《裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚》37話
壁を降りてからは何事もなく宿屋まで來れた。
俺が起こした発のせいでセリナの耳もしばらく聞こえづらくなっていたようだが、治った後は周りを警戒させながら戻ってきたから、大丈夫なはずだ。
そもそも騒ぎで正門付近の人たちは避難していたようで、誰にも會わなかったしな。
部屋にると既にイーラは戻ってきていた。
「ただいま。」
「…おかえりなさい。」
「おかえり〜。」
イーラが元気よく近づいてきて、目の前で止まった。
流れ的に飛びついてくると思って避けようとしたが、まさかのフェイントをかけられた。
「リキ様!手が大変!」
イーラが驚いていた。
あぁ、これか。これに気づいたから飛びついてこなかったわけか。
「ちょっとハンマーの使い方をミスってな。」
衝撃発のハンマーは初めて使った。
たぶんだが、あれは対象に當てた際に対象が吹っ飛ぶから衝撃が前に抜けるのだろうが、床が頑丈で壊れなかったから、衝撃が跳ね返ってきた。
もちろん発そのものもな。
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だから俺はダメージをけたし、特に腕はドロドロだ。こんな腕でセリナを抱えたから、右手は皮も剝けている。
正直かなり痛い。
本當はバレないように長袖のシャツで隠すべきだったが、この火傷の上に服を著る勇気がなかった。
発の衝撃をモロにけたローブはボロ布と化していて、短剣で何ヶ所かを切るだけで簡単にげたから、アイテムボックスにしまってある。
中のシャツとかは無事だったから、さすがに出狂にはならずにすんだがな。
とりあえず俺とセリナは部屋の中にり、扉を閉める。
俺とイーラのやり取りを聞いていたアリアが怪訝そうにこちらを見た。
俺の腕を見た瞬間、顔が青ざめたように見えた。
アリアがアイテムボックスから何かを取り出して飲んだ。
『リジェネレイト』
『ハイヒーリング』
『フェルトリカバリー』
淡い緑のに包まれると、火傷がみるみるうちに治っていく。
それに伴い、痛みもなくなっていった。
20秒もかからずに完全に治った。
さすがアリアだ。
「アリア。ありがとう。」
「…はい。でも、あまり無理はしないでほしいです。心配です。」
無理をしたつもりはないんだがな。
結果的には酷いことになったが。
「心配かけて悪いな。あと、疲れてるところ悪いが、これから反省會を行う。」
俺が4人掛けのテーブルの席に座ると、隣にアリア、正面にイーラ、斜向かいにセリナが座った。
セリナはまだ元気がないな。
そういや俺がセリナに逃げろといったとき、けっきょくこいつは何を勘違いしたんだ?
あとで聞いてみるか。
「アリア。まずは正門での結果を教えてくれ。」
「…はい。イーラがムカデになってすぐに門を破壊して待機していると、最初は兵士が出てきました。ですが、數回攻撃してもダメージが與えられないのがわかると、兵士は囲んで警戒態勢となり、魔法が飛んできました。ですが、魔法も大したダメージがなかったように思います。」
「ムカデはいから痛くなかったよ〜。」
魔法はちょっと予想外だったが、怪我がないなら何よりだ。
「その後しばらくして、ケモーナ最強の戦士と思われる男が大剣を持って現れました。ですが、大剣での攻撃は切るか打つかしかなかったようで、イーラにはダメージが通っているようには見えませんでした。イーラは戦士に攻撃を仕掛けていたのですが、全く當てられていませんでした。どちらもダメージがない狀態が長く続いたあと、ケモーナ王國の旗が燃えたので、合図だと思い撤退しました。ちょうど戦士が大技を放ったところだったので、イーラは真っ二つになって溶けるようにスライムとなりに隠れて宿に戻ってきたようです。こちらは以上です。」
俺らの耳がいかれていたからイーラの聲が聞こえなかったわけではなくて、まだまだ余裕があったわけか。
「イーラは最強の戦士と戦ってみてどうだった?」
「強かったよ〜。イーラの攻撃が一回も當たらなかった〜。それに最後の攻撃は痛かった。切られて痛いのは初めてだったからビックリした。」
さすが最強というべきか。
何をしたのかはわからないが、理無効にたいしてダメージを與えやがったのか。
そんな相手と対峙してたら本當に負け確定だったな。
「2人ともよくやった。イーラの場合は相のおかげってのもあっただろうが、2人ともちゃんと仕事を達したから報酬をやる。」
2人の前に銀貨を2枚ずつ置いた。
「やった〜!」
「…ありがとうございます。」
「俺たちの方の結果だが、セリナを陥れた男は殺した。王と王に関しては最初から俺の中では殺すつもりがなかったから、そこで撤退した。だけど、撤退するときに騎士団副団長ってのに見つかってし戦闘があったが、正がバレることなく逃げられたから功だ。俺の腕の怪我は自だから気にするな。」
アリアが何かをいいたそうにしているが、あえて無視する。
結果報告は終わったから、次はセリナか。
「…ですか。」
ボソッとセリナが何かをいったが、いきなりなうえに小聲だったから聞き取れなかった。
全員がセリナを見る。
「悪い。聞き取れなかったからもう一度いえ。」
「なんでですか。なんでそんな怪我をしてまで私を逃したんですか!?」
何をいってるんだこいつ?
セリナは俺が自したのを見てるだろ。だから怪我と逃げるのは関係がないこともわかってんだろ?
「さっきもいったように怪我は自だ。逃げるのとは関係ない。」
「でも!最初の判斷通りに私を囮にしてればそんな怪我なんてすることなく、楽に逃げられたじゃないですか!」
「ん?俺がいつセリナを囮にするって判斷をしたんだ?」
そんな判斷をしたつもりもなければ命令もしてないはずだが。
「副団長が現れたときに私を先に逃がそうとしたじゃないですか。」
「ん?逃がそうとしたが、なんでそれが囮になる?」
「私に敵を集めて逃げる作戦ではないのですか?」
何いってんだ?目の前に強敵がいるのにその作戦に意味があるのか?
「そんなことまで考えちゃいねぇよ。ただ、同時に逃げる隙を作れるかの自信がなかったから、セリナを先に逃してから逃げようと思っただけだ。見捨てるつもりならセリナを副団長と戦わせてるうちに逃げるだろ。」
「え?…あ。」
納得したみたいだ。
「俺がセリナを見捨てると思ってるのか?」
「はい。私は奴隷です。危機的狀況になれば真っ先に切り捨てられる立場です。なのに、なぜリキ様は私を庇ったり、怪我をしてまで私を一緒に逃したりしてくれるのですか?いくらでも代えのきく戦闘奴隷を集めているのに意味がわかりません。」
そんなことを思ってたのか。
「俺が戦闘奴隷を集める理由はセリナに話したことなかったか?俺が戦闘奴隷を集めるのは裏切らせないためだ。だから立場上は奴隷と主だが、俺は仲間だと思ってる。だから危なければ庇うし、約束も守る。まぁ奴隷側の立場からすれば、俺がどう思っていようが奴隷と主でしかないかもだけどな。」
セリナは俯いて、言葉を返してはこない。
「紋様で縛られてるからセリナたちを信じれている俺がいえたことじゃないが、俺をもっと信じろ。俺はセリナたちを死なせるつもりはない。俺が死ぬまでは付き合ってもらうつもりだからな。」
これから長い付き合いになるのに元気がなさすぎるのはやりづらいからな…。
立場はわからせていたかったが、しゃーないか。
席を立ち、セリナのもとに行く。
それに気づいたセリナが怯えている。
セリナの肩に手を置くと、セリナはビクッとした。
「セリナ!お前は主と奴隷という立場を気にしすぎだ。だからそんなかしこまった対応をするんだろ?お前がそんなキャラじゃないことはわかってんだ。もっと自然でいろ。俺がお前らに課すのは『俺を裏切らない』と『俺の命令は絶対』の2つだけだ!だからそれ以外は好きにしてかまわない。せっかくもう一度生きるチャンスを手にれたんだから楽しめ。」
俺の勢いが怖かったのか、セリナは泣きそうになってる。
「でも、リキ様は人族で、私は獣人族だよ?」
「そんなの関係あるのか?そんなこといったらイーラは魔だぞ?」
「イーラは魔族だもん!」
アリアに目配せをするとイーラを連れてベッドに向かっていった。
「セリナはこれからの人生は楽しまなきゃダメだ。これは命令だ。わかったか?」
「…はい。」
セリナはポロポロと涙を流し始めた。
セリナを抱き寄せて、頭をでる。
さっき泣いたばかりなのに嗚咽をらしながら泣いている。
よっぽど溜まっていたのだろう。
しばらくするとセリナは俺の元から離れ、目をゴシゴシとこすった。
「リキ様…ありがとう。」
「あぁ。」
しは表がらかくなったか?
「これはお禮だよ。」
そういって、顔を近づけてきて、キスをしてきた。
キスといっても同士が一瞬れる程度の軽いやつだが。
というかガキのキスじゃ嬉しくもなんともないが、いうだけ野暮だろ。
「ニャハッ。」
まぁこの笑顔が見れたことだし、良かったとしておこう。
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