《裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚》13話

ゴブリンソルジャーのおかげである程度ストレスを発散できた俺は、マップを利用して最短距離で外まで出てきた。

まだ15時くらいで明るいが、今からまたるのも微妙な時間だよな。

マジこのローブのせいだよ。

「アリア。こいつからローブを回収しろ。」

「…はい。」

2人は人がいない木々の中にっていった。

り口あたりがやけに騒がしいから俺も人がいない木々の方に移した。

待つこと5分程で2人は戻ってきた。

ローブから村人ファッションになっていた。

ローブはあらためてアリアに著せてやる。

大きすぎて腰と肩で結ばなきゃならないから、著せてやらないと著られない。

「外までは送ったからあとは勝手に帰れ。」

「わかってるわよ。」

…じゃあなんで帰らない?

まぁいいが。

「アリア。いったん近くの村に帰って明日の早朝からダンジョンにるのと今から夜までダンジョンにるのはどっちがいい?」

「…早朝からです。」

「なんでだ?」

ローブのせいでほとんど戦ってないから疲れてはいないだろうに。

「…夜になると村の宿が取れない可能があります。」

なるほど。

やっぱりアリアは頭がいいな。

「じゃあ村に行くか。」

あらためて地図を確認し、村に向かう際にダンジョンり口前を通るとローブに肩を摑まれた。

「んだよ?」

「助けを求めてるわよ。」

ローブが指差す方を見るとの人が冒険者っぽいやつらに何かを頼んで斷られていた。

さっきから騒がしかったのはこれか。

「じゃあ助けてやれよ。日本人は名指しで助けを求められなければ助けないんだよ。」

肩を摑んでた手を払って歩き出そうとすると、金貨10枚という聲が聞こえた。

「アリア。ちょっと話を聞いてくるがいいか?」

「…………はい。」

最近アリアに呆れられてきてる気がするが、気のせいだよな?

「え!?」

斷ったそばから態度を変えた俺にローブが驚いていた。

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だって金貨10枚はほしいからな。容くらいは聞いておきたい。

地面に膝立ちになって冒険者に懇願しているに近づいて話を聞く。

「どうしたんだ?」

「娘を助けてください。」

「は?」

いきなり娘を助けてとかいわれても意味がわからない。

俺の顔を見て察したのか、話しかけられてた冒険者っぽいのが説明してくれた。

「娘さんが俺の知り合いとパーティーを組んで早朝にダンジョンにったみたいなんだけど、まだ出てこないから心配らしいんだよ。」

早朝ってのが何時頃かは知らないが、この世界のやつらの早朝は本當に早いから5時くらいか?

だとしたら10時間も出てこないのは心配かもな。

「確かにそいつらが中にるときに俺はここにいて、いつも見ないやつがパーティーメンバーにいたからよく覚えてるよ。その人と似てるからたぶん娘で間違いない。でも、そいつらは今日は深く潛る予定だっていってたから、まだ中にいてもおかしい時間ではないし、あいつらが潛れるレベルまで確認に行けるやつはこの辺にはいないっていってんのに聞いてくれなくてさ。」

「お願いします。金貨10枚払うので、娘を助けてください。」

この違和はなんだろう?

「なんで助けてなんだ?ただダンジョンにってるだけだろ?」

「うまく説明できないのですが、平常でないのがわかるのです。」

スキルのおかげか?

でも平常じゃないね。どの程度を指しているのだろう。

死んでいるのも平常じゃないにるのかな。

「娘が使ってた武はわかるか?」

「はい。娘はヒーラーなので杖を使ってるはずです。」

俺は今日ダンジョンで拾った杖を全て出す。

28本もあるのか。けっこう拾ったな。

「この中にあるか?」

「いえ、ありません。先端に紫の水晶がついたやつです。」

じゃあまだ生きてる可能が0ではないな。

「もし既に死んでいて、死を持ち帰ってきた場合でも金貨10枚を払うのか?」

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「…はい。」

本気で子を心配する親か。嫌いじゃない。

冒険者を見て質問する。

「このダンジョンの最下層は何階だ?」

「まだ誰も最下層には行ってないからわからねぇ。今のところわかってるのは地下48階までだ。」

けっこう深いな。

1階ごとに見回って下りるを繰り返したらそうとう時間がかかりそうだな。

でも金貨10枚の価値はありそうだ。

「わかった。普通に魔狩りをしているだけで元気だったとしても、連れてきたら金貨10枚もらうからな。もし死んでいたら金貨1枚でいい。地下48階まで行っても見つからなかったら手ぶらでも戻ってくる。それでいいか?」

極まったのか泣きながら抱きついてきた。

「ありがとうございます。」

綺麗な人の抱擁は悪い気分じゃねえな。

だけど、あんまりのんびりしてると金貨10枚のチャンスを逃す可能が高まるから、このを引き剝がす。

「アリア。し急ぎで行くが大丈夫か?」

「…はい。」

「私は?」

ローブは帰れ。」

「もうローブじゃないわよ!」

「じゃあ失娘は帰れ。」

「んなっ!」

どうでもいいことだが、俺がゴブリンソルジャーを倒して戻ってきたら、よっぽどビビったのかこのらしてやがった。

まぁフル裝備で2相手に殺されかけたのに、今度は裝備なしで近くに12もいりゃビビるのはわからなくもないから、その時はスルーしてやったけど、うるさいからぶり返してやった。

どうやら失娘は赤面して黙ったようだから、アリアとダンジョンにる。

「まずは地下2階のスケルトンソルジャーの部屋にる。」

「…?…はい。」

返事はしてるが首をかしげている。

走りながら最短距離で地下2階まで降りて、隠し部屋にった。

中は先ほどの大量の骨がなくなっていて、新たにスケルトンソルジャーが12いた。

「あいつらは冒険者のれの果てだから、ここにさっきいってた杖があれば下に行く必要がなくなるからな。」

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スケルトンソルジャーを毆りながら、先ほどの疑問に答えてやる。

今回はアリアも參戦してるからあっという間だ。

裝備類を回収するが、杖はなかった。

「今度は地下15階まで一気に降りるぞ。」

「…全部の階を見ないのですか?」

「さっき回ったときに冒険者の顔なんて見てないけど、苦戦してるようなやつらはいなかった。だから後回しにしても死にはしないだろう。だから実際に死者がいた15階から見て回る。」

「…はい。」

その後も走り続けて15階に到著するが、アリアはけっこうキツそうだ。

「ここからはマジックシェアをしておけ。あと、アリアはパワーリカバリーをしておけ。これからも走るからな。」

「…リキ様は?」

「俺はまだ5分の1程度しかPPが減ってないから大丈夫だ。」

まぁ俺の場合は軽量の加護がある。それに駿足の加護で本當はもっと速く走れるのをアリアにあわせてるから、ゆっくり走ってるようなものでそこまで疲れていない。

「…はい。」

『マジックシェア』

『パワーリカバリー』

ゴブリンソルジャー狩りでMPをほとんど回復できているとはいえ、今後も回復できるとは限らないから、できるだけ消費はさけたいな。

「これから敵が現れてもマジックドレインだけ使え。支援魔法は使わなくていい。あと、俺が戦ってる間にアリアは休んで、しでもPP回復に努めろ。」

「…はい。」

15階のマップを埋めるために走り出そうとしたところでSPによるスキル獲得許可申請がきた。

PP回復倍速を取るつもりらしい。

問題ないから許可をした。

その後も申請がきて、8倍までしたみたいだ。

今さっき10以上も倒したのに、まだちらほらとゴブリンソルジャーを見かける。見かけるたびに毆って倒すが、1ずつじゃたいしてMPが回復できないな。

マップを埋めるが見つからず、下に降りる。

その作業をひたすら続けていく。

さすがは初心者用というべきか、大抵の魔はガントレットで毆れば一撃だ。

そのせいで戦闘の練習にはならないが、今はそんなことより金貨10枚が優先だ。

22階まで降りてきたが、いまだに見つからない。

今までと同じようにマップを埋める作業を始めてすぐに観察眼が反応する。

どうやら隠し通路、もしくは隠し部屋があるようだ。

「アリア。るぞ。」

「…はい。」

中にるとし離れたところで5人パーティーと思われるやつらがスケルトンソルジャーと戦っている。

が1人いるようだが、依頼をしてきたとは全く似ていない。

「ここにはいないようだ。出口を探して外に出るぞ。」

「…………はい。」

渋々承諾したような顔をしているが、なぜだ?

戦闘中の魔を橫取りするのはマナー違反だぞ?

戦闘中のパーティーの後衛が俺らに気づいたようだ。

「そこの2人!加勢しろ!」

なんで命令口調なんだ?

あらためて見ると、1人倒れてる。

5人パーティーじゃなくて、6人中1人死んでるのか。

そりゃ焦るのもわかるけど、そんな態度のやつを助ける義理がない。

無視して出口を探そうとしたら、直が危険を告げる。

『オーバーコート』

振り返ると目の前で火花が散って何かが砕けた。

あのやろう。攻撃してきやがった。

アリアが魔法を使わなければ避けれなかったかもしれない。

「アリア。出口を探しておけ。俺はあいつらに用ができた。」

「…先を急ぎましょう。」

「聞こえなかったか?俺はあいつらに用ができた。」

「……はい。」

アリアは壁に手を當てながら走り出した。

「マジックドレインだけかけといてくれ。」

『マジックドレイン』

振り向かずに魔法だけかけた。

なぜか怒らせたようだが、俺もイラついてるから気を遣う余裕はない。

歩いて5人パーティーに近づく。

前衛の剣にヒビがっている。そろそろ死にそうだ。

普通に喋って聲が屆くところまで行って止まる。

「助けてやらないこともない。だが、助けてしければ、俺に攻撃したやつがソロでスケルトンソルジャーに挑め。それでスケルトンソルジャーが勝てば今度は俺が引きけてやる。」

「こんな見たこともない無名の冒険者が1人でこの量のスケルトンソルジャーを倒せるわけないだろ!わされて陣形を崩すな!」

こいつがリーダーか?

パッと見たじだと剣を使ってる2人が前衛でその後ろにリーダーっぽいやつが指示してその隣のやつが支援魔法や回復魔法を使ってるみたいだな。んで1番後ろのやつが剣を使ってるやつの補佐をするように攻撃魔法を使ってるわけか。死んでるやつは大剣を持ってるから、既に前衛が1人やられてるのか。

このままじゃ殘り2人も時間の問題だな。

ってかリーダーいらなくね?

というか意図的に力溫存してやがるな。

隙を見て逃げる気か?

「…リキ様。」

どうやら出口を見つけたみたいだ。

なんか怒りも冷めたし、早く金貨10枚娘を探そう。

5人パーティーに背中を向けて出口に向かう。

「おい!早く加勢しろ!助かりたくないのか!?勝手な行したら死ぬぞ!」

「ギャーギャーうるせぇな!」

丁度良くこちらに向かってきたスケルトンソルジャーを思いっきり毆る。

地下2階にいたやつよりきが速い気もするが、防力はたいして変わらないのか一発で首がもげた。

「死ぬのはテメェらだけだ!勝手にしろ!」

んだせいか、スケルトンソルジャーがこちらを向いた。

耳なんてないはずなのにな。

リーダーっぽいやつがこの時を待っていたといわんばかりに何かの詠唱を始めた。

言葉はよく聞き取れないが、さすがに獨り言ではなく、詠唱だろ。

やっと本気を出すのか。

他のパーティーメンバーもちょっと希が見えたようだ。

何か手があるなら最初から加勢なんて求めず使えよ。

詠唱もそうだが、魔法名もなぜか小聲で唱えてるせいで俺には聞こえないが、魔法使いが驚愕の表を浮かべている。

まさか大規模魔とかか?

俺らごと殲滅とかシャレにならねぇぞ!?

だが観察眼は一切反応しない。

そんなことを考えていたら、リーダーっぽいやつがいきなり跳んだ。

弧を描くようにスケルトンソルジャーたちの頭を跳び越えて、アリアの前に著地した。

そのままアリアが見つけた出口を出て行った。

…。

俺も含め全員が呆然としていた。

だがスケルトンソルジャーには関係ないようで攻撃を続けてくる。

片側の剣を使ってるやつが反応に遅れて剣の変な位置で攻撃をけ止めたようで、剣が折れた。

魔法使いが必死に魔法を唱えてスケルトンソルジャーを吹っ飛ばす。

でも、1、2倒そうがまだまだたくさんいるから意味がない。

剣以外の武は持ってないのか、折れた剣をかまえている。

見てらんねぇな。

裏切られ仲間だから今回だけ助けてやろう。

「俺がこいつらを引きけてやるから、お前らもあそこから出ろ。」

「俺らも加勢する。」

前衛がやる気を見せているが、ハッキリいって邪魔だ。

「俺は奴隷以外と共闘する気はない。お前らが戦うなら俺が外に出る。好きな方を選ばしてやるっていってるんだ。」

「…頼んだ。」

『ダズルアトラクト』

が淡くると、4人パーティーを見ていたスケルトンソルジャーが一斉にこちらを向く。

そして一斉に襲いかかってきた。

ヤバい。思ったよりきが速いぞこいつら。

「アリア!」

『ステアラ』

『オーバーコート』

『マジックドレイン』

名前を呼んだだけでわかるとは凄いな。

しかもちゃんとMPのことまで考えてるっぽいし。

「今のうちだ!早く出てけ!」

4人は申し訳なさそうに出て行った。

これでこいつらの武は全部俺のものだ。

その前にこいつらを倒しつつ、MP回復だ。

50くらいしかいないからってちょっとなめてた。

地下2階のやつらとは段違いに強かった。

きはいいし、裝備も良さそうだ。

避けきれずに左腕のガントレットでけ止めたら、ダメージ貫通みたいなことをされて左手が痺れてしばらく使えなくなったときは本気で焦った。

まぁ結果でいえば勝てたんだけど、細かい傷をちょいちょいけている。

傷はライトヒールで完治したが、これからは気をつけないと死ぬ可能もあるんだとちゃんと覚えておこう。

金がしいったって命あっての種だしな。

その後スケルトンソルジャーが所持している裝備を全部回収したが、紫の水晶がついた杖はなかった。

またマップをうめる作業に戻る。

どんどん下に降りて行くと、25階あたりから支援魔法なしでは一発で倒せなくなってきた。

それでも一対一では特に危険をじることもなく倒せている。

32階に到著すると、直線の通路のだいぶ先に前衛と後衛に別れてる2人組とそいつらの倍以上のサイズのミノタウルスが向かい合っているのを見つけた。

2人組は遠いうえに後姿だから、男かかもわからない。

殘り500メートルに近づいたあたりでミノタウルスがり、持ってる斧を橫薙ぎにした。

人間の男も淡い輝きを放ち、剣でけ止めようとする。

だが、男は剣ごと真っ二つになり、ミノタウルスが発生させたであろう風で後衛のやつが俺の方に吹っ飛んできた。

避けようと思ったら、観察眼が反応したので止まってけ止める。

け止めたやつの顔を見ると、り口にいたにそっくりだった。

髪型が多違うのと大人の気が抜けて若々しくなったくらいの差しかない。

間違いなく金貨10枚娘だろう。

顔の確認が済んだとき、金貨10枚娘の腹からが噴き出した。

一緒に臓までれてくる。

遅れて口から吐した。

ミノタウルスの放った風圧で斬られたのか。

ヤバいな。

死なれると金貨1枚になってしまう。

「アリア。出來ることを盡くしてこいつの命を繋げ。アリアで無理ならあきらめるしかないけど、無理でも責任をじる必要はないからな。」

金貨10枚娘を地面に寢かせ、アイテムボックスから今朝買ったばかりのたぶん清潔なタオルで臓を腹の中に戻す。見た目がグロいから傷の上にそのままタオルを置いた。

「…はい。」

「俺はミノタウルスを倒すから、マジックドレインを頼む。」

そういって、金貨10枚娘を助けるための新しいスキルをアリアが得ていないか奴隷のステータス畫面を確認しようとするが、ミノタウルスが予想以上の速度で走って近づいてくるからあきらめて俺の方から距離を詰める。

『マジックドレイン』

さっきのような攻撃でアリアたちを巻き込むわけにはいかないからな。

観察眼で見たじだと、俺と同じぐらいの強さだろう。

久しぶりに楽しめそうだ。

互いに全速で近づいたため、一瞬で500メートルの距離がまり、ミノタウルスはジャンプして上から斧を振り下ろしてきた。

それを橫にステップしてかわし、位置が低くなった顔面に勢いを全部のせた拳を打ち込む。

拳はミノタウルスの左頬に當たったのだが、し押せただけで、止まった。

ほとんどダメージを與えられていないようだ。

こんな相手は初めてだ。

駿足の加護を利用した勢いを込めたパンチがほとんど効いてないだと…。

アリアにステータスアップをさせようと振り返るが、アリアは俺にかまう余裕はないみたいだ。

ミノタウルスが斧を地面から引き抜く。

顔がダメならと、斧を引き抜いてまだ制を整えていないミノタウルスの懐にり、鳩尾に全力で拳を打ち込む。

ミノタウルスは何事もなかったように斧を斜め振ってくる。

を傾けて避ける。

今までダメージをけないように戦闘ではできる限りガードではなく回避をしてきていたおかげか、ミノタウルスの攻撃も避けることはできるみたいだ。

わりと力任せみたいだしな。

だけど俺の攻撃が効かないんじゃ、避けるという作が必要な俺が先に力が盡きるだろう。

打撃が効かない敵が現れたときのために短剣を買ったことを思い出す。

だが産まれてから今までナイフを使って戦ったことなんてないから、構え方すら知らない。

いや、そんなこといってる場合じゃないな。

腰から短剣を引き抜く。

ガントレットを裝備したままでも使えるようだ。

ミノタウルスが橫薙ぎにしてきた斧を上に跳んで避けると、そのままミノタウルスは頭のツノを突き出して、突進してきた。

マジか!?

ミノタウルスのツノを左手で摑んで無理やりに自分のを持ち上げて、ミノタウルスの頭を超える。

そのまま右手の短剣を逆手に持ちかえて、後頭部のし下あたりに突き刺した。

は刺さるようだ。

即座に抜いて降りる。

ミノタウルスが頭を振りした。

2撃目をやろうとしてたら吹っ飛ばされてたな。

ナイフを構え直す。

ミノタウルスは俺を敵と判斷したのか、アリアたちには目もくれず、俺の方を振り向いた。

無駄なMP消費はしなくてすみそうだ。

今度は斧を振り回してきた。

力任せの攻撃ではあるが、避けるのが一杯でなかなか懐にれない。

斧が邪魔だ。

斧の攻撃を避けるたびに一歩前に出てミノタウルスの腕に斬撃し、一歩下がるを繰り返す。

PPがどんどん減っていく。

観察眼では同じレベルの相手だと思ったが、実際にはこうやって地道にやっていかないと俺ではこいつを倒せない。

今の俺の実力はその程度だと認めるしかない。

だが、地味な戦い方をしてでも勝たなければならない。

何十回と繰り返したところで、ミノタウルスに限界がきたようで斧が吹っ飛んでいった。

見るとミノタウルスの手や腕が傷だらけで痛々しい。

「オオォォォオォォオオォォォ!」

びをあげて、素手で突っ込んできた。

ツノを突き出してはいるが、下手に跳ぼうものならあいつの手に捕まるだろう。

し左に重心をかすとミノタウルスの右手が反応した。

その右手に摑まれる瞬間にを捻り、さらに外に避ける。

またナイフを逆手に持ちかえて、通り抜けざまにミノタウルスの右足の付けにブッ刺す。

たぶんアキレス腱が切れたのだろう。

バランスを崩して勢いそのままでうつ伏せに倒れた。

の構造が一緒で良かった。

このチャンスを活かすためにミノタウルスの背中に飛び乗り、最初に傷つけた首の付けあたりをメッタ刺しにする。

ミノタウルスの手が迫ってくるが関係ない。

手が俺に屆く前に殺す。

殺す。殺す。殺す。殺す…。

だが、間に合わなかったようで、ミノタウルスの右手に捕まった。

その瞬間終わりを悟ったが、握りつぶされることもなければ持ち上げられることもなかった。

どうやらギリギリで事切れたようだ。

頑張ってミノタウルスの手から抜け出す。

ミノタウルスを見ると首が半分くらい抉れている。

この短剣でよくここまで抉ったものだ。

今の俺の実力じゃ他のミノタウルスに出會う前に早く戻った方が良さそうだ。

一対一でもまた勝てるかはわからないからな。

アリアを見るとなんとかなったようだ。

この世界の回復魔法は凄いな。

「アリア。早く素材や裝備品を回収して戻るぞ。俺じゃ次にミノタウルスに會っても勝てるかわからない。」

「…はい。」

金貨10枚娘を見ると寢息を立てている。

こいつの仲間の裝備も回収するわけだから下手に起きられても面倒だからちょうどいい。

の裝備品を回収したのち、ミノタウルスの素材を回収しようと思ったが、どれが金になるんだ?

とりあえず斧はアイテムボックスにしまった。

さっきまで容量がいっぱいになるかと思ってたが、あんなでかいのが普通にって驚いた。

あとはツノがそうっぽいが、どうせまた頭蓋とくっついてるんだろ?

考えた結果、せっかく首をあそこまで削ったのだから、首から上をそのまま持って行くことにした。

一度アイテムボックスにしまったミノタウルスの斧を取り出し、持ち上げる。

軽量の加護があってもけっこう重いな。

そのままミノタウルスの首に振り下ろす。

一発で綺麗に取れた。

何をするのかと俺を見ていたアリアが、斧が振り下ろされた瞬間に何が起こるかを察したようで、勢いよく顔をそらしたのが視界の隅に映った。

皮とかも売れるのか?

だがはほとんど人間だから、さすがに皮を剝ぐのは辛いな。

今回は金貨10枚も手にるし、ミノタウルスの頭だけにしておこう。

ミノタウルスの頭をアイテムボックスにれようとするがらない…

はダメなのか?

でも食材はったはずなんだが…

仕方がないからミノタウルスのツノを右手で持ち、左腕を金貨10枚娘の腰に回して持ち上げる。

このまま走って金貨10枚娘の腹の傷が開いたりしないよな?

い合わせてるわけじゃないから平気か。

「アリア。行くぞ。」

「…はい。」

ん?アリアがこっちを見ようとしない。

あぁ、牛の顔をしてても生首はちょっとキツいか。

「俺はこの狀態じゃ戦えないから、この後出くわす魔は全部避けてくぞ。」

「…はい。」

返事をするなり、アリアは走り出した。俺の前を走って敵をどけてくれるのか。

まぁ実際はミノタウルスの生首を見たくないだけだろうが、好意的にとっておこう。

金貨10枚娘は手足をブラブラさせている狀態なので、めちゃくちゃ走りづらい。

それに出くわす冒険者に変な目で見られるし。

両手に荷を持ちながら走ったせいか、帰りは俺のPP消費も激しく、途中でPPを回復させながら戻ってきたから、もうMPもPPもほとんどない。

だが、なんとか途中で休むことなく出口にたどり著けた。

外に出ると真っ暗だった。

金貨10枚娘が邪魔で腕時計は見れないが、22時はまわってそうだな。

外で商売していた冒険者たちはもういなくなっていた。

表にいたのは俺に依頼をしてきたとこれからダンジョンにろうと裝備を整えてる冒険者が6人、あとはなぜか失娘がいる。

「なんでまだいんだ?早く帰れよ。」

「べつにあんたを心配して待ってたわけじゃないんだからね。」

「なら帰れよ。」

「うるさい!…それよりその手に持ってるのは何!?」

「依頼されてた娘だが?」

金貨10枚娘を落とさないように軽く左手をあげる。

さすがにあの振で起きていたようだ。

起きてはいるがグッタリしている。

「そっちじゃないわよ!右手の生首!」

「あぁ、これか?倒したはいいが、どこが素材になるかわからなかったから首ごと持ってきた。なぜかアイテムボックスにらなくてさ。」

「ミノタウルスを2人で倒したの ︎」

1人でだが、もう夜だし、正直こいつに構ってる暇はないから訂正も返答もせずに依頼主のところに行く。

後ろで無視するなとかいってくるが、スルーだ。

「娘はこいつであってるか?あってるなら金貨10枚をよこせ。間違ってるなら元いた場所に戻してくる。」

今のセリフを聞いた金貨10枚娘が、俺の左腕の中でビクッとした。

まぁあそこにゃ戻りたくないわな。

だが、こうでもいわなければ違うとか噓つかれて金を払わずに終わられたらたまったもんじゃない。

しかし依頼主は噓をつくつもりなんて全くなかったようで、何度も禮をいってきた。

「禮はべつにいらない。金をよこせ。じゃなきゃこいつは渡せない。」

「お金は家にあります。よければお禮もしたいので、うちに來てはいただけませんか?」

面倒だな。

「これから宿を探さなきゃならないからやめておく。」

「今だともう空いてる宿があるかわかりません。どうかうちにお泊りください。」

こいつ何を企んでやがる?

久しぶりに識別を発する。

『無問題』

ならいいか。

「ならお言葉に甘えよう。ただ、金をもらうまでこいつを離すつもりはない。家に帰っても実は金がないとなったらこのままこのを絞め千切るからな。」

そんな馬鹿力はないが、片手で軽々人間を持っていたら脅しくらいにはなるだろう。

「はい。必ず謝禮は払いますので、問題ありません。それでは私の家はすぐそこの村にありますので、向かいましょう。」

歩き出したの後ろについていく。

今日も長い1日だったな…

まだ金はもらってないが、とりあえずこれでピンチ姫救出ミッションは終了だ。

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