《裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚》71話
けっきょくドヤ顔で自慢した混合についてなんの反応もしなかったら、イーラが不貞腐れてしまった。
上級魔法のことに驚いて、それどころじゃなかったからな。
その後、イーラがそのを飲んだときにMPの回復量を見ようとして驚いた。
確かに回復したことも凄いが、そもそものMP量がアリアの倍以上ありやがる。
今まで俺のパーティーでMP量が一番だったアリアの倍以上とかふざけてるだろ。
ってことはさっきの魔法はこんだけ多いイーラのMPの7割も消費してたんだから、実戦じゃほとんど使えねぇじゃねぇか!
いや、魔法にはこういった使い方もあるということが知れただけでもプラスか。
イーラから褒めてオーラが出てたから、とりあえずてきとうに褒めておいた。まぁこの量のMPを回復する薬ってのは確かに凄いからな。
だからといって俺は飲みたくないが。
セリナたちの元に戻ると、下り階段の結界が外れていて、扉も既に開いていた。
まさかSランクのやつらは既に下に行っちまったのか!?
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「おかえりなさい。ちょうど戦闘が終わったようで、扉が開いたところです。」
俺がやっちまったと心焦っていたら、ローウィンスが心を読んだかのように教えてくれた。
「そうか。ならちょうど良かったな。」
扉を見ていると、ぞろぞろと強そうな冒険者が出てくる。
全員が全員化級というわけではないみたいだが、全員俺らよりは強いだろう。
一対一では勝てる気がしない。
同じ人間なのにここまで差が出るものなんだな。
どこぞの辺境伯や今朝の化級の冒険者が特別なだけだと思っていたが、これだけの數の強者を見ると、こいつらが特別強いというより俺が弱いのだろうと気づかされる。
日本生まれの俺が強くなるための修行なんて知るはずもないからな。せめて今日はこいつらの戦いを見て、勉強させてもらおう。
どうせ俺らはもうこのダンジョンでは限界だし、戦いは放棄して見學といかせてもらうか。
扉から出てきたSランク冒険者どもはこちらをチラ見はするが、とくに何もなく下に下りていく。
たとえ王だろうがたいしたリアクションを取らないってのは冒険者らしくていいな。まぁ単純に第三王を知らないだけかもしれないが。
全てのパーティーが6人組だとしたら、5組目のパーティーに今朝の化の男がいた。
どうやら向こうも気づいたようだ。
「おっ!にいちゃんも合流したんだな。やっぱ強いんじゃんか。」
「いや、ズルして合流しただけだ。俺らは75階でギブアップだ。こっからはあんたらの戦いの見學をさせてもらおうと思う。」
「まぁその裝備で地下75階までこれりゃあ十分じゃねぇか?それより、見られるんならお兄さん、頑張らないとな。」
そのいい方だと今までは頑張る必要なく來れてるみたいじゃねぇか。
実際そうなのかもしれないが、Sランク冒険者の本気を見せてもらえるならラッキーだな。
「あぁ、期待してる。」
「任せとけ!」
その後は俺らはほとんど戦闘に參加せず、本當に見學に徹した。
けっきょくこのダンジョンは地下97階まであった。
通常のフロアは魔は極力避けて進んでいると聞いていたが、俺が見學するといったからか、化の男が魔を倒しながら進んでいた。
それでも進行速度がほとんど変わらないのだから、本當に化だ。
その戦闘方法を見て、『刃神技』なんて2つ名が付いていることに納得してしまった。
こいつの剣技は蕓だ。
セリナの攻撃をカッコいいなんていっていたが、こいつは比べものにならないくらいに綺麗だ。
通常時は短剣の二刀流で流れるように魔を切り裂いていた。
どうやったら短剣であんな綺麗に魔をバラバラにできるのかと不思議でならない。
地下83階と86階、90階と95階はフロアボスがいたのだが、俺は刃はなんでも使いこなせるとでもいわんばかりに、全て違う武でボスと戦っていた。
剣、薙刀、鎌、大剣と4種類の武での戦闘を見せてくれたが、どれも蕓的だった。
ぶっちゃけ俺の語彙力じゃうまく表現できない。
俺は見て覚えられるような天才ではないが、セリナやアリアはきっと勉強になったに違いない。
他のSランク冒険者たちはフロアボスとしか戦っていなかったが、さすがSランクというだけの強さはあった。
こっちの方が俺らには勉強になったな。
べつにバカにしているのではなく、あの男が化級に強すぎて、俺には真似できそうにないってだけだ。
他のSランク冒険者だって十分に強い。
だから勉強になるんだからな。
ただ、ガントレットで戦ってるやつが1人もいなかったのが殘念だ。
前衛はほとんどのやつが剣でハンマー使いが1人と槍使いが2人いて、3分の1は魔法使いだった。
やっぱり強い敵と戦うにはパーティーに魔法使いがいた方がいいのかもしれないな。
俺とアリアとイーラは魔法がそこそこ使えるが、まだカレンに前衛を任せるのは厳しいだろうし、アリアには援護や回復に専念してほしいと思う。
イーラはバカだから魔法を使わせるのがちょっと怖いし、せっかく理無効を持っているから前衛で戦わせたい気持ちもある。
マリナは使えないし、そろそろ魔法に特化してる戦闘奴隷でも探すべきか。
まぁそれはカレンがもうちょい使えるようになってからかな。
地下97階は階段で下りた目の前がすぐに扉だった。
ダンジョンの最深階はどこもボス部屋しかないそうだ。
もちろん俺らは最後も見學だ。
だって足手まといにしかならないどころか、下手に戦えば死人が出る。
そんな敵と無理に戦うつもりなんてない。
でも、もっと強くならなきゃとあらためて思うわ。
化の男が最後に見せてくれた武は刀だった。
カレンにはよく見ておけといいはしたが、勉強になるかは怪しいだろう。
レベルが違いすぎるからな。
それでも見て損はなかったはずだ。
俺もまだ真似できないにしても、いつかはこのくらいにはなるつもりだ。
じゃなきゃアリアたちに抜かれちまうからな。
主のプライドとしてそれは許せないからな。
最後のボスもアッサリと終わってしまった。
最後のボスは時間にして20分くらいはかかっていたが、それでもアッサリと思ってしまうくらい、余裕を持った戦闘だった。
実際はどうかは知らないが、見てる側としては勝って當然といったじだった。
ボスが倒れると、部屋の奧の下り階段の結界が外れた。
その階段を騎士が下りて、しばらくするとダンジョンが微かに揺れ始めたところで、騎士が戻ってきた。
アリア曰く、あの下にコアがあり、コアを取るとダンジョンがなくなるそうだ。
このままダンジョンに飲まれても、完全にダンジョンがなくなった後に地上に吐き出されるらしいが、誰もその選択はせずに全員リスタートで外に出た。
そして報酬は後日となり解散となった。
…今日は本當に自分の弱さを実する1日だったわ。
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