《裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚》74話
「はぁはぁ…。」
夢と現実の狹間をうろうろしていると、腹部にわずかな重さがあり、荒い息遣いが聞こえてきた。
「はぁ…リキ様…はぁはぁ…。」
ずいぶん艶っぽい聲を出してるが、この聲はイーラだろう。なら無視でいいや。たいして重くもないしな。
俺はまだ眠いから、目も開けずに二度寢を始めた。
「はぁはぁ…リキ様…食べたい…。」
…。
ジュッ。
「いってぇなコノヤロー!」
腹部に激痛が走り、ビックリして怒鳴りつけて跳ね起きたから、腹の上に乗ってたイーラがベッドから落ちた。
俺の怒鳴り聲に驚いて他の全員が起き上がる影が見えた。
外はまだ暗く、あまりよく見えないからアリアが明かりをつけたようだ。
明るくなったから、まだ痛い腹を確認すると、寢間著は腹部分がなくなっていて、腹からはがジュクジュクと溢れている。
…噓だろ?
イーラが俺を裏切った?
『リジェネレイト』
『ハイヒーリング』
傷に気づいたアリアがすぐに魔法を使ったおかげで傷が塞がり、痛みもなくなった。
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ベッドの下に落ちたイーラを見ると、息遣いが徐々に元に戻っていき、ハッと我に返ったような反応をした。
イーラはキョロキョロと周りを見た後、自分の両手を見つめながら數回グーパーを繰り返してから俺を見た。
しばらく目があうとイーラは涙を流し始めて、頭を押さえてうずくまった。
「違う違う違う違う違う違う違う違う!イーラじゃない!イーラじゃない!!!」
なんだ?
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。捨てないで。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ…。」
なんで襲ったイーラがパニックになってんだ?
ペットが噛みついたからって本気で怒ったからか?
なんかイーラがパニックになったおかげで冷靜になれたな。
普通に考えてイーラが裏切るつもりなら一瞬で食われてただろうしな。
こんな中途半端にやったら後が怖いことくらいは理解してるはずだ。
いや、バカだから理解してないかもな。
それでも裏切るなら即殺すか逃げるだろう。今のイーラなら魔紋を壊せそうだしな。
「とりあえず落ち著け。」
イーラを抱きよせて頭をでるが、まだごめんなさいといい続けている。
この反応を見るにやっぱり裏切りではないだろう。
正直良かったと思ってる自分がいることに驚きだ。
しばらく頭をで続けていると、イーラは大人しくなった。
「とりあえず、なんであんなことをしたんだ?」
あまり想像はしたくないが、たぶん俺はイーラに食われたのだろう。的な意味ではなく、そのままの意味で。
ゾッとする話だな。
生きたまま食われるってこんな覚なのか…。
「わからない。もっと食べたいって気持ちが大きくなって、でもそんなの初めてだったし、勝手はダメだから我慢してた。だけど、食べたいって気持ちがもっと大きくなって、リキ様ならなんとかしてくれると思って…気づいたらリキ様を食べたいって思ってた。ダメだと思ってるのに食べたいの方が強くなって…ごめんなさい。捨てないで。」
お腹が空いてたってことか?
あらためて考えるとイーラがお腹空いたっていったことはなかったな。
まぁあれだけいつも魔を食ってるんだから普通は腹なんか減らねぇか。
でも昨日もけっこう魔を食べてたと思うけどな。
「別に捨てたりしない。ちなみに今はどうだ?」
「食べたい気持ちはあるけど、我慢できる。」
なんだ?過食癥か?でも狀態異常を確認しても何もなってないしな。…まさか暴食?
忌魔法の暴食を持ってるやつは既にいるから、そんなことはないだろうと思いながらもイーラのスキルをチェックする。
スキルがあり過ぎて一つ一つ確認なんてできないから、流し見て『忌魔法:暴食』を探すが見つからない。
ひとまずは安心だ。でも、じゃあなんだ?
今度は観察眼をフルに使って原因でありそうなスキルを探す。
…あった。
飢…空腹となるスキル。常時発型。
なんだこれは?完全なるデメリットスキルじゃねぇか。
いつ手にった?
「お腹が空くようになったのはいつからだ?」
「たぶん進化した後からだと思う。」
ということは、また進化させれば消える可能があるのか?だが、進化條件がわからねぇ。今までイーラは放置してたからな。そのツケがここできやがったか…。
「アリア。スキルを外す方法ってのはあるのか?」
「…ごめんなさい。わかりません。ただ、『忌魔法:暴食』の効果に相手のスキルを奪うというのがあると本で読んだことがあります。あと、古代魔法にスキルを封印できる魔法があるという話も本で読んだことがあります。ですが、どの程度信用できるものかはわかりません。」
この世界の本がどの程度真実が書かれてるかは俺の方がわかんねぇわ。でも今までアリアの報は間違ってないから、どっちも本當である可能が高いととってもいいが、どちらも今すぐどうにかなるもんじゃねぇからな。
だったら進化させた方が早いと思うが、進化させても消えない可能もあるんだよな。
仕方ない。方法が見つかるまでは常に何かを食べさせるしかないな。
「アリア。この前行ったダンジョン以外で魔がたくさんいる場のダンジョンはないか?」
「…海を渡らなければならない場所でよければ、魔がダンジョンの外に出てきてしまうほど溢れかえっている島があるらしいです。ただ、わたしは場所がわかりません。それに名前がないそうで、報を集めるのが難しいかもしれません。他はまだ調べられてません。ごめんなさい。」
たぶん俺が地図を買った島のことだろう。
だけどあそこはSランクのレベル上げ用みたいなことをいってたからな。俺らが行ったら死ぬ可能があるから卻下だ。
もういらないってくらいいっぱいいて、そんなに強すぎない魔がいるところ…そういやマッドブリードなら一晩中出続けるじゃねぇか!と思ったが、イーラは泥も食えるのか?
々案を出したところで、どれも今すぐできることじゃねぇな。
とりあえず今は俺らが持ってる攜行食を全部イーラに渡して、明日町で大量に攜行食を買っておくのが無難か。
「とりあえず全員持ってる攜行食をイーラに渡せ。イーラは我慢が出來なくなったらすぐに攜行食を食え。そしたらまた我慢の限界まで待ってから食うを繰り返せ。それでいけそうか?」
「わからないけど大丈夫だと思う…。ごめんなさい…。」
「別に俺の腹を食ったこと以外は謝る必要はねぇ。とりあえずそのスキルがどうにかなるまでは攜行食もしくは魔で食いつなぐ。金はあるしな。」
「リキ様ありがとう!」
イーラが俺に抱きついて顔をグリグリやってくる。
あれ?なんかこいつ溫かくねぇか?
今までは冷んやりしてて気持ちよかったのに人くらいになってる気がする。
「イーラ。いつの間に溫が上がったんだ?」
「エルフの人を食べたから、もう完全に人間だよ!」
イーラがエヘヘと笑う。
微笑ましいが、いってることはかなり騒だがな。
エルフに変してるのになんで顔が歩のままなんだ?しかも髪の途中からが青なのも目が青なのも変わらないし…あえてか?
まぁ今さら見た目が変わる必要はねぇか。
そういや、第三王が報酬は後日っていってたが、どうやってもらうんだ?
城に行けばいいのか?
「アリア。昨日のクエストの報酬っていつどこでもらえばいいんだ?」
クエストなんてけたことないからわからねぇ。
「…冒険者ギルドからの依頼でしたら、冒険者ギルドの付にてけ取れるはずです。ですが、リキ様は直接ローウィンス様から依頼をけているので、冒険者ギルドではけ取れないと思います。だからといって、城には私たちではれないと思うので、こちらから呼び出すことも出來ません。」
「え?それでどうやって報酬をけ取るんだ?」
「…わかりません。ごめんなさい。」
「いや、アリアが謝ることじゃねぇ。」
もしかして報酬はなしなのか?
詐欺じゃねぇか!でも相手は王族だから文句もいいに行けねぇな。
まぁそれでもケニメイトから金を回収すれば結構な所持金になるから急がないし、次に會ったときに無理やり払わせればいいか。
「イーラは全員が取り出した攜行食を回収しとけ。とりあえずこれは俺の分だ。それと、イーラにはこれからも役に立ってもらうつもりだから、それ以上落ち込むな。」
アイテムボックスから取り出した攜行食をイーラに渡した。
「リキ様〜大好き〜。」
「はいはい。俺はまだ眠いから、明日に備えてもう一度寢る。アリアたちは好きにしてかまわない。おやすみ。」
抱きついてるイーラを剝がして、ベッドに潛った。
「「「「おやすみなさい。」」」」
シャツは明日著替えればいいや。
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