《裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚》33話
が怠い。
ぐっすり寢るどころか寢すぎたな。
腕時計を見ると12時を過ぎていた。
まさか寢すぎてが怠くなるなんてな。久しぶりの覚だ。
宿はとりあえず3日分支払ってるし、今日は武防屋に行く以外は夜まで予定はないし、問題ないか。
寢起きの怠いにこのヒンヤリとした覚は気持ちがいい。
…。
「あっ、リキ様。おはよ〜。」
「この前いったことをもう忘れたのか?」
この前勝手に人のベッドで寢たことを叱ったはずなんだがな。
「忘れてないもん!今日はリキ様を起こそうとしたら、ベッドに引っ張り込まれたんだもん!抵抗はしなかったけど…。」
イーラは最後に目を逸らした。
確かにそんな記憶があるようなないような…。
「そもそも俺が寢てるのを起こそうとするんじゃない。」
「ごめんなさ〜い。」
こいつ絶対悪いと思ってねぇな。
まぁいいか。
せっかく起きたことだし、シャワーを浴びてから、武防屋に行くとするか。
「おう、坊主。待ってたぞ。」
「どうも。」
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挨拶をしてカウンターのところに行くと、おっさんは手裏剣とクナイをカウンターに置いた。
「昨日の早いうちにあの外皮の加工方法が分かったから、シュリケンとクナイの試作も作っておいたぞ。」
マジか!このおっさん、けっこう出來るやつだったんだな。
「ありがとう!」
カウンターに置かれた手裏剣とクナイを手に取る。
俺のオーダー通りの形に仕上がっている。
ただ、刃の切れ味が予想以上だ。
手裏剣を持ったときに指を切った。
『ライトヒール』
淡い緑のに包まれて、指の傷が閉じていく。
指を切ったのをアリアに気づかれたらしい。
けっこう恥ずかしいな。
「セリナ。これらを持ってみろ。切れ味が鋭いから気をつけろ。」
「はい。」
セリナは手裏剣とクナイを何パターンかの持ち方で持ってみて、を確かめている。
「どうだ?投擲として使えそうか?」
「はい。ただ、殺傷能力は高くなさそうです。」
まぁ投擲なんてそんなもんだろ。
不意打ちや先制攻撃に使えればいいだろう。
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「手裏剣は場合によっては使い捨てだが、クナイは短剣としても使えるし、紐をつけるっかもある。だから使い捨てるなよ。」
「そういう用途だったんですね。かしこまりました。」
セリナの耳元に顔を近づけて小聲で話す。
「あと、今回の作戦のように足がつくと困ることには使うなよ。」
「はいっ!」
耳が弱いのか、頰が薄っすら赤くなり、耳がピクピクしている。
もしかしたら獣人にはタブーな行いだったのかもな。
まぁ奴隷だから問題ないが。
おっさんは怪訝な顔をしているが、話を戻した。
「そしたらあの外皮を使って、この形のクナイと手裏剣を頼む。ガントレットも含めてどのくらいでできる?」
「あの素材は溶かして型に流して量産することができるタイプじゃねぇからな。一個一個作るから、全部で10日はかかるだろう。」
けっこうかかるな。
「先にガントレットだけならどのくらいだ?」
「それでも7日はかかるだろう。」
そしたら7日も待てないから、今夜作戦決行だな。
「じゃあ先にガントレットを頼む。」
「あいよ。そしたら7日後に取りに來てくれや。」
「あと、これをくれ。」
樽の中からてきとうな短剣を選んで買った。
特に加護は付いていない、普通の安い短剣だ。
「おう、坊主なら銅貨20枚だ。」
「あんがと。」
禮をいってからおっさんの店を出て、街の東門に向かう。
南門から出れれば一番近いのだが、南門は貴族門と呼ばれていて、貴族と一部の商人と特別な依頼をけた冒険者しか通ることができないらしい。
まぁイーラが全速力で草原を突っ切ればすぐだから別に東門でかまわないんだがな。
門を出る際にイーラは短剣に変させ、俺のベルトに付けて通った。
試しに短剣を食べさせてみたんだが、うまくいったな。
ヘタにスライムを連れて行くと変の可能があると思われたらやっかいだし、人型だと使い魔紋がバレたら面倒だからな。
東門から出て、しばらく草原を歩いたあと、誰にも見られてないことを確認して、イーラにこの前の犬のような魔に変させた。
イーラには東門に來るまでに作戦の説明はしてある。
道も教えてあるから大丈夫だと信じたい。
全員が背中に乗ると走り出した。
推定時速120キロで走れば信號とかないし、3時間もあれば國境に著くだろう。そこからさらに3時間といったところか。
ケモーナは隣の國だしな。
今さらだけど1日で行けるとは意外と近いな。
まぁこの世界に車はないから、馬車だとしたら2日3日はかかるのかもしれないが。
2回目にしてもう慣れたのか、120キロ走行が気持ちいい。
俺に知識と技があればバイクを作りたいくらいだ。
まぁ一般の高校生である俺にそんな知識も技もないがな。免許も持ってないし。
楽しいと思えたのは30分程度だった。
2時間以上乗りっぱなしってのは暇だな。
座り心地がいいからか、ケツは痛くなくて助かってるが、どうしたものか。
…寢るか。
居眠り運転したってこの乗りは全自だから問題ないだろう。
ただ、落ちたら痛そうだな。それに俺が落ちたら後ろ2人も落ちるだろうし。
「イーラ。寢たいんだが、落ちないようにできないか?」
俺が質問すると、返事はなかったが、手足がイーラのにズブっと埋まった。
え!?怖っ!
でもなんか不思議な安定があって落ちる気がしない。
これは慣れればいいかもな。
「じゃあ俺は寢るから、頼んだぞ。」
アリアに聲をかけられて起きたら、國境近くだった。
若干寢ぼけてはいるが、イーラから降り、イーラを短剣にして近づく。
2時間以上も乗りっぱなしだったからか、寢起きだからか、ちょっとがふらふらするな。
しばらく歩くと國境に著いた。
國境には人族の兵士と獣人族の兵士がいた。
俺らに対応するのは人族の兵士のようだ。
「こちらの水晶にそれぞれ手をかざしてください。」
ステータスチェックか。イーラを短剣にしといて良かったわ。
各自ステータスチェックをしていくが、よくよく考えたらセリナが第二王だってバレるんじゃねぇか?
さっきから獣人族の兵士がセリナを見てるし。
しかも俺らが國してすぐに王城で問題が起きたら、疑われるんじゃねぇ?
「徒歩でここまで來たのですか?」
目をつけられることを心配していたら、兵士からいきなり話を振られた。
そうか、ここから今夜中に城に著くなんて普通はできないから、逆に疑われないかもな。
ここは話を合わせておこう。
「はい。ゆっくり旅がしたくて、たまに商人に相乗りさせてもらいながら、歩いて來ました。國境が近いと聞いて、ケモーナにも行ってみたいと思ったので、來てみました。」
「そうですか。でももうすぐ暗くなるから、最寄りの村まで急いだ方がいいですよ。」
「ありがとうございます。」
禮をいって、國境門を通る。
アリアとセリナが不思議なものを見るような目で俺を見ていた。
そんな目で俺を見るな!ちょっと想よくしただけじゃねぇか。
俺だってこのくらいはできるんだよ。
ここは山に挾まれた平地で、國境ラインと思われるところに山から山まで壁が作られている。
今通ったのはその壁にある唯一の門だ。唯一といっても山から山までたいした距離じゃないから、門は一個で十分だろ。
壁には厚みがあり、中で一応生活ができるようになっているみたいだな。
日本でいう駐在所みたいなじかな。
本當は山の中を通って國境を越える案を提示したのだが、アリアに卻下された。
俺がイビルホーンと會った山ほどではないが、山は基本危険だからとのことだ。
他にも無理やりの國境越えが出來そうなルートもあったが、攻撃される危険があるから、正規の方法で通るのが一番だということになった。
壁を完全に通り抜けると、反対側にも人族の兵士と獣人族の兵士がいた。
こいつらは特に話しかけてこなかったから、そのまま歩いて離れていく。
セリナのことは特に突っ込まれはしなかった。意外と世間に知られてないのか?
まぁ面倒にならなくて良かったわ。
ここがケモーナか。
まだ村も何も見えないから実はわかないがな。
國境門からけっこう離れたし、もう大丈夫だろ。
「イーラ。」
「は〜い。」
わざわざ一度人型になって返事をしてから犬型になった。
返事をするのは大事だが、そこまでは別に求めてないんだがな。
殘り3時間…もちろん俺は寢る。
イーラに全員が乗ったところで走り出した。
もう一度俺の手足を固定させ、睡眠をとることにした。
今日は道中何もなくて平和だったな。
ふと頭に「嵐の前の靜けさ」なんて言葉が浮かんだが、気にせず眠りについた。
乙女ゲームのヒロインで最強サバイバル 【書籍化&コミカライズ】
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