《裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚》25話
カマキリがいた場所の後ろの壁に観察眼が反応した。
隠し通路もしくは隠し部屋かと思ってってみるが通り抜けられそうになかった。
どういうことだ?
鑑定を使ってみる。
『結界』
またか。
嫌な記憶がフラッシュバックしたが、気にするのはやめよう。
どうしようか考えているとアリアとセリナがきた。
「ここに結界があるらしいんだが、何かわかるか?」
「…そういった話は聞いたことがないです。」
「壁の向こうは危険な気配があります。それもとても歪です。」
気配ときたか。
やっぱり獣人は野生の勘でも持ってるのかもな。
でもアリアが知らないとなると誰にも知られてないのか、最近誰かが作ったのか…考えてても仕方がないか。
鑑定の力を強める。
『一部の空間を切り取るために作られた結界』
さらに強めると頭痛の予兆的なものをじた。まだいける。
『蠱毒の実験場。40の魔を導し、結界を設置され60日間経過。本人以外による解除方法あり。』
さらに強めると頭痛が始まった。
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これでわからなければ諦めないとヤバい。
『解除方法:一定以上の衝撃を與える。もしくは壁に埋められた3ヶ所の魔法陣の破壊。』
周りを見ると魔法陣の位置を鑑定が見つけてくれた。
鑑定を解除すると頭痛が治まった。
鑑定は便利だが、あまり使いたくねぇな。
「結界の解除方法がわかった。俺はろうと思ってるが、セリナは危険という。アリアはどう思う?」
「…このダンジョンの地下7階レベルであれば、仮にフロアボスだったとしてもリキ様なら勝てます。問題ありません。」
「フロアボス?」
「…新しいダンジョンの場合、稀に下り階段の近くの部屋の中にフロアボスがいるそうです。フロアボスはその階の魔の倍近く強い場合があり、そのボスを倒すと次の階に行けるそうです。」
確かに下り階段の近くではあるな。
「でもここって既に地下30階までは攻略されてんだろ?だったらフロアボスがいるのはおかしくないか?一度倒しても復活するのか?」
「…はい。稀に普通の魔のように元フロアボスとしていた魔が生まれる場合があるらしいです。ですが、一度開けた部屋や結界が自然に再度閉まることはありません。」
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まぁ実験のために結界を張ったってなってたからな。
人為的なものだ。
それにアリアがいいたいのはこのフロアの魔の倍くらいの強さなら問題ないってことだろ。
ってか蠱毒って何かで聞いたことがある気がするんだが、思い出せないな。
まぁいいか。
魔が40匹くらいならなんとかなるだろ。
念のため剣はアイテムボックスにしまい、毒消し丸と抗麻痺丸をアリアとセリナに10個ずつ渡す。
「中がどうなっているかがわからないから、念のため抗麻痺丸は飲んでおけ。毒消し丸はすぐに噛めるように口に含んでおけ。わかったか?」
「はい。」
「…はい。」
2人が抗麻痺丸を飲んで毒消し丸を口に含んだことを確認して、俺も抗麻痺丸を飲み、毒消し丸を口に含む。
そして、短剣を腰から引き抜き3ヶ所の魔法陣を全て破壊した。
壁が薄くなっていき、なくなった先にはけっこう広い空があった。
中は他と同じくぼんやりと明るいから普通に見える。
全長10メートルくらいありそうなムカデのような魔がケツだけで直徑5メートルくらいありそうな蜘蛛っぽい魔の頭を食べていた。
気持ち悪すぎて回れ右をしたかったが、それ以上にムカデの強さに目が離せなかった。
こいつはこの前のミノタウルスより強い。
俺もけっこうレベルが上がったが、ステータスアップの支援魔法を使っていない今の俺と互角かそれ以上だろう。
逃げようとしたら俺以外は殺されるかもな。
やるしかなさそうだ。
短剣を腰に戻して、ムカデに近づく。
俺らに気づいたムカデは食事をやめた。
「にげ…我はなぜ……ここは………だ。」
喋った?
アリアをチラッと見ると顔が青くなっていた。
この反応はやっぱりヤバいってことか?
すぐに魔に視線を戻して、魔のきに注意をはらう。
「こいつは喋ってるが、魔じゃなくて魔族か?」
「…魔族になりかけです。早く倒さなければ危険です。」
「この國の法律や暗黙のルールがわからないが、魔族を殺してもいいのか?」
「…完全な魔族に手を出すと戦爭になるかもしれないですが、なりかけの魔族であれば問題ないはずです。むしろ、完全に知能を持っていれば話し合いで済む可能がありますが、今のあれはわたしたちを餌としか見ていないと思います。完全な魔族に昇格する前に倒さなければ、今のわたしとセリナさんではリキ様の足手まといにしかならなくなります。」
「魔族ってそんなに強いのか?」
「…はい。種族として見るなら、人族では魔法・理ともに劣ります。さらに人族と変わらない知能もあるため、Bランク以下の冒険者では一対一で勝つことはまず無理だといわれています。奴隷市場で話に上がった200年前の悪魔も魔族だという噂があります。」
「ケモーナ王國の8割もの民を殺したっていう悪魔がか!?」
「…違います。ケモーナ王國の8割の土地を破壊したのに1人も殺さずに2割の土地に押し込めた悪魔です。」
「人を殺してないのに殺以上の悪魔的な行いだな…。」
それじゃあ食料も足りなくなるだろうし、寢るところもない。
日本なら野宿も可能だろうが、あんな魔が出るところに一般人が野宿なんてできるわけがない。
そのうち自殺か死か無謀な魔狩りか人間同士での奪い合いになるんだろう。
考えたくもねぇな。
でもただの破壊なら凄い魔法が使えればできなくなさそうだが、破壊はするが人を1人も殺さないなんて蕓當ができるレベルっていったら、人族が束になったって勝てるのか?ってくらいじゃねぇか。それが1人の魔族の行いみたいだからな。
まさに化けだ。
「…その悪魔の強さは例外ですが、魔が魔族に昇格するとさらに強くなるそうです。昇格したばかりは近くの生を獲するそうです。その前に倒すべきです。」
説明しながらも、どんどん恐怖が増しているのか顔が真っ青でも小刻みに震えている。
セリナも似たようなじだな。
イーラは意外と冷靜だ。いや、気絶してる。
イーラを摑んでセリナに放る。
「2人はイーラを連れてり口まで下がれ。アリアはできる限りの支援魔法と狀況を見ての回復魔法だけ頼む。セリナは俺の戦闘を見ておけ。參考になるかはわからないが、多は勉強になるだろう。だから下手に橫槍はいれるなよ?わかったか?」
「…リキ様。」
「わかったか?」
「「…はい。」」
無駄にダズルアトラクトでMPを消費しないですみそうだ。
アリアの魔法頼みになりそうだからな。
アリアがありったけの支援魔法をかけてきた。
聞いたことない気がするのまで唱えてるから、また新しいスキルを得たのだろう。
2人がり口まで下がったのを確認して、さらにムカデに近づく。
近づくと余計にデカくじるな。
「待っててくれてありがとよ。」
なぜかはわからないが、こちらが準備を終えるまで待っていてくれた。
強者の余裕ってやつか?でも俺の観察眼が正しければ、魔法がかかってる今の俺の方が強いはずだ。
冷靜に対処すれば勝てるはずだ。
「アクマ…ケモーナ…レイガイ…ギャクサツ…ショウカク…マゾク…アリガトヨ…。」
俺らの話を聞いて言葉の勉強でもしてたのか?
なら、油斷している今のうちに倒す。
一歩踏み込むと、駿足の加護はないはずなのに思った以上のスピードがでた。
支援魔法もりもりなおかげで一歩で接近した。
ガントレットの間合いだと、ムカデっていうより壁だな。
先制攻撃として、本気の一撃を叩き込んだ。
「なっ!?」
メチャクチャいぞこの。
ヒビどころか凹みすらしねぇ。
まだブツブツと言葉を発していて、俺の攻撃を気にしてすらいないようだ。
短剣を引き抜き斬りつける。
ガキッと金屬同士がぶつかる鈍い音がした。
噓だろ?拳も刃もダメとか一気に攻撃手段がなくなった。
魔法か?でも攻撃に使えそうな魔法はなくはないが…試してみるか。
『フレアバウンド』
火力だけをマックスで放つ。
蟲なんだから火に弱いだろうという淺はかな考えはまずかった。
「ギシャーーーーーーーッ!」
がくても熱は通じるみたいで、暴れだした。
10メートルの巨が暴れたせいで、食いかけのデカ蜘蛛が吹っ飛ばされて壁にぶつかる。
俺はなんとか避けているが、支援魔法がなけりゃ避けれるサイズじゃねぇぞこれ。
だが、支援魔法のおかげで冷靜でいられる。
巨が近くを通るときに上級魔法の熱をできる限り高溫にしてぶつけるとい皮がし溶けた。
これは続ければいけると思ったが、マジックシェアをしていてもMPがもたなそうだ…
どうする。
このい皮が邪魔だ。
熱で一部だけでも溶かせれば…。
いや、い皮だろうがもしかしたら。
ムカデの巨を避けながら、アイテムボックスからダメージ貫通の剣を取り出し、背中に背負って固定する。
剣の練習はカマキリとしかしていないから、今回は加護だけもらうことにする。
尾?が俺に向かってきたため、避けずに毆る。
「ギャーーーーッ!」
威力負けし、壁まで吹っ飛ばされた。
でもダメージは通ってるみたいだ。
が緑のに包まれて、傷が治っていく。
ここならムカデのは屆かないから、一度鑑定をつかう。
蠱毒の覇者 レベル89
種族:キングピード
レベル高いな。
それよりも今見たいのはPPだ。
確認するとし減っている。
このいのを倒すには俺にはこの方法しか思いつかなかった。
PPを0まで削って殺す。
気勝負だな。
その後はヒットアンドアウェイを繰り返す。
ただ、一撃一撃を本気で毆ってるから疲れるし、せっかく整備したガントレットが見るからに歪んでいく。
どんだけいんだよ。
暴れるだけだったムカデが意図的な攻撃を仕掛け始めてきた。主に噛みつきや口から出すかたくさんある爪での引っ掻きだけだから、なんとか避けきれている。
魔相手にずっと回避の練習をしていてマジでよかった。
ただ、たまに使われる霧狀の攻撃は避けられず、麻痺狀態になりかける。
抗麻痺丸を飲んでるからけなくはならないが、きが鈍ってしまうからすぐに新しい抗麻痺丸を噛み砕いて飲む。
だから抗麻痺丸の減りが早い。
でもさっきアリアからのスキル取得許可申請が來ていたから、抗麻痺丸がなくなってもなんとかなるだろう。
ガントレットだけで攻撃していると先にガントレットが壊れてしまいそうだから、マジックドレイン効果でMPが回復したら上級魔法の熱を使って、MPが減ってきたらまた毆るを繰り返した。
どのくらい経っただろう?
時間では10時間くらいだが、実際はもしかしたら15分も経ってない可能もある。
まぁそんなことはどうでもいいか。
それよりもやっとPPが殘りわずかになった。
おかげでムカデのきも鈍い。
だからといって油斷をしたら危険だろう。
あとしでもヒットアンドアウェイ戦法を変えるつもりはない。
地味だろうが勝つしか生きる道がないんだからな。
その瞬間は唐突だった。
変わらず近づいて毆っては距離を取りを繰り返していたら、急にムカデがかなくなった。それから數秒の間を置いて、持ち上げてた頭側のが倒れてきた。
避けてから鑑定を使うと『蠱毒の覇者』という名前と種族以外が表示されなくなっていた。
死んだのか?
ぱっと見は表面だけ溶けてるとこが數ヶ所ある以外は無傷だ。
ここはあえて解説を使ってみるか。
『キングピードの死骸』
どうやら終わったみたいだ。
その場で仰向けに倒れる。
背中を打って苦しくなるが、ひんやりした地面が気持ちいい。
さすがに疲れた。
それにまた死ぬかと思った。
でも…。
…楽しかったな。
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