《裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚》72話

クエストを終えたときには外は薄暗かった。

周りは既に解散しているのだが、俺はダンジョンがなくなる様子をぼーっと見ていた。

揺れながら徐々に一階部分の高さがなくなっていき、しばらく経つと平らな地面となった。

森の中なのにダンジョンがあった部分には草一つない。

足で踏みしめるとけっこう固い。

これなら上に家とかも建てられるな。

そこそこのサイズもあるし、村にすることができそうだ。

まぁここが森の中じゃなければだけどな。

ここに村を作ろうとか考えるやつがいるとしたら頭がおかしいとしか思えないな。

あんな緑の化が出るような場所だしな…ってか既に危ない時間なんじゃねぇか!?

「もう夜なんじゃないか?」

「…はい。既に魔が活化する時間です。」

「イーラ。急いで町…。」

俺は途中で言葉を區切り、マリナのステータスを見た。

今回はかなりの経験を積んだし、もしかしたらと思ったが、魔力増量の加護が増えていた。そのまま視線をミサンガに移すが、間違いなさそうだ。

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「いや、クリアナのところに行くから、変しろ。」

「は〜い。」

巨大な犬となったイーラの後ろに全員乗り、村へと向かった。

村に著いてイーラから降りると、セリナが隣に並んできた。

「にゃんでわざわざこの村に來たの?」

「金を得るためだ。」

「?」

まぁセリナじゃわからないだろう。

アリアはもしかしたら最初からわかってたかもな。

これからやることを知ったらアリアとイーラ以外には失されるかもな。

まぁだからといってどうということはないが。

マリナのステータスをあらためて確認する。

本當はこんなすぐの予定ではなかったが、今回は運が良かったからな。

そろそろ俺にも幸運の加護がついてもいいんじゃないか?

クリアナの家に著くと、店は既に閉まっていたが、まだ部屋には明かりが點いているから起きているだろう。

家側に回り、ドアをノックする。

しばらくすると扉が開いた。

「どちら様でしょうか?」

「俺だ。夜分に悪いが、商談をしに來た。脅すつもりはないが、この商談は聞いておいたほうがいいぞ。」

「リキ様でしたらいつでも歓迎です。何も用意できていなくて申し訳ないですが、どうぞ。」

「突然で悪い。アリアとマリナも一緒に來い。他は宿を取っといてくれ。」

セリナに金を渡して、5人部屋を取るように伝えた。

セリナがバカだからなのか俺の命令は絶対だからかはわからないが、何の疑問も持たずに引きけたようだ。

今回は空気を察したのか、クリアナはここに泊まれとはいわなかった。

俺らはリビングに案され、俺とクリアナが対面で座り、アリアとマリナは俺の後ろに立っている。

「それでは商談をさせてもらおう。今回、マリナを連れてクエストに參加したんだが、一切使いにならなかった。だから売ろうと思っている。アラフミナの奴隷商に売ったところでたいした値段にはならないと思うから、他國で売ろうと考えているが、もし金貨10枚と付與時間を早める方法の報で買うというやつがいたら即決定するつもりなんだが、どうだ?」

マリナは予想していなかったのか、背後で息を飲む音が聞こえたが、反論の聲は上がらなかった。

まぁ使えなかったのは事実だしな。

「…リキ様は初めからこうするつもりでマリナを奴隷にしたのですか?」

いつもほんわかしているイメージだったクリアナの空気が変わった。

そりゃ最初から金やら報やらをもらうつもりで奴隷にしたのなら、恨まれても仕方ない。

「否定はしない。だが、もし使えるならという可能もあったが、治癒魔法も攻撃魔法もアリアに劣る。攻撃魔法では俺にすら劣る。理攻撃は使いにならない。冒険者としての知識はマリナが役に立つかもしれないが、そもそも必要としていない。これでは邪魔でしかない。最初に約束した通り、使えないから売るだけだ。べつに奴隷商に売っても俺に損はないんだが、しでも仲間であったマリナのためにクリアナに商談を持ちかけただけだ。返答は好きにしろ。」

クリアナが俺、アリア、そしてまた俺の順に視線をかした。

最初に俺を見てたときは怒っているように見えたが、アリアを見たときに微かに驚き、再度俺を見たときには怒りがおさまっているように見えた。

どういうことだ?

「…わかりました。娘の命は何にも変えられません。金貨10枚と付與時間を早める方法で買わせていただきます。今ご用意いたします。」

クリアナはお金を取りに店の方に向かっていった。

やっぱり金を持ってるんだな。

第三王が贔屓にしてるくらいだからな。さいあく金貨5枚まで譲ろうと思ってたが、その必要はなさそうだ。

振り向いてマリナを見ると、無表で涙を流していた。

奴隷解放されるってのになんで泣いてんだ?

そんなに使えないっていわれたのがショックだったのか?

まぁだったら俺を恨んで生きればいい。

「マリナ。最後の命令だ。SPを使ってジョブ取得とジョブ設定を取れ。」

マリナは無表のまま目だけを俺に向けた。

「聞こえなかったのか?クリアナが金を支払うまではまだ俺の奴隷だ。だから俺の命令は絶対だ。」

「…取りました。」

「そしたらジョブ取得を発して、新しく得られるジョブを取得しておけ。あとはジョブ設定で設定すればいい。そうすれば、冒険者が無理でもクリアナの手伝いくらいはできんだろ。」

マリナがこいつは何をいってるんだ?という顔に変わったと思ったら、その顔がすぐに驚きへと変わった。

「付與師!?」

今思えば、もし付與師が10歳未満しか取得出來ないジョブだったら、本當に何いってんの?ってじだったな。

でもこの反応を見るに大丈夫だったみたいだ。

「それは俺のパーティーに関しての報の一切をらさないための口止め料だと思ってくれ。もちろん親にもな。」

これで罪悪もないしな。

なんせ俺は金貨10枚と付與時間を早める方法が手にるし、クリアナは娘が帰ってくるし、マリナは念願の付與師になれた。皆萬々歳じゃねぇか。

もちろんクリアナの損失には目をつぶってもらうがな。

マリナが言葉にならない何かを口かららしているときにクリアナが戻ってきた。

「こちらが金貨10枚です。そして、これが私の家系に代々伝わる魔法陣の寫しです。」

クリアナは再度椅子に座り、金のった袋と魔法陣が描かれた紙をテーブルに置いた。

「金は確かにけ取った。あと、この魔法陣はどうやって使うんだ?」

「この魔法陣を左右対稱になるよう、自に描きます。あとは普通に付與するだけです。私は毎回描く手間を省くため、両手の甲に特殊なインクと魔法で刻み込んであります。」

クリアナは綺麗な両手を見せてきたが甲には何もない…と思ったら、魔法陣が浮かび上がってきた。

今のいい方だと、普通は一回付與するごとに描かなきゃならないわけか。

でもそんな毎回やるわけじゃないから、それでもいいか。

魔法陣が描かれた紙をけ取り、アリアに渡した。

「それじゃあ契約立だ。」

奴隷解放をすると、マリナのから黒い何かが蠢きながら溢れ出し、床にボトボトと落ちた。

その黒い何かが床を這って俺に絡みついて浸していった。

もう慣れたが、普通に考えたら気持ち悪いな。

「じゃあ俺とアリアはこれで消える。マリナはもう二度と奴隷になりたいなんてバカみたいなこといわないようにな。」

「はい。ありがとうございました。」

マリナが泣きながら頭を下げた。

恨まれることはあっても謝されることはしてないんだが、まぁいきなり攻撃されるよりはいいか。

俺とアリアはそのままクリアナの家を出て、セリナたちが待つ宿屋に向かった。

アリアは終始なにもいわなかったが、どこまでわかっているんだろうな。

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