《裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚》18話
奴隷商に行く必要がなくなったから、途端に暇になったな。
武は預けたから魔狩りに行くことも出來ないし…。
ってか使い魔的には主が魔狩りをしたらどう思うのだろう?
邪魔したりしてくるのだろうか?
邪魔してきたら仕方がない、一緒に狩るか。
それにしても初めてアリアの笑顔を見た気がする。
最初は珍しいと思ったけど、過去に笑顔になったのを思い出そうとしたらピンキーリングを眺めてニヤニヤしてたくらいしか思い出せなかった。
だからおそらく初めてだ。
あんな顔もできるんだなと思ったら、また無表になってるけどな。
「…リキ様。薬屋に行きたいです。」
俺が手持ち無沙汰にしていることに気づいたのか、次の行き先を希してきた。
まぁ暇だからいいか。
「じゃあ行くか。」
今日もドアには小さい看板があった。
おばあちゃん出かけすぎじゃね?
まだ一度もおばあちゃんを見てないんだが…
ドアを開けて中にる。
「…またあんたか。」
もういらっしゃいませすらいわないんだな。
「今日はアリアの希で立ち寄った。ってかばあちゃんを一度も見てないんだが、本當に存在すんのか?」
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「失禮ね。まだ現役の名の知れた薬膳師よ。」
「ん?調合師じゃないのか?」
「おばあちゃんは薬の調合のみを極めたから、薬膳師なの。調合師は私よ。」
薬膳師は薬のプロフェッショナルで調合師はオールラウンダーってとこか?
まぁどうでもよかったな。
「そうか。んで、アリアは何がしたくてここにきたんだ?」
そういや來る途中で聞くのを忘れてたな。
「…薬草を売りに來ました。」
は?いつ採取した?
…そういや俺がイーラをテイムしてたときに草を毟ってたな。
なんで雑草と薬草の區別がつくんだ?
俺はそのために本まで買ったのに使ってないが、アリアは見なくてもわかるっていうのか?
アリアがに草を渡す。
「へぇ。本當に薬草ね。でもなんで冒険者ギルドじゃなくてうちに?」
「…お姉さんにはお世話になったからです。」
「あら、可いこというのね。それじゃあギルド価格より高めに買い取ってあげるね。」
薬草を何種類かに分けて、それぞれ秤で調べてから、銀貨1枚を俺に差し出してきた。
「なんで俺なんだ?アリアが採取して売ってんだからアリアの金だろ?」
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もアリアも驚いた顔をした。
「あんたはやっぱり変わってるわね。奴隷に人権はないから、奴隷のものは主のものなのよ。まぁでも主であるあんたがそういうなら。はい、アリアちゃん。これで味しいものでも食べてね。」
そういうもんなのね。
まぁ共闘して得たものは全部俺のものにしてるから、なんもいえないがな。
「…ありがとうございます。」
「あとこれもあげようと思ったけど、あのローブを著てないんじゃ危ないわね。」
なんか嫌な予がするな。
「それはなんだ?」
「正式名稱はないんだけど、私は業火玉と呼んでるわ。前にアリアちゃんにあげたのと同じものよ。」
あの死にかけたときのやつか。
「うちの奴隷に変なもの渡すな。」
「アリアちゃんはか弱いんだから、自分のを守るものは必要でしょう?」
アリアがか弱い?
フッ。笑わせるな。
「アリアはヒーラーのくせに戦闘力だけで中級クラスだぞ?」
ダンジョンのおかげで力の目安がわかるから説明しやすい。
は無言でカウンターの奧からこの前の大きな水晶を取ってきた。
「またステータスチェックしてもいい?」
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ちゃんと確認は取るんだな。
「べつにかまわないが、ステータスチェックって何がわかるんだ?」
前に聞き忘れていたけど、せっかくだから聞いておこう。
「水晶にもよるけど、たいていは名前と年齢と種族くらいね。うちのは大きいから別とレベルと狀態異常とジョブまでわかるけどね。」
スキルや加護とかまではさすがに見れないのか。
まぁステータスチェックされるたびに筒抜けは嫌だから助かるがな。
「アリア。」
「…はい。」
最近は名前を呼ぶだけで理解してくれるから楽だ。
アリアが水晶に手を置くと水晶が淡くった。
映し出された模様のようなものを見たがまた驚いている。
「レベルが上限に達してるじゃない。魔狩りはレベルが上がりやすいっていうけど、これは異常よ。どんな無理をさせてるの?」
「特に無理はさせてねぇよ。強いていうならゴブリンソルジャーに1人で戦わせたくらいで、あとは俺に支援魔法を使わせてたくらいだよ。」
「馬鹿じゃないの!?ゴブリンソルジャーとこんなちっちゃい子を戦わせる時點で待ものよ。」
「いや、アリアの方がゴブリンソルジャーより強いってのはわかってたし、実際に無傷で勝ってるしな。」
「無傷!?…アリアちゃん、本當なの?」
こいつ俺のこと信じてねぇな?
まぁ年齢と見た目だけならそんなに強いとは思えないか。
マリナも疑ってたしな。
「…はい。リキ様の戦い方を真似しました。まだうまくいきませんが、ゴブリンソルジャーくらいならもう大丈夫です。」
「ゴブリンソルジャーくらいって…。ねぇ、私が15歳になったらあんたのパーティーにれてくれない?」
お前もか!?
「悪いが俺は奴隷以外とパーティーを組むつもりはない。」
「じゃあレベルをあげるコツを教えて?教えてくれたら業火玉の作り方を教えてあげるから。」
業火玉って自分で作れるのか?
それはちょっと知りたいけど、コツっていってもな…
「コツもなにも、俺らはパーティー組んで大量の魔を狩っただけだぞ?俺はここ4日で5回ほど死ぬ思いをしたがな。」
「そうだった。あんたは馬鹿だったわ。そんなやつとパーティーを組んでれば嫌でもレベルは上がるわね。でも人族レベルが高くても1人でゴブリンソルジャーを倒すのは難しいと思うけど?」
がチラリとアリアを見た。
「…リキ様を見ているからです。」
それ、マリナにもいってたけど、普通の人じゃ意味がわかんないからな。
見てるだけで強くなるとか、才能あるやつの理論だから。
がジト目で俺を見る。
「コツとは違うと思うが、俺が最初に気をつけたのは敵の攻撃をくらわないことだ。例え相手が雑魚でもだ。攻撃をくらうと痛いし、痛いときが鈍くなる。きが鈍いと敵の攻撃をくらいやすくなるの負のスパイラルが起きるからな。」
つっても俺の場合は観察眼頼みな部分が大きかったがな。
「それはアドバイスとしてありがたくもらっておくわ。確かにそんな戦い方を真似できれば強くなれるのかもね。でも私はレベルを上げたいだけなのよ。」
こいつは強くなりたいじゃなくて、レベルを上げたいのか。
確かに調合師は強さはいらなそうだ。
それでもレベルを上げたいってのはレベルを上げることによって得られるスキルがあるのかもな。
「なら強いやつのパーティーにって魔を狩りまくるしかないな。支援魔法や回復魔法を覚えておけば強いパーティーにもれてもらえると思うぞ。」
「知り合いにあんた以外に強い人がいないのよね。」
「冒険者ギルドで強そうなやつに聲をかければいい。」
「そうね。考えておくわ。もしかしたらあんたの気が変わるかもしれないし。」
俺の気が変わるのを期待しても時間の無駄だと思うがな。
「それじゃあ約束通り、業火玉の作り方を教えてあげるわ。まずは見本を見せるから、空水晶を1つもらえる?」
見た目が似てると思ったらやっぱり空水晶が素なんだな。
アイテムボックスから空水晶を1つ取り出し、に渡す。
はけ取った空水晶をカウンターに置き、両手をかざした。
「我願う。強き者に打ち勝つための力を得るため、タメ重ねるとなれ。」
『アマス』
「我求める。1つ、他の理より出でし炎『フレア』。2つ、他の理より出でし炎『フレア』。3つ、他の理より出でし炎『フレア』。4つ、他の理より出でし炎『フレア』。5つ、他の理より出でし風『ウインド』。我の求めに応え、1つの力となり彼の者に與えたまえ。」
『エンチャント』
フレアと唱えるごとにの前に現れていた火の玉のようなものが『エンチャント』といった途端に空水晶に吸い込まれていった。
明だった空水晶が暗く濁って、中がよく見えなくなっている。
「できたわ。これで業火玉の完よ。ちなみに失敗すると空水晶が割れて中の魔法が噴き出すから、室でやるのはオススメしないわ。」
確かにあの炎が室で上がったら、逃げられないから自分も建も全焼だろうな。
「とりあえず『アマス』と『エンチャント』を覚えればいいのか?」
「そうね。あとは空水晶に付與する魔法もね。業火玉なら『フレア』と『ウインド』ね。ちなみに『エンチャント』はスキルで覚えると詠唱の変更が出來ないから、1つしか付與できないわよ。」
そういうのは先にいえよ。
もう2つとも取っちまったよ。
ってかスキル以外で魔法を覚えられるのか?
それこそ驚きなんだが。
まぁは試しだ。
アイテムボックスから空水晶を1つ取り出し、左手で持つ。
『アマス』
『エンチャント』
エンチャントをいい切る前に他の魔法を要求されたので、あらかじめ決めていた上級魔法の風を念じるが、失敗した。
そういやは空水晶に付與する前に付與する魔法を発現させてたな。
空水晶を見ると『アマス』はちゃんとかかっているっぽいからあらためて使わなくても大丈夫だろう。
『上級魔法:風』
風とのリンクを切らずに次の魔法をうつのは慣れなきゃけっこう難しいな。
『エンチャント』
また何かを求められた気がしたから、作していた風を選ぶと、空水晶に吸い込まれた。
明な空水晶が半明な黃緑っぽいになった。
「これで完か?」
「無詠唱で、しかも見ただけでできるとか、あんた嫌なやつね。」
なんでだよ。
詠唱省略はスキルで誰だって覚えられるだろ。
この空水晶…もう空ではないんだが、この風がった水晶はまだアマスの効果が続いてるっぽい。
アマスに解説を使ってみた。
アマス…対象に力を蓄積できるようにする魔法。
ついでにエンチャントも見てみるか。
エンチャント…生以外の対象に他の魔法を付與させる魔法。
生以外なのか。
ってことは『アマス』の効果が持続してるなら、まだ蓄積できるんじゃねえか?
『上級魔法:風』
『上級魔法:冷』
できるかなと思ってリンクを切らずに2つの上級魔法を出してみたが、難しいうえにただでさえ消費が多いMPが倍速でなくなっていく。
早くエンチャントをかけなきゃだが、3つのことを同時にやるのは慣れなきゃ難しい…でもMPの消費速度的にそんな猶予はないし、リンクを切ったらこの店に被害を出しそうだ。
修理費なんかに金は使いたくない。
だ。
『エンチャント』
あれ?対象が1つしか選べない。
そういやさっき、スキルで覚えると1つしか付與できないっていってたな。
とりあえず風を選ぶ。
『エンチャント』
冷を選ぶ際に冷をかなり低溫にしてから付與させた。
元空水晶のが、半明の薄い黃緑から白く濁った緑になった。
「あんたうちを破壊する気?」
「失敗しても被害を出さなくて済むように風を選んだんだ。そのくらいは考えている。」
「馬鹿なあんたが理解できるかわからないけど、魔法をこんな小さな水晶の中に圧してれているの。それなのに上級魔法を3つもれたら空水晶が割れたっておかしくないし、割れて圧されていたものが吹き出したとしたら、とてつもない威力になることくらい想像つかないの?こんな小さな家は簡単に吹き飛ぶわよ。」
圧してれてたのか。
ファンタジー的にただ収納してるのかと思ってたわ。
まぁ余計なことをいうと面倒そうだからとりあえず謝っとくか。
「悪い。考えがたんなかったわ。新しいことができてちょっと楽しくなっちまってな。あとは外で試すわ。」
どうせMPももうほとんどないしな。
「わかればいいのよ。ってかあんた、前はガントレットなんてぶら下げてたから理攻撃タイプだと思ってたのに上級魔法まで覚えてるのね。魔法使いにジョブチェンジしたの?」
確かに魔法使いもジョブにってるが、今も基本はガントレットで毆るタイプだ。
「ただ、SPが余ってたから取っただけだ。俺は戦闘ではほとんど魔法は使わないぞ。」
「余ってたって…さっきあんたが使ってた『上級魔法:冷』を取るためにはなくともSPを65必要とするのよ?それが余ってたってどんだけレベルを上げてるのよ。」
「とりあえず人族はカンストしたな。調教師もあと1レベルでカンストする。冒険者も50超えてるし、そこそこSPは手にれてるな。」
「なくとも2回はジョブチェンジしてるのね。しかもそれぞれをそんなにレベル上げるなんてどんな無茶な冒険をしているのやら。」
なんかかみ合っていない気がするが気のせいか?
なんとなくアリアを見る。
「…リキ様。」
「なんだ?」
「…たぶんですが、セカンドジョブやサードジョブを知らないのだと思います。」
「そうなのか?SPなんてものがある世界ではかなり役立つものなのに知られてないなんてあるのか?」
複數のジョブを一度にレベルを上げればそれだけSPがるし、レベル上げ自も1つずつやるよりずっと楽だろ。
「…SPで選べるスキルは膨大にあるため、探せば便利なものはたくさんあると思います。でも、発想がなければそもそも探せないため、ジョブを複數選べるスキルは知られていないのだと思います。」
確かに膨大にあるが、普通は一度は全部に目を通すだろ。
いや、そういや俺がわかりやすいように視覚化してるだけであって、もともとは脳に直接流れてくるようなじだったな。
アリアにも前にステータス畫面っていっても通じなかったし。
だからしいと思ったものがあるかを検索するような形になるわけか。そしたら発想がなければ見つけられないってのも頷ける。
でも、今までの勇者はこの世界をゲームだと思ってたならそのくらいの発想はありそうだけどな。
自分だけ強くなるために教えなかったとかそんなところか?
ありえそうだな。
「さっきのレベル上げのコツの話なんだが、知ってると思っていってないのがあった。SPをしいって意味でのレベル上げならの話だがな。」
「なになに?」
「セカンドジョブってのを選んで、そこに余ってるジョブを設定する。お前の場合は今が調合師なら、なくとも人族は余ってるはずだ。それをジョブ設定というスキルを取得して設定する。そうすれば2つのジョブが一緒にレベルが上がっていくから、SPの獲得は2倍だ。もちろんレベル上げ自は魔を倒さなきゃならないがな。」
「なるほど、そんな裏技があったわけね。自分から聞いといてなんだけど、それは私に教えちゃって良かったの?」
「別に隠すようなことでもないだろ?SPで取れるものなんだから。」
「意外ね。奴隷以外はパーティーにれないっていっていたから、自分だけ強くなる方法を知っていて、他の人には教えないようにしてるのかと思ってたわ。」
「なんだそれ?俺自べつに強くなる方法なんて知らんから地道に魔狩りをしてレベルを上げてるし、俺が奴隷以外をパーティーにれないのは裏切られるのを防ぐためだ。」
「それならいいのだけど、今はSPがなくて取れないから、レベル上げに行くときにはこの方法を使わせてもらうわ。」
「おう、好きにしてくれ。あと、俺の報と業火玉の作り方じゃ釣り合いが取れてねぇだろうから、これもやるよ。」
アイテムボックスから空水晶を10個とりだし、カウンターに置く。
空水晶はまだまだいっぱいあるからな。
これでまた今度、何かの報がもらえるならラッキーだしな。
「遠慮なくもらうわ。代わりといってはなんだけど、1つ報をあげる。」
さっそくか。
前から思ってたが、もらったら返すを律儀に守るやつだよなこいつは。
「勇者のパーティーが決定したみたいだから、近々街の外に行くみたいよ。勇者はまだ弱くても、バックに王族がついてるから権力はあると思うわ。だからあんたみたいに目立つ人は目をつけられるかもだから気をつけなね。」
気をつけろといわれても、勇者の顔も知らないからな。
「まぁ目立たないように気をつけるよ。それじゃあいろいろとありがとな。」
「こちらこそ。」
やることも終わったので、薬屋を出た。
それにしてもやっと勇者はき出したのか。
同じ異世界人のくせに初日から頑張らずとも生きていけるとはいいご分なことで。
代わりに王様の犬となることを考えたら、俺は今のままの方がいいな。
そんな結論を出して。歩き出した。
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