあえず噴水から出て、遠くに見えるデカい建の方へ歩き始めた。
10分くらい歩いたところでずいぶんと活気のある場所にたどり著いた。
いろんな店が立ち並び、屋臺のようなものもある。
違和が半端ない。
薄々分かってはいた。
だから死後の世界とか夢の世界とか思っていたのだろう。
まず、人がおかしい。
多耳がとんがっているくらいならそういう人もいるのだろうと納得もできるが、頭に耳が生えていて、尾まであるなんていうのは俺の知識には作りの世界以外では存在しない。
そして、文字が読めない。
店先や看板に模様があるが、たぶんあれはこの世界の文字なのだと思う。
俺の知識には一切ない模様の羅列でしかない。
それなのに言葉はわかる。
店先のおっちゃんや貓みたいなお姉さんたちの話し聲はなぜか日本語に聞こえる。
まぁ言葉が通じるのは幸いだと思うしかないか…
「とりあえず小腹が空いたな。」
何のかわからない串焼きの出店が目にったので、それを食べることにした。
「おっちゃんこれいくら?」
「いらっしゃい!この串は銅貨5枚で、こっちの特上は銅貨10枚だ!」
「…銅貨?」
とりあえず財布を出す。
ってかビショビショじゃねぇか!
財布から10円玉を5枚取り出しておっちゃんに渡す。
「毎度!って何だこりゃ ︎どこの國の金か知らないが、これはうちでは使えねぇよ!アラフミナ王國の銅貨で頼むわ!」
聞いたこともない國の名前だ…
まぁ串が50円で買えるなんて思っちゃいなかったがな。
「実はこの國の金がないんだが、他國の人間でも金を稼げる仕事って何かないか?」
「はぁ ︎」
ただでさえ強面のおっちゃんが眉間にシワを寄せて俺を観察する。
客に対する態度じゃねぇだろ…ってか金のない俺は客じゃねぇからいいのか。
「確かに見ない服裝だな。誰でもなれる仕事っていやぁ冒険者くらいじゃねぇか?」
もう認めよう。
ここは日本じゃないどころか地球上に存在する場所じゃない。
仮に夢なら覚めるまで、死後の世界なら終わるまでは何をするにも金が必要になるだろう。
諦めて生きるために働くしかない。
「どうやったらなれる?」
おっちゃんはし離れたところにある、城ほどではないがここからでも見える大きな建を指差した。
「あの建が冒険者ギルドだ。あとはあそこの付で聞いてくれ。」
客じゃないのに親切にしてくれるおっちゃんで本當に助かった。
金が出來たら絶対ここに買いにこよう。
「ありがとう!」
おっちゃんにお禮をいい、冒険者ギルドへ向かうことにした。
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