《顔の僕は異世界でがんばる》恨みを抱く一
〈カリファ視點です。銀髪の冒険者マルコの人〉
私たちは任務により、南の大農園地帯にいる。
大量発生した魔の駆除が任務容。けれど私たち冒険者部隊は、當初見込んでいた期間を超過しているにもかかわらず、いまだに帰れそうにないの。
任務対象の魔の數自は、ギルドの依頼容より若干勝っているくらいだったから、多犠牲が出たものの、いつも通り駆除できたわ。
けれど帰りに、超下品でセンスのない金ぴか鎧にを包んだ王國騎士団と鉢合ってしまったのが運の盡き。
あいつら、冒険者を使い勝手のいい傭兵か何かと勘違いしてるらしくて、自分たちが請け負っていた範囲のうち半分ほども押し付けていったの。それも、超偉そうに。あぁーーっ! 思い出しただけで腹立ってきた!!
王國騎士っていうのは、王都の鋭騎士団のことで、いわばエリート集団のこと。実力もあり、なにより偉い。
それで、しぶしぶリーダー(王都以北のどっかから派遣されてきた、Aランク冒険者のおっさん)はその指示をけちゃって、私たちは強行軍を強いられているの。
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目の前には、地平線の彼方まで埋め盡くす無數の魔がいた。こんなの、規格外もいいところだわ。
ここまで潰してきた大量発生の數、四。當初の予定一週間を大幅に超過し、すでに三週目に突している。
幸い、この地域は大きな都市が無い代わりに一定區間ごとに小さな町が存在するから、ずっと野宿ってわけじゃなかったけれど、それでもみんなの顔には疲労のが見えている。
隣の牛(うしちち)ーーリュカ以外は。
なんなのこいつ? いっつも思ってたけどやっぱ人じゃないんじゃない!?
「何よあれ!! 全っ然報告と違うじゃない!! あんの糞騎士ども~~っ!!」
「落ち著きなよ、カリファ~」
のんきな聲だこと。
私はリュナンの一件以來、リュ……牛(うしちち)が怒ったところを見たことない。あ、おチビ関連で一回あったかな? まぁいいか。
とにかく、そのことが超ムカついてならない。
「うっさい牛(うしちち)!! あんたはあれ見てなんとも思わないの!? 頭まででできてんじゃないでしょうね!?」
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「なわけないじゃん」
さらりと躱す。そんな用なやつじゃなかったはずなのに。
言い返してよ! 私のことなんて、もう眼中に無いっての!?
がっしと頭を押さえられた。この無骨な手、荒いのにどこかやさしい行為は、マルコ――。
「バカやってる場合じゃねえだろぉが。お前は後衛。命令聞いてなかったのか?」
「き、聞いてたわよ? でも、やっぱ敵の姿は見ておきたいというか~」
良くも悪くも、マルコは仕事に関しては糞マジメ。達させるためには全力でがんばる。討伐はもちろん、試験監督の時だって、必ず寢たふりとかして験生を試すし。
まぁ、おチビとの時の帰りは、あいつを認めてたのか、ホントの睡だったけど。
マルコの言葉は、正論過ぎて、私はしどろもどろになってしまう。
「聞いてたんなら、さっさとあっち下がってろ」
「うぅ、マルコ厳しい……」
ため息つかれて、私はちょっと落ち込んだ。牛(うしちち)のせいだってのに。
落ち込む私をしり目に、牛(うしちち)はのんきな聲を出す。
「マルコ~、あれどう見る?」
「……厄介だ。また中途半端な連中が何人かやられるだろうな」
背後で、昔と変わらず馴れ馴れしい聲と、すっかり変わってしまった苦々しい聲がやり取りを始める。
懐かしいはずの二人の作戦會議。でも、雰囲気のせいか、微塵もそんなじがしない。それがし、寂しい。
別に、リュ……牛(うしちち)とマルコに仲良くしてしいってんじゃない。むしろ仲違い萬歳なんだけど……昔はマルコ、リュカのことが好きだったみたいだし。
でも、こうして久々に一緒の戦場に立っても、あの頃の面影すらじられなくなってしまったのは、の深さを思い知らされるようで、なんか苦しい。
リュカの変化、そして何より、エーミールとの一件以來、私たちは変わってしまった。そして今回も、たぶん彼は、あの時と同様の理由で、貴族の犬になっている。
マルコの機嫌がよくないのも、たぶんそのせいだわ。
でも私は、彼を憎めない。たぶんマルコも、本心では恨んでないはず。
だからこそ、彼が妹のエミーリアをどれだけ大切に思っていたか、それがわかるからこそ、マルコはあぁいう態度をとるしかなくて、私は……。
「おいっカリファ!!」
「ひきゃうっ!」
いつの間にか、マルコが目の前にいた。厳しい顔つきだけれど、目は心配そうに揺れている。
「くだらねぇこと考えてんだったら、とっとと帰れ。ここは戦場だ。気ぃ抜いて生き殘れるほど、生易しくはねぇ」
「……ごめんなさい」
完全に見かされていた。それはたぶん、マルコも同じ気持ちだからだと思う。でも牛は、変わらないからこそ、すっかりを失ってしまったように、何も思ってないように思えて……。
――やめよう。
切り替えて、真剣にマルコの目を見つめ返した。
「ごめんなさい。マルコも気を付けて」
「あぁ」
一言やり取りして、私たちはすれ違った。
戦いは、熾烈を極めた。
私はうしろから魔法を放っていればいいだけだけど、前衛は本當に苦しそうで、後ろめたさと言うか、申し訳ない気持ちになってしまう。
間髪れずに次々と飛來する魔法。そして無數の魔。あの人たちは、怖くないの? いや、怖いに決まってる。だって、こんな安全な場所にいる私だって、怖いんだから。
それでも戦い続けられる彼らは、やっぱ、すごい。
マルコは、リュカは無事?
けれどいつもの不安が、今回はいやに大きい。それは、敵の規模が桁違いだから。
あの二人は、強い。戦闘能力だけ見れば、魔大陸と目と鼻の先にある、通稱<北部前線>の冒険者たちと遜ないくらいには。ちょっとやそっとのことじゃやられないはず。
でも、今はエーミールがいない。彼は戦いながら強力な治癒魔法を使えるオールラウンダーだったし、何より異常なくらい強かった。あの二人と比べても、さらに。
正直、彼がいるのといないのとでは、安定が全然違う。それが悔しくて、マルコのきはいつもより大味になっている気がする。
そう考えてしまうと、どうしても不安で、それを振り払うよう私は魔法を撃ち続けた。
しでもサポートしようと、魔法を撃ち続ける。前線の活躍もあり、かなり敵の數は減らせてきている。
でも、今回のはやっぱり、規模が違いすぎた。疲労のせいもある。犠牲が増え始めた頃、いったん退卻命令が出て、私たちは予定通りトラップを敷いて、一目散に逃げ出した。
そして私たちは近くの町まで退卻し、大きな酒場で休憩をとっている。近くでは、マルコを含めたAランククラス六名が、會議を始めていた。
冒険者たちは基本、自己中。それは職業柄、當然よね。
でも、今回のように敵が異常に強ければ、ある程度連攜をとって戦うこともある。そもそも、冒険者はその場限りのパーティーを組むが多いのだから、協調は高いの。
容は、いつ、どのように攻めるか。
敵の數は減らせてきているのだから、一晩休憩して、明日にでももう一度戦おうとの意見が優勢みたい。まぁ、次戦えば勝てるでしょうし、あまり時間を置くと魔がここまで來てしまうから、當然の判斷よね。會議って、意味あるのかしら?
勝算は立っている。
けれど、みんなの表は暗い。
犠牲者は、類を見ないほどに多かった。
Bランク冒険者ともなれば、依頼で命を落とすことなどほとんどない。そんな人たちが、二けた単位で死んだの。これは、今後冒険者ギルド全に関わる、大參事と言えるわ。
「くそ……王國騎士団の奴ら、俺たちに押しつけやがったんだ……」
誰かがボソッとつぶやいた。
それは、全員が思ってることでしょうね。あいつらはきっと、私たちに規模の大きい區域を押し付けたの。私たち冒険者を、捨て駒か何かだとでも思ってるのかしら!?
あぁ、腹立ってきた。
――と、噂をすれば何とやら。
バァンっと扉が開き、金ぴかおっさんどもが突してきた。
ぞろぞろとってくる鎧たちは、私たちを睥睨して、鼻で笑う。なに、あの人を見下したような目は!? 私たちに謝の一つもないの!?
リーダーが立ち上がり、応対する。あちらからは無ひげが立派な、厳めしい顔つきをした巨漢が前に出てきた。
「何かご用でしょうか?」
「狀況を聞いておこうと思ってな。タウルンの大量発生はどうなっている?」
タウルン……今回の、めちゃくちゃに規模が出かかったやつだわ。そこをピンポイントで聞いてくるあたり、やっぱり私たちに押し付けてたってことね。
心煮えくり返っているでしょうに、リーダーはそんな雰囲気をおくびにも出さず、淡々と説明していく。
説明が終わると、ひげ巨漢が鼻で笑った。
取り巻きの一人が、いかにも小ばかにしたように口を開く。
「大量発生一つまともに対処できんのか。これだから寄せ集めは使えん」
そんな言葉にも、リーダーはただ黙っている。
ここで爭えば、私たちの不利は目に見えていた。実力ではどうかわからないけれど、疲弊しきった私たちが、數も裝備も勝るあいつらに勝てるとは思えない。最終的に抑え込まれた挙句、手柄を全部かっさらわれてしまうでしょうね。
見ると、マルコの持つジョッキがカタカタ揺れている。
マルコだって我慢してるんだ、私もがんばらなくちゃ。牛は……相変わらずね。ていうか、あくびなんてしてんじゃないわよ!
ほら見なさい、取り巻きが目をつけたみたいよ?
「貴様!! 冒険者のくせして無禮だぞ!!」
あぁ、ひげ巨漢まで見てる……うわ、厭らしい目。をじろじろ見て……気持ち悪い。
「よさんか。すまんな、お嬢さん。こちらは規律が厳しいんだ」
「いえいえ、全然オッケーですよ」
座ったまま手をひらひらさせる。
うわぁ、神をも恐れぬ蠻行。でも牛のことだから、ひげが手出しできないの計算しつくしてるんだろうな。そういう強かというか、格が悪いところは変わらない。
頬をヒクヒクと引きつらせる巨漢を見て、ちょっといい気分になった。
騎士は名譽第一。常識を知らない、若い冒険者相手にムキになるなど、プライドが許さないのでしょうね。そういうの無視してくるやつもいるけど、あれはそうじゃないみたいだし。
収まりの著かない部下を宥め、隊長は再びリーダーと向き合った。
「まぁいいだろう。タウルンの方は我らが何とかしようじゃないか。その代り君たちは、北東のヤヌルンに向かいたまえ」
愕然とした。
あいつら、手柄だけ盜ろうと……? しかもヤヌルンて、あんたたちの割り當てじゃない!! ……まさか、ヤヌルンが思ったより大規模だったから、それも押し付けようと……?
「お待ちください!! ここまでやったんです、あとは我々でも……」
「黙れ!! 失敗した分際で吠えるな!!」
激高するリーダーを、取り巻きが一喝する。
あぁ、マルコが立ち上がっちゃった。
「おいおっさん。あんたらこんなとこで油売ってる暇ねえんじゃねえの? ヤヌルンて言えば、あんたらの領分だろ。こっちは俺たちのだ。もうなんら脅威もねえ。殘った雑魚共は俺たち寄せ集めに任せて、早いとこ――」
「黙らんか小僧!!」
さらに別の奴が吠える。
「――困ってるやつのために、駆けつけるべきなんじゃねえの?」
しかしマルコは言い切った。
取り巻きが、青筋を立てて震える。
「小僧……いいか、バカな貴様に教えてやる!! 確実に守るためには、貴様ら雑魚が食い止め、我々鋭部隊が仕留めるという――」
「よすのだ、ブルーノ!」
巨漢が止めるものの、概要はほとんど伝わってしまった。
何それ!? やっぱり私たちは捨て駒ってことじゃない!! 戦略かも知んないけど、絶対にお斷りよそんなの!!
他の冒険者たちも思うことは一緒のようで、口々に騒ぎ立てる。
「黙らんか!!」
けれど巨漢の一喝は、それをかき消した。どうやら、格はどうあれ、実力はちゃんとあるみたいね。
「まるで猿だな。キィキィ騒ぎおって」
また取り巻きが喚く。猿はどっちよ。
それをたしなめて、巨漢は踵を返す。
「とにかく、すぐにでもヤヌルンに向かうのだ。これは王國からの任務命令だ。拒否権は無いぞ」
「お待ちください!!」
捨て臺詞のように、言いながら立ち去っていく。
それを止めようとしたリーダーの聲は、暴に閉められた扉によって、かき消されてしまった。
【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】
※書籍&コミカライズ決定しました!書籍第1巻は8/10発売、コミカライズ第1巻は10/15発売です! ※ニコニコ靜畫でお気に入り登録數が16000を突破しました(10/10時點)! ※キミラノ注目新文蕓ランキングで週間5位(8/17時點)、月間15位(8/19時點)に入りました! ある日、月坂秋人が帰宅すると、そこには三人の死體が転がっていた。秋人には全く身に覚えがなかったが、検察官の悪質な取り調べにより三人を殺した犯人にされてしまい、死刑となった。 その後、秋人は“支配人”を名乗る女の子の力によって“仮転生”という形で蘇り、転生杯と呼ばれる100人によるバトルロイヤルの參加者の1人に選ばれる。その転生杯で最後まで勝ち殘った者は、完全な形で転生できる“転生権”を獲得できるという。 そして參加者にはそれぞれスキルが與えられる。秋人に與えられたスキルは【略奪】。それは“相手のスキルを奪う”という強力なスキルであった。 秋人は転生権を獲得するため、そして検察官と真犯人に復讐するため、転生杯への參加を決意した。
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