回廊迷宮の５層にてグレートオークの群れを発見したシロー、スノー、アズハ、ジーナの４人は靜かに戦闘準備にはいる。

スノーはシローとクルルが作った裝備をそのに纏い水竜の弓を構えるとシローの指示を待つ。

ジーナは後衛であるシローとスノーの遠距離攻撃によってこちらに気付いたグレートオークの群れが突撃してくるのを想定し大盾と槍を構える。

戦闘時には遊撃手として近接ダメージ源となるアズハは両手に短剣を構え自分たちに向かって豬突猛進してくるであろうグレートオークを迎え撃つ準備を整える。

「さて、殺やろうか。俺のファイアランスに合わせてスノーは矢を放ってくれ。ジーナはオークどもが程にったらヘイトを稼いでくれ。アズハは捕まらないようにだけ気を付けるように」

「「「了解しました！」」」

３人の返事を聞きシローがファイアランスを出する。

「ファイアランス！」

通常のファイアランスは赤とオレンジが混ざったようななのだが、シローのファイアランスは青白い炎の槍でありその出スピードは音速に迫ろうかというほどである。

更にその程は明らかに異常で５００ｍをゆうに超えるのだが、今回の獲であるグレートオークまでは１００ｍもないので外す事は考えていない。

シローのファイアランス出に呼応するようにスノーも引き絞っていた弦から指を離し矢をる。

スノーがった矢はクルルお手製の矢であり著弾時に発するのが特徴で通常の矢に比べ數倍の殺傷能力があるものだ。

この発する矢をスノーは一度に３本っており、何も知らずボケーっと立っているグレートオークに今まさに著弾しようとしていた。

３本の矢を一度にるだけでも高等技なのだが、それを１００ｍほど離れたグレートオーク３に狙いたがわず命中させるのは更に難しい。

だが、スノーには３本の矢を命中させる自信があったし、シローたちもスノーが外すとは考えていないのだ。

最初の著弾はシローのファイアランスであり、寸分狂わずグレートオークのに突き刺さったかと思えば、グレートオークの分厚い板を貫通しその後方にいた數のグレートオークを巻き添えにしていた。

そして最後には數ｍに渡り青白い火炎を放出し４のグレートオークを焼き盡くした。

次の著弾はスノーがった矢で、シローのファイアランスのような貫通力はないが、著弾時に発を起こすのでその発で數のグレートオークが被害をけ吹き飛ばされる。

グレートオークといえば長３ｍほどのでその重は２００Ｋｇを超える巨なのだが、そのグレートオークを木の葉のように吹き飛ばした発は一切の手加減がない。

その発が続けて３ヶ所から起こるのだからグレートオークたちはたまったものではないだろう。

運よく無傷や軽傷だったグレートオークは次弾を発しようとしているシローとスノー、それにその２人を守るように盾を構えるジーナに敵意の籠った視線を向ける。

「ブモォォォォォォォォォォッ！」

１のグレートオークがシローたちを指さし雄びをあげる。

その雄びに呼応するかのように生き殘ったグレートオークたちはシローたちに向かって走り出す。

その數未だ３０を數え、數の不利は絶的な狀況ながらシローをはじめとしたパーティーメンバーは脅えることなく、逆に獲を狩る猛禽類のようにグレートオークの群れを見つめるのだった。

シローはファイアランスの次を行い迫りくるグレートオーク數を消し去り、スノーも同様に次弾をると３ヶ所で発が起こり１０前後のグレートオークを屠る。

鬼のようなシローとスノーの攻撃を生き殘りやっとのことでジーナの前まで辿りついたグレートオークは既に１０を切り、敵のヘイトを上げる盾系アーツの『ヘイトコレクト』を発させると、程に存在したグレートオークたちはジーナに殺到する。

ジーナの『ヘイトコレクト』の運用はシローを唸らせるほどで、１０ほどいたグレートオークはれなくジーナに向かっている。

その隙を見逃さないのが遊撃手たるアズハであり、アズハのスピードを生かした必殺の連撃をけたグレートオークは分厚い皮を切り裂かれ飛沫をあげて意識を刈り取られる。

最初は４０以上もいたグレートオークもジーナに接敵する時には１０にも満たず、更に接敵後１分もしないにたった１にまで撃ち減らされていた。

「これで最後だっ！」

シローは拳をグレートオークの腹部に突き出した。

その瞬間、グレートオークのは木っ端微塵に散するのだった。

「シロー殿、最後は派手に決めましたな」

「ああ、やっと俺の戦闘スタイルが固まってきたからね。この【闘神武技】を自分ものにする為にもっと実戦を積まないとね」

シローは自立してより剣（刀）を主武として使ってきたが、自分の戦闘スタイルとして違和をじていた。

そして自分の戦闘スタイルを確立するために【剣士】だけではなく、【槍士】や【斧士】、その他にも多くのスキルを試したが、シックリくるスキルはなかった。

魔法については違和がなく使えた事から自分と魔法は相が良いのだろう、しかしシローは後衛職ではなく前衛職の方が自分の気質に合っているとも考えた。

そして前世の短い人生を考えた時、ナイフを持って山にったはよいが途中でナイフが折れてしまいそれからは自分のを使ってサバイバルを生き殘った事を思い出した。

何日も考した結果が魔法と格闘を合わせたスキルだったのだ。

だが、既存のスキルには魔法と格闘を組み合わせたスキルはなく【ステータスマイスター】ではむスキルを手できなかったので最後の手段である【チート】君を発させたのだった。

そしてできたのが【闘神武技とうしんぶぎ】である。

この【闘神武技】はユニークスキルに屬し、その能力は極めて強力なものである。

＠闘神武技

魔力、気力、神力を纏い立ち塞がる敵を撃ち滅ぼす！

武など不要！使うは自らののみ！

努力の対価としてのみレベルが上がるのだ！

ＳＴＲ増（極）、ＶＩＴ増（大）、ＡＧＩ増（大）、ＤＥＸ増（大）、ＩＮＴ増（大）、ＭＮＤ増（中）。

このスキルを得てシローは歓喜した。

何故ならシローが神から與えられた【チート】という強力なスキルの副作用として努力してもスキルを取得することもレベルを上げることもできなかったのだが、この説明にある『努力の対価としてのみレベルが上がるのだ！』を読んで歓喜しないわけがない。

（あ～、これで俺も普通の冒険者のようにスキルのレベル上げができるんだな・・・）

虛ろな目で遠くを見つめるシローが居た。

あの日以來、スノーは非常に不愉快な思いをする事が増えた。

それは事ある毎にスノーを待ち伏せする金髪のストーカーによるものである。

スノーが店で買いをしている時、冒険者ギルドで依頼を確認している時、街中でショッピングをしている時、街から出て家に帰ろうとしている時、どこから湧いて出るのかと思うほど神出鬼沒のストーカーである。

その名をアキム・ベットーネ。

だが、アキムはスノーの近くに近づく事はできてもスノーに指一本れる事は許されなかった。

そう、理的にできなかったのだ。

その理由はアズハとジーナである。

アズハがアキムの気配を察知すると、特攻してくるアキムをジーナが壁となり防ぐのだ。

シローが常にスノーと迷宮に潛っていればシローが壁となるのだが、相変わらずマジックアイテムの作に沒頭する事が多くシローの代わりにジーナが盾となっているのだ。

それでもアキムは凝りもせずスノーのストーカーを諦めない。

そんな狀況が既に２ヶ月も続いており、流石のスノーもウンザリしていた。

「もう何なんですか、貴方はっ！」

「私はアキム・ベットーネ！　『紅蓮の魔師』であり魔導師の稱號を冠する貴公子である！」

「貴公子の使い方を間違えていませんか？　この魔導王國セトマには貴族は存在しませんから！」

スノーは溜息混じりに吐き捨てるように呟く。

最早何を言っても無駄だと思うほどのアキムの奇行に怒りを通り越して呆れるばかりである。

「何故だっ？！　何故スノーは私のピュアな心が分からないのだ？！」

「だからピュア純粋な心ってなんですか？　貴方の心が純粋かどうかより私に付き纏うのを止めてくださいっ！　それと私の名を呼ばないでください！」

絶対零度の視線でアキムを否定するスノー。

アキムはジーナの守りを掻い潛り何とかスノーに近づこうと試み盡く阻まれる。

「くっ、こうなったらっ！」

いきなり魔を発しようとして詠唱にるアキムだったが、その隙を見逃さずジーナのシールドバッシュが炸裂しアキムの意識を刈り取るのだった。

「まったくどうしたらストーカーを止めて貰えるのでしょうか？」

「それは無理じゃないですか？」

「うむ、アズハ殿のいう通りだ。あの者には他者の聲など聞こえていないのであろう」

拠點にしている最早簡易家とは言えない家に帰りついた３人は今日のアキムの奇行を思い起こし辟易としていた。

「ストーカーを消滅させるか！」

その場にクルルを連れて現れたシローがアキムを理的に消し去ろうと提案する。

「それではシロー様が犯罪者になってしまいます」

「それはいけません！」

「うむ、シロー殿が犯罪者になっては私も困るな」

「ご主人様を煩わすなんてギルティなのです！」

スノー、アズハ、ジーナはシローが犯罪者になるのを避けるべきと否定的であるが、クルルは過激に反応する。

「俺なら全然問題ないけどな？　てか、そのストーカーが魔を使ってこようとした時に消し去れば正當防衛が立するぞ？」

もっと過激な考え方をするシローであった。

「あ～、あと迷宮都市ヘキサにも３ヶ月ほどいたし別の街に行くのもいいかもな？　マジックアイテムの作もここじゃないとできないわけじゃないし」

「そうですね、シロー様の目的も々な土地を旅する事でしたし別の街へ移るのもよいですね」

「ご主人様が良いならアズハに不満はありません！」

「ふむ、何か逃げるようで気にらんが、逃げるが勝ちという諺もあるし良いかもな？」

「ギルティなのです！」

何やら不穏な発言もあったが、こうして旅立つ事が多數決で決定したのである。