《裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚》68話
地下70階の魔を5ほど倒し、もう大丈夫だろうと判斷して、既に見つけてあった下り階段に行くと、エルフの奴隷が1人で階段前にいた。
魔が追ってこないように見張りでもやらされてるのか?
「お待ちしておりました。」
俺を見ている気もするが、俺は待たれるような関係ではないから、第三王を見る。
「いえ、あなた様をお待ちしておりました。」
「俺?なんかようか?」
「私の主は先ほど亡くなり、私は自由となりました。自由となったこのをあなた様に差し上げます。待奴隷にしていただいてもかまいません。なので、エルフを許していただけませんでしょうか?」
エルフが深く頭を下げてきた。
は?こいつは何をいってるんだ?
奴隷じゃない狀態で俺の前に現れた時點で奴隷として売られるのは確定事項だ。なのにお前の願いを聞きれると思ってるのか?
なんでそこまでしてエルフを護ろうとする?
「俺に得がない話をけれると思ってるのか?」
「そうですか…。」
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エルフは何かを諦めた顔をした。
ん?微かに歌のような何かが聞こえるがなんだ?
エルフの方から聞こえるが、エルフは口をかしてはいない。
いきなり鼻歌か?
『パラサイティックマジック』
『マジックキャンセル』
突然アリアが魔法を使った。
確か相手の魔法を奪う魔法と自の魔法をキャンセルする魔法だったか?
ってことは誰かの魔法を奪ってキャンセルしたってことか?
アリアを見る。
「…どうやっているのかはわかりませんが、この方が魔法を使おうとしていたので、強制キャンセルしました。」
「は?」
エルフを見るとを噛み締めていた。
この顔を見るに本當なのだろう。
渉決裂したら即攻撃とはいい格してるな。
「俺らがFランクだから簡単に殺せるとでも思ったか?」
「…。」
エルフは俯いて喋らない。
ずいぶんと舐めてくれてんじゃねぇか。
こいつはこの場で殺すべきだろう。
だが、不思議といつものような怒りはない。だからといってこんなふざけたやつを見逃すつもりも簡単に殺してやるつもりもない。
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そうだな…こいつがどこまで本気でエルフを護りたいのか確かめてやろう。
「そこまでして同族を護ろうとする意味がわからないが、そんなに助けたいならチャンスをやろう。」
エルフが顔を上げた。
「…チャンス?」
「あぁ、換條件でキャンテコック以外のエルフは俺にあらためて害を與えない限り関わらないでやる。ただ、この條件を飲む場合、お前は確実に死ぬ。どうする?」
「けます。私の死でエルフの民が救われるのであればどんな死でもけれます。ただ、差し出がましい願いなのは承知の上ですが、キャンテコックにも弁解の機會を與えていただきたいです。」
即答したのは心するが、頼み事とか自分の立場を理解してんのか?
「會って話をしろとでもいうのか?」
「はい。」
ふざけてるのか?
會うとしたら俺がエルフの里に行くくらいしか方法がないだろうし、俺がエルフの里に行くとしたら、それは戦爭でも始める場合だけだろう。
まぁ可能がないならけれてもいいか。
「もし、キャンテコックが自ら俺の元へきて、第一聲で謝罪をしてきた場合に限り、話を聞いてやる。」
「ありがとうございます。」
こいつは本當に俺が約束を守ると思っているのだろうか?
実際俺は約束は守る主義だが、こいつからしたら敵である俺が約束を守るだなんて信じられるわけがないだろうに。
やれるだけのことはやったと自己満足して死にたいだけか?気持ち悪い。
「イーラ以外は下がって後方からの敵だけに注意しろ。指示があるまでは絶対に戻ってくるな。命令だ。イーラはこっちに來い。」
「「「「「はい。」」」」」
「…ローウィンス様も參りましょう。ローウィンス様のためにもリキ様のためにも見ない方がいいです。」
アリアが気を利かせて第三王を連れて行こうとしている。
俺がやろうとしているのがロクでもないことだと分かっているのだろう。
さすがは一番付き合いの長いアリアだ。
「私は殘ります。」
まぁ第三王は好きにすればいい。
アリアを見ると困ってるようだったから、顎で第三王は気にせず下がれと指示を出した。
それだけで通じたようで、アリアたちは全員俺らから離れて、階段のある空間から出た。
「騎士どもに警告だけしておく。アインを連れて行かないとアインにトラウマを植え付ける可能があるぞ。」
「私は殘ってリキ様を見ています。」
「なら好きにしろ。」
きっとこれからの行を見たら幻滅して、もう俺を追ってくることもなくなるだろう。
むしろ殺人犯として追われるかもな。
國が敵になるのは面倒だが仕方ない。
そうなったらイーラには悪いが一緒に逃げてもらおう。
他のやつらは関與してないから、罪には問われないだろう。
「さて、それではこれからお前には苦しんで死んでもらうが、死ぬまでに聲を上げなければ先ほどの約束は守ろう。ただし、聲を上げたらお前はただの無駄死にだ。喋るのはかまわん。」
まぁ喋る余裕なんてないだろうがな。
「かしこまりました。」
「もちろん魔法を使ったりしたら、約束は破棄する。あと、これは俺の優しさでいうが、代わりの加護を付けてると2度死ぬことになるだろうから、外した方がいいぞ。」
優しさってのはもちろん噓だ。
無駄に消費させるのはもったいないからな。だったら俺が有効活用する。
「そんな高価なものは持っていません。心遣いありがとうございます。魔法も使用するつもりはありません。」
あれって高価なものなのか?
クリアナが6つもくれたからたいしたものじゃないのかと思ってた。前にも1つくれたし、寶石商も口止め料的なじでくれたしな。
「それじゃあお前はそこに寢ろ。」
エルフは俺の指示に従って、仰向けで橫になった。
そういやこいつの裝備品もどうせならもらっちまおう。
イーラの耳元に顔を近づけて小聲で話しかける。
「イーラ。このエルフの足先からゆっくり捕食しろ。死なないようにちょっとずつだ。裝備品は収納してあとで取り出せ。できるか?」
「もちろん!」
イーラは俺に笑顔を向けたあと、エルフの足首を摑んだ。
正確には靴の部分が足ごとすっぽりとイーラの半明になった手の中にっている。
エルフは何をするのだろうとイーラを見て不思議そうな顔をしたあと、顔をしかめた。
まるで苦痛に歪めるような顔だ。
まぁ実際、苦痛に歪めてるんだろうがな。
イーラは先に靴を奪ったみたいだから、俺の位置からだとエルフの足の指がなくなってるのが見える。
つま先から徐々に消化してるのだろう。
イーラは第三王に背中を向けているから、第三王たちからは何をしてるか見えないだろう。
10分くらいして、ようやく膝まで消化したが、エルフは聲を上げなかった。だが、汗が凄いな。
偏見で悪いが、がこんなに汗をかいてたら引くレベルの汗だ。
なんだかんだですぐに聲を上げて終わるだろうと思ってたのに、予想以上に時間がかかってる。
早くしないと攻略されちまうってのによ。
「なんでお前はそこまで我慢するんだ?」
エルフは強く閉じられていた目を開いて俺を見た。
「…エルフの…民の…た…めです。」
ずいぶん苦しそうなのに返事はするんだな。
「なぜそこまでして同族を護ろうとするんだ?」
「…あなた…様…の恨み…を買っ…たのが…私の…子孫な…ので、でき…ること…なら…肩代わ…り…したいと…思ったので…す。」
「は?キャンテコックはお前の子どもなのか?」
「…子どもでは…ないです。…私は…40年…以上前に…奴隷にされ…たので…孫かひ孫…か…もっと…後裔かも…しれません。…ですが、名前で…子孫だと…いうのは…わかります。」
そういやこいつは見た目は30歳前後だが、実際は80歳を超えてたな。
今のいい方だと會ったことがないのだろう。會ったことのない子孫のために命を使えるのか。
そういうのは嫌いじゃないな。
イーラの手は既にエルフの足を食べ終えて、腹部にまで到達した。
「グフッ。」
エルフはを吐いた。
臓が食べられたのだろう。
これじゃあもう喋れねぇだろうな。
まぁとくに聞きたいことがあるわけじゃないが、イーラに捕食させるならやっておかなきゃならないことがあった。
「イーラ止まれ。まだ死なないようにしておけ。」
「は〜い。」
「お前に最後の命令だ。それをしたら楽にしてやる。」
「グフッ。」
返事をしようとしたのか、またを吐いた。
「SPを使って詠唱省略を取れ。詠唱短文化、詠唱半減、詠唱省略の順番で取れるはずだ。取れたら頷け。」
「グフッ。ゴポッ…まだ…先が…ゴポッ…あり…ゴポッ。」
何かを話そうとしているが、がどんどん溢れてきて喋れてない。
何がいいたい?
數秒後にまさかの念話がきた。
「直接話せず申し訳ありません。念話で失禮いたします。」
「念話が使えるなら最初からそうしろ。」
聞きづらくてしかたなかったからな。
「申し訳ありません。今取得いたしました。それまでは念話という発想がなかったもので…。」
まぁ普通に話せるのに念話なんて必要ないからな。
そもそもこの世界のやつらは発想がないとスキルを見つけられないらしいしな。
「そんなことはどうでもいい。さっきは何をいおうとした?」
「はい。詠唱省略の先がありますが、取得しますか?」
は?詠唱省略より先があるのか?
自分のを確認するが、それといったスキルはない。
「なんてスキルだ?」
「『思念発』です。」
あらためて確認するが、ない。
スキルが膨大にありすぎてちゃんと確認できてないのかもしれないが、以前全てを確認したときにはなかったし、今流し見ても見當たらない。
名前からして、魔法名すら口に出さずに思うだけで発できるってことか?
そういや前にあったエルフも詠唱してなかったな。
エルフしか取得できないとかか?
だとしたらイーラが捕食しても得られない能力かもしれないが、まぁどうせSPが殘ってても無駄になるだけだろうから、取らせておくか。
「そうだな。取っておけ。」
「取りました。他には何をしたら良いでしょうか。」
なんでこいつは恨みごとの1つもいわないんだろうな。
復讐しているはずなのに、なんだか虛しくなってくるじゃねぇか。
「もういい。楽にしてやる。」
「…はい。」
「俺は約束は守る主義だ。安心して眠れ。」
「ありがとうございます。」
エルフはこれだけ痛めつけられているのに、それを行っている俺に対して笑顔を見せた。
「イーラ。もう終わりだ。一気に捕食しろ。」
「は〜い。」
イーラは立ち上がって大きめな布のようなを取り出して、バサッと広げてエルフに被せようとした。
「ごめんなさい。せめて、あなた様が忌魔法に打ち勝つ日まで、その娘を側に…。」
エルフの念話の途中でイーラが捕食を終えた。
かなり気になることを最後にいいやがったが、何をいおうとしたのかもう確認が取れねぇ。
忌魔法に打ち勝つってなんだ?
そもそもこいつは俺が忌魔法を持ってることを知ってるのか?
…もう死んだやつから話は聞けないし、考えるのはやめよう。
こいつのいいたかったことがなんであろうと俺の生き方が変わるわけじゃねぇしな。
後ろを振り返ると、第三王とケニメイトは顔を真っ青にして口を押さえて俯き、騎士の1人は目をつむり、殘り2人の騎士は顔をそらしていた。
第三王の反応は理解できなくもないが、他のやつらはこの程度のグロさは見慣れてるだろ。
全員が直視できなくなっていたのかと思ったが、目をつむっていた騎士が目を開けて、悲しそうな顔をした。こいつは気持ち悪がってたんではなく、黙禱を捧げてたのかもな。
「リキ様〜。裝備品はどうしたらい〜い?」
第三王たちを見ていた俺の腕をイーラが引っ張って確認してきた。
「そうだな。忘れないうちに預かった方がいいから出せ。でも杖は出すな。」
さすがに杖はエルフのだって一目でバレるだろうから、第三王になんかいわれたり、沒収されたら面倒だ。
「は〜い。」
イーラは服と靴、ミサンガと指を渡してきた。
ミサンガと指は観察眼が反応した。
とりあえず服と靴をアイテムボックスにしまってから、2つに鑑定を使うと、ミサンガには加護は付いていなかった。
というか、鑑定いわくこのミサンガはエルフの手作りらしい。加護がないのに反応があるってことはにつけておけば加護が付く的なやつか?確かアリアの時がそうだったし。
そしたら付與師のジョブが手にるんだよな。
これは俺が…いや、俺の場合は何日で付與できるかとかの覚がわからないから、マリナに著けさせるか。
一応は付與師家系だから、うまく使いこなすだろう。
指はちゃんと加護が付いている。
しかも裝飾を見るに高そうだ。
MP蓄積…容量に応じたMPを蓄積させることができる加護。
外部メモリみたいなじか?
便利ではありそうだな。これは魔法を使うアリアに渡すか。
とりあえずアイテムボックスにしまっておこう。
「もう用は済んだ。下に下りるぞ。」
「「「「「はい。」」」」」
アリアたちに聲をかけて、下り階段を下りた。
- 連載中40 章
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