《顔の僕は異世界でがんばる》狡猾な冒険者 1
『ペンは剣より強し』
そんな言葉がある。
大人たちが子供にドヤ顔で教えることわざベスト十にるだろうと、個人的には思っている。
勉強させる口実だ。
よく言ったものだとは思う。
しかし、この際はっきり言おう。
バカかと。
僕はその言葉が嫌いだ。
あんなちっちゃいペンでどうやって剣と戦えと?
あれか? 全長二メートルくらいのペンだってか?
それはペンじゃない、槍だ。
卑怯である。
いやいや、別に本當の意味を知らないわけじゃない。
『言論の方が暴力より強い』だとか『勉強できる方が喧嘩強いよりいい』みたいなじで使われてるってことぐらいわかる。
けどこれ、権力が無いとなんの意味もないらしい。
元々『俺っちのバックにはちょー偉い人いんだぜ? ここにサインするだけでお前ら全員即お縄よ!!』的な意味だったようだ。
昔調べた。
本當にペンの方が強いと思って喧嘩して、ボッコボコにされた後にこれを知った僕の気持ちがわかるか、瀬名川先生?(小學校のころの擔任)
Advertisement
要はチクリ最強ということだ。
でも多くの人がご存じのとおり、チクリが無敵でいられるのは小學校低學年までだ。
それ以降は、いじめがエスカレートする起剤にしかならない。
加えて『ちんチクリ野郎』だとか『チクリ魔』とかいうわけのわからない稱號を得ることになる。
なんだよちんチクリって。
僕の名前にちんだとかチクリだとかなんてってないぞ?
だからあれは僕のことじゃなかったんだ。
僕は決して『ちんちくりんのチクリ野郎』じゃない。
まぁとにかく、そういうわけでその言葉、改正した方がいいと思います文部科學省様。
改正案『チクリは剣より強し。ただしガキに限る』
さてと、本題。
要するに僕が言いたいのは、なんだかんだ言って力こそすべてということだ。
先週のリュカ姉の事件と言い、その前のいろんな事件と言い、そうだ。
そして僕には、力が足りない。
もっと強ければ、なんて思ったことばかりだ。こんなことじゃ、ドラゴンに対抗することはできないだろうし、戦ったとしてまた大事なものを危険にさらしてしまう。
Advertisement
それになにより。
僕が死んじゃう。
ということで、しばらくは冒険者ランク云々よりも、まず鍛えることにした。
先の事件のおかげで名前は結構売れたし、これならドラゴン討伐の時置き去りにされることも無いだろう。
今僕は、町の外の街道にいる。
「出でよ<ビッグ・パンサー>」
召喚したのは巨大な虎、サーベルパンサーを大きくしたじの猛獣。ぶっとい牙がチャームポイント。
まじイカシてるぜ兄貴、食そのものの顔してます。
「今日も頼むよ」
その背に飛び乗り一聲かけると、パンサーは街道沿いを勢いよく駆け出した。
街道のど真ん中を行かないのは、事故を防ぐためだ。
禮儀正しい猛獣です。
デーモン討伐で得たエネルギーは膨大だった。
それを貯めておいてもよかったのだが、せっかくなので移手段をと思い、選んだのがこいつだ。
速度はダッシュ・リザードに劣るものの、それを補って余りある戦闘能力がウリ。
まぁ強いのは當たり前か。
なんてったって食。
獲を狩るのは専門分野である。
視覚、嗅覚、そして見つけた獲を逃さない瞬発力……そのすべてが弱者を狩るのに使われている。
召喚した分のエネルギー程度容易に稼いでくれた。
さすがは食獣。
野を超えると、山が見えてくる。
リュカ姉がスルーした山だ。
この山の中腹あたりにある窟が今アツい。鉱山よりやや強い魔が出る上、大量発生のため出り止となっている。
討伐はBランク以上の依頼となるが、とくに害があるわけでもないため放置されてきた。
リュカ姉曰く、場。
リュカ姉にはちょくちょく剣を教えてもらっている。
彼によると、僕には力とかはそれなりにあるのに、戦闘技とか運能力が低すぎるとのこと。
當たり前だ。
そもそも戦闘貞を捨てたのが二月前のことなんだから。
元々期待してないし、そっちは最低限でいいというスタンスは変えない。
窟にり、ピクシーに明かりをつけてもらう。
「……相変わらず、薄気味悪いなぁ……」
魔の聲が奧から聞こえてくる以外はほぼ無音で、空気はっている。
昔の僕だったら絶対ろうなんて思わなかっただろう。
「パンサー、好きな様に狩って來てくれ。魔石はこの袋の中によろしく」
袋を渡すと、それを咥え、パンサーは勢いよく駆け出した。
「出でよ、<アプサラス><ウィルム>」
唱えると、前方に巨大な魔方陣が浮かび上がり、そこから巨大な、芋蟲のような蛇のような化けが姿を現した。
直徑一メートルはくだらない、長さは5メートル? いや、もっとあるかも。
ワームみたい。
でも、ワームじゃない。
決定的な違いは顔の部分だ。鋭い目に巨大な牙を持ったそれは、ドラゴンだと言われても頷ける。大蛇にしてはが太く、ワームにしてはカッコいい。
ウィルムにも同様の指示を出すと、ずるずるとを引きずりつつ奧へと消えた。
使い魔、まぁあれはむしろ召喚獣と言った方がいいか。それらを召喚する際に使うコストは、単純な強さだけではないと最近になってわかってきた。
単純な強さなら、ウィルムやパンサーより圧倒的にゴーレムの方が上だ。
にも関わらずウィルムの方がコストが上なのは、使い勝手のほかに、あれの特殊能力にある。
まぁそれについてはおいおい説明するとして。
ゴーレムは使い勝手が悪い。
とてつもなく遅いから、狩りにはまず使えない。
加えてあの大きさだ。
スペースがなければ召喚することすらできない。
パンサーは狩り、ゴーレムは強さ、そしてウィルムは特殊能力。
これからは役割分擔なども考える必要がある。
「さてと、行くか、二人とも」
妖二人に呼びかけて、僕は奧へと向かった。
しばらく戦闘を繰り返し、疲れたので手ごろな小部屋へった。
戦闘は、基本的に僕とアプサラスが遠距離から魔法を放って戦う。
索敵役はピクシーだ。
さすがにこのレベル相手だと、ピクシーには荷が重すぎる。
「しっかし……疲れた」
かなり威力と度を増した火魔法レベル三とアプサラスのコンボでも、ここの魔は瞬殺とはいかない。
まぁBランクがパーティーを組んでくるような場所だ。
當然ではある。
むしろ戦える方がおかしいのだ。文句は言うまい。
「謝すべきなんだろうな」
魔法の才能に。
どうやら僕にはそれがあるらしい。
イメージはなかなか難しいが、それでも一度使えれば固まってくる。最初以外は、あまりハンデにはなり得ない。
となると、あとは魔力量の問題だ。
これに関しては、圧倒的に多い。
あのカリファに比べてだ。
カリファは子供のころから魔法を使っていた、言わば魔法の天才だ。
魔力量は力と同じで、鍛えたり魔を倒すことで上がっていくが、昔からずっと使い続けてきたカリファよりも多いというのは、そういうことなんだろう。
まぁ、ラッキーということで。
うれしい限りだ。
壁にもたれ腰を下ろし、一息ついた。
こういう小部屋にはたまに魔がいるが、ゲームのようにトラップがあるなんてことは無い。
魔石臓型時計(お値段四千G)を確認し、いったん二匹の魔を呼び戻すことにした。
「出でよ<シャドウ>」
魔方陣から出てきたのは、黒い靄だ。とても生きには見えない。
だが、立派な生だ。
実もある。ろうと思えば普通にれる。
ちなみにけっこうもふもふしていて気持ちがいい。
「二匹を連れてきてくれ」
指示すると、ひゅんっと、まさに風のように去りぬ。
あれには戦闘能力が無い。
皆無だ。
けれど、それを補う速さと擬態能力を持っている。さらに索敵能力まであるのだ。
何を知しているのかはわからないが、半徑五百メートル程度なら、間にどんな障害があろうと標的を見つけ出す。
まぁ、よく知ったものに限るという欠點はあるが、それでもとても有な斥候である。
のんびりお晝を食べていると、二匹が帰ってきた。
パンサーからけ取った袋には、大量の魔石が詰まっている。
さすがだ。
魔石を僕の袋(六十キロまで収納可能。お値段六萬八千G)に移し、お禮にの塊を放ると、上手に口でキャッチして、再び窟の奧へとのっしのっし向かった。
そして、ウィルムだ。
いつものようにのあたりをこちらに向けている。
「……うぅ……」
僕は顔を背けた。
考えるな。あそこから出てくるのは魔石の結晶――寶石なんだ。
そう。
ウィルムの特殊能力とは、捕食した魔の魔石をで融解し、練し、自の魔力や他の魔石と融合して、一つの結晶にするのだ。
どこから出てくるかは、察しの通り。
カラン、という音を聞き、振り返った。
背後には心なしかすっきりしたじの芋蛇と、一抱えほどもある漆黒の寶玉がある。
「……アプサラス、頼む」
とりあえずアプサラスに洗えと命じると、眉一つかさずに水の球でそれを包み込み、シェイクし始めた。
さすがアプさん、仕事人やで。
散々磨かれた寶石をけ取ると、あまりの重さに取り落としそうになった。まるで巨大なボーリングの玉だ。
初めてこれをギルドに持って行ったときは、めちゃ驚かれてしまった。
どうやらこうなると魔石とは見なせないらしく、ギルドで引き取ってはもらえない。
しかし、紹介された寶石商に持っていったら、なんと一つ五萬Gで売れてしまった。しかも、手にるだけ持ってきてくれと頼みこまれ、専屬契約までしてしまう始末。
あれはもうちょっと考えとくべきだったかな。
なんか調子に乗ってホイホイ契約しちゃったけど、きっと高く売ろうと思えばもっと違うところへ持って行けたはずだ。
まぁでも、そんなことに時間使うよりは、魔倒してた方が有意義ではあるか。
餌をやると、ウィルムも再び窟へ向かった。
本當ならもっと凝させればいいのだが、限界はある。
限界を超えると勝手に消えてしまうため、どうしてもちょくちょくこの不快な作業をしなきゃいけないところが難點だ。
まぁそれで金が手にると思えば、安いか。
さてと、エネルギーはどれくらい貯まったかな?
確認すると、大目標量を超えていることが分かった。
「さて、それじゃあ始めるとするかな」
寂しいほかに、うれしくても獨り言が増えるのは、もはや不変の心理です。(誤字)
もう一つの目的を果たすことにした。
【コミカライズ&書籍化(2巻7月発売)】【WEB版】婚約破棄され家を追われた少女の手を取り、天才魔術師は優雅に跪く(コミカライズ版:義妹に婚約者を奪われた落ちこぼれ令嬢は、天才魔術師に溺愛される)
***マンガがうがうコミカライズ原作大賞で銀賞&特別賞を受賞し、コミカライズと書籍化が決定しました! オザイ先生によるコミカライズが、マンガがうがうアプリにて2022年1月20日より配信中、2022年5月10日よりコミック第1巻発売中です。また、雙葉社Mノベルスf様から、1巻目書籍が2022年1月14日より、2巻目書籍が2022年7月8日より発売中です。いずれもイラストはみつなり都先生です!詳細は活動報告にて*** イリスは、生まれた時から落ちこぼれだった。魔術士の家系に生まれれば通常備わるはずの魔法の屬性が、生まれ落ちた時に認められなかったのだ。 王國の5魔術師団のうち1つを束ねていた魔術師団長の長女にもかかわらず、魔法の使えないイリスは、後妻に入った義母から冷たい仕打ちを受けており、その仕打ちは次第にエスカレートして、まるで侍女同然に扱われていた。 そんなイリスに、騎士のケンドールとの婚約話が持ち上がる。騎士団でもぱっとしない一兵に過ぎなかったケンドールからの婚約の申し出に、これ幸いと押し付けるようにイリスを婚約させた義母だったけれど、ケンドールはその後目覚ましい活躍を見せ、異例の速さで副騎士団長まで昇進した。義母の溺愛する、美しい妹のヘレナは、そんなケンドールをイリスから奪おうと彼に近付く。ケンドールは、イリスに向かって冷たく婚約破棄を言い放ち、ヘレナとの婚約を告げるのだった。 家を追われたイリスは、家で身に付けた侍女としてのスキルを活かして、侍女として、とある高名な魔術士の家で働き始める。「魔術士の落ちこぼれの娘として生きるより、普通の侍女として穏やかに生きる方が幸せだわ」そう思って侍女としての生活を満喫し出したイリスだったけれど、その家の主人である超絶美形の天才魔術士に、どうやら気に入られてしまったようで……。 王道のハッピーエンドのラブストーリーです。本編完結済です。後日談を追加しております。 また、恐縮ですが、感想受付を一旦停止させていただいています。 ***2021年6月30日と7月1日の日間総合ランキング/日間異世界戀愛ジャンルランキングで1位に、7月6日の週間総合ランキングで1位に、7月22日–28日の月間異世界戀愛ランキングで3位、7月29日に2位になりました。読んでくださっている皆様、本當にありがとうございます!***
8 78「気が觸れている」と王家から追い出された俺は、自説通りに超古代銀河帝國の植民船を発見し大陸最大國家を建國する。 ~今さら帰って來てくれと言っても、もう遅い! 超テクノロジーを駆使した俺の建國史~
ロンバルド王國の第三王子アスルは、自身の研究結果をもとに超古代文明の遺物が『死の大地』にあると主張する……。 しかし、父王たちはそれを「気が觸れている」と一蹴し、そんなに欲しいならばと手切れ金代わりにかの大地を領地として與え、彼を追放してしまう。 だが……アスルは諦めなかった! それから五年……執念で遺物を発見し、そのマスターとなったのである! かつて銀河系を支配していた文明のテクノロジーを駆使し、彼は『死の大地』を緑豊かな土地として蘇らせ、さらには隣國の被差別種族たる獣人たちも受け入れていく……。 後に大陸最大の版図を持つことになる國家が、ここに産聲を上げた!
8 64転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~
◇ノベルス4巻、コミック1巻 11月15日発売です(5/15)◇ 通り魔から幼馴染の妹をかばうために刺され死んでしまった主人公、椎名和也はカイン・フォン・シルフォードという貴族の三男として剣と魔法の世界に転生した。自重の知らない神々と王國上層部や女性たちに振り回されながら成長していくカイン。神々の多大過ぎる加護を受け、でたらめなステータスを隠しながらフラグを乗り越えて行く、少し腹黒で少しドジで抜けている少年の王道ファンタジー。 ◆第五回ネット小説大賞 第二弾期間中受賞をいただきました。 ◆サーガフォレスト様(一二三書房)より①②巻発売中(イラストは藻先生になります) ◆マッグガーデン様(マグコミ)にてコミカライズが3月25日よりスタート(漫畫擔當はnini先生になります) https://comic.mag-garden.co.jp/tenseikizoku/
8 100地獄屋物語
「地獄屋と申します」 地獄屋 それは地獄を売りつける仕事 別名、復讐とでも言おうか 地味すぎる、あだ名「ブス子の」女子高生 でも実際は超絶謎の美少女!? 彼女は一體何者なのか? 地獄屋とどのような関係があるのか? 「選べ このまま過ぎる時間で終わらせるか それとも…地獄を売りつけるか」 赤い瞳の正體不明の人物 地獄屋との関わりの中で変化する思い 高校生ならではの胸キュンストーリーも ちょっと不思議な青春を描いた物語が始まる ※ど素人作です。 たまに変な部分があるかもですが 溫かい目でご覧ください 更新周期は特に決まっていませんが 學生なので忙しかったりします なるべく早めに更新します
8 107G ワールド オンライン ~ユニークすぎるユニークスキル~
世界一の大企業『WTG』、その會社がある時発売した、VRMMORPGは世界のゲーム好きを歓喜させた。 そのゲームの名は、Genius Would Online 通稱『GWO』 このゲームの特徴は、まず全身で體感出來るVR世界でのプレイが挙げられる。 そして、肝心のゲームの內容だが、古代の文明人が放棄した古代惑星エンガイストが舞臺で、プレイヤーはその惑星へ異星人として渡ってきたと言う設定である。 そして、プレイヤーには一人一人『才能』と呼ばれるユニークスキルをを持っており、加えてアバターの身體能力の初期値は皆、一定となっている ゲームのコンセプトは『平等』で、才能による格差などがないすばらしい世界を実現したゲームを作り上げた。
8 196転生しているヒマはねぇ!
異世界で転生する予定になり、チキュウからマタイラという世界の転生界へと移動させられた『カワマタダイチ』。 ところが、控え室で待たされている間に、彼が転生するはずだった肉體に別の魂が入れられ、彼は転生先を失ってしまう。 この大問題を、誤魔化し、なおかつそうなった原因を探るべく、マタイラ転生界の最高責任者マーシャが彼に提示したのは、冥界に來た魂を転生させるこの転生界の転生役所で働くことだった。 ニホンでやる気を持てずに活力なく生きていたダイチは、好みの女性陣や気の合う友人に勵まされながら、少しずつ活力を取り戻し、それでも死んだままという矛盾に抗いながら、魂すり替え事件やマタイラの冥界と現界を取り巻く大問題と、わりと真面目に向き合っていく。
8 76