４０層を我が家の庭のように進むシローたち。

先ほどテイムした七匹のスライムはシローの【モンスターテイム】スキルによってテイムされた魔用の異次元居住空間に送還されている。

なぜ送還したかというと、スライムの歩く速度が非常に遅く、それにイラついたシローが送還してしまったのだ。

そんなシローたちの前に初めて見る魔が現れた。

その魔は火屬金屬系魔のフレイムアイアンだ。

その姿はスライムを平たくしたような姿で表が波うっていることからその僅かな波うちで移をしていることが分かる。

表は焼けた鉄を思い浮かべる赤であり、およそ３０メートルほど離れているのにシローたちの周囲の溫度が急激に上がっていることからもれれば火傷では済まないことが分かる。

弱點は水や氷屬の攻撃。ここにスノーが居たならば簡単に倒すことが可能だったとシローの表を曇らせる。

しかし同時にスノーを助けるために自分はここに居るのだと気を張るのだった。

「私に任せてもらえるかな？」

「しかしジーナの苦手な部類の相手だぞ？」

シローの言う通り、フレイムアイアンはその見た目から理攻撃に対する耐をもっており屬攻撃のないジーナにとっては非常に相が悪い魔に見えた。

しかし相が悪いからといって避けていては自分は長しないとジーナは敢えて前に出るのだった。

「分かった、ジーナに任せる。しかし危なくなったら介するからな」

「ジーナさん、ガンバです！」

「すまない」

ジーナはその長を隠すほどの大きな盾を左手に、そして普通の者であれば両手で扱うような長い剣を右手で構える。

アダマンタイト製の大盾は見た目以上に重く、同じくアダマンタイト製の長剣も重い。

熊の獣人であるジーナは大柄で長は２メートル近い１９８センチメートルだが、大柄な彼であってもその大きな盾と長い剣を扱えるのかと思われるほどだ。

フレイムアイアンはジーナを見據えるように見下ろす。

長のジーナを見下ろすほどに大きなを持つのがフレイムアイアンであり、あるか分からない目でジーナをしっかりと見據えていた。

平たいのに見下ろすほどの高さがあるのだから橫幅は十數メートルもあるだろう。

先にいたのはフレイムアイアンである。

そのの一部を切り離すことでサッカーボールほどの高溫の球をジーナに向かって出したのだ。

ジーナはその高溫の球を自慢の大盾での中心にけ止める。

ベチャリという音がし大盾の表面に纏わりついたのは超高溫の金屬のようなねっとりとした粘度のあるだ。

一般的な鋼やミスリル製の盾であればけ止めて攻撃を防いでも盾が融解するほどの高溫の攻撃である。

しかしジーナが使っているこのアダマンタイト製の大盾はクルルが鍛えてくれた自慢の大盾なのでフレイムアイアンの高溫の球をけ止めても溶けることはない。

次にいたのはジーナである。

その大柄のから想像もできないほどの速度でフレイムアイアンの目の前にまで迫ると、これもクルル製の自慢の長剣を振り下ろす。

フレイムアイアンの巨大なを綺麗に切り裂き地面にも大きな亀裂がるほどの攻撃だったがジーナは素早く後ろに飛びのくと、次の瞬間にはジーナが居た場所がフレイムアイアンの金屬のようなが埋め盡くしていた。

「手ごたえが思った以上になかったが、やはり生きていたか」

顔さえも隠す兜を被っているのでややくぐもった聲で最初の攻撃の想を呟くジーナ。

兜で隠れているので表は分からないが、悲観しているというよりウキウキとして嬉しそうな聲である。

「參る！」

地面を蹴りフレイムアイアンとの間合いを詰めると長剣を振る。

しかし今度は先ほどより威力はない攻撃だ。

威力よりも手數を意識した攻撃を放つことで線だった攻撃を面の攻撃に変える工夫である。

目にもとまらぬ攻撃を繰り返すジーナに反撃をしたくてもできないフレイムアイアン。

もしフレイムアイアンに口があれば悲鳴を上げていたと思えるほど凄まじい攻撃である。

數秒後、切り刻まれたフレイムアイアンの破片が地面を埋め盡くしていた。

ジーナも初めての攻撃だったので上手くいくか不安だったが、フレイムアイアンだった破片を見て「フー」と細く長く息をはく。

強いが決して倒せない敵ではないとジーナは長剣を鞘に納める。

「気を抜くなっ！」

ジーナが長剣を鞘に納めた瞬間に後方よりシローの怒號ともいえるほどの大聲が発せられた。

そしてその瞬間、バラバラとなって死んだと思われたフレイムアイアンの破片がジーナに向かって飛んできたのだ。

不意を突かれたことでジーナはに一発の破片をけた。

一発以外は大盾を構えて防いだが、ジーナのに當たったたった一つの破片が蠢き高溫による苦痛をジーナに與える。

「ぐっ！？」

アダマンタイト製の鎧を著ているとは言え膨大な熱量を持つ破片が直撃したのだ、我慢強いジーナであってもあまりの熱さに聲をあげる。

ジーナは歯噛みした。それは高溫に耐えるためではなく、自分の甘さが許せなかったからだ。

ジーナは父親が騎士だったことで自も騎士を目指した。

そして父が死んだ時に國を離れ一人で腕を磨きながら旅をして繁栄を極めている魔導王國セトマに辿り著いた。

ジーナはいつかは故郷に錦をと考えているが、今は修行のであるためシローと行をともにし自を鍛えているのだが、その帰るべき國は既に魔族によって滅ぼされていることをまだ知らない。

「ジーナさん、今助けます！」

「ダメだ！」

「え？」

「これは私の越えるべきものなのだ！……すまないが、今は見守ってほしい」

「……」

アズハは神狼人へと昇華したことでひと皮どころか幾つも皮が剝けたような活躍を見せている。

しかし騎士を目指し鍛えてきた自分はどうか？と考えるといつまでも皮が剝けない甘ちゃんなのだ。

それを実していたところだっただけにここは一人で乗り切らねばならないと考えたのも無理はない。

ジーナは耐える。

フレイムアイアンの破片は大盾を覆いつくし、更にジーナのを覆いつくそうと圧力をかける。

を覆いつくそうとするフレイムアイアンの高溫に耐える。

耐えることだけは誰よりも優れていると自負がある。

しかし自分には耐えることしかできないことも分かっていた。

アズハはスピードにおいて圧倒的な存在であり、そのスピードによって自分の戦い方を確立している。

ここにはいないがスノーも魔法においては誰もが舌を巻くほどであり、彼は攻撃、支援、回復とどれをとっても非の打ち所がない。

そして極めつけはシローだ。シローは前衛や後衛の垣を超えたオールラウンダーである。

しかもどれをとっても一流であり、絶対的な存在である。

クルルにしたって皆の戦闘を縁の下から支える生産力を誇るのだ。

自分だけが皆の足手まといになっている。

フレイムアイアンの圧力によって地面に片膝を付いたジーナは、ここで両膝を付けばもう押し返すことはできないとじた。

自分が本當に危機に陥ればシローが助けてくれるだろう、アズハも助けに來てくれるだろう、しかし、しかしその時は騎士としての自分が死ぬ瞬間でもあるとじたのである。

「ダメだ！私は……私は決して諦めない！」

ジーナが心のびと言わんばかりの大聲をあげた瞬間、ジーナのそのは眩いを放つ。

ジーナの戦う意志が力となりの奔流となって発せられたのだ。

人はこれを【闘気】と呼ぶ。

【闘気】は人の戦う意志が強く、諦めない心によって発現するスキルだ。

理でも魔法でもない力である。

「はぁぁぁぁぁぁぁあっ！」

【闘気】によってにへばり付いていたフレイムアイアンの破片を吹き飛ばし、更に大盾にへばり付いている破片も吹き飛ばす。

破片狀態でも生命力が盡きることのなかったフレイムアイアンだったが、【闘気】を浴び、そしてその強き意志によって細胞単位で消滅をする。

そしてジーナが気付いた時にはフレイムアイアンは完全に消滅していた。

「はぁ、はぁ、や……ったのか？」

「ジーナ、それフラグだから！」

「ふ、フラグ？旗？」

しかしフレイムアイアンは復活しなかった。

ジーナはフラグ質ではないようだ。

■ 個人報 ■

ジーナ・ベアレス

熊獣人　15歳　

騎士　グリゴール王家の統　冒険者

対シロー忠誠度：９５％

■ 能力 ■

ＨＰ：15,000/15,000

ＭＰ：2,350/2,350

ＳＴＲ：1,200

ＶＩＴ：2,500

ＡＧＩ：800

ＤＥＸ：600

ＩＮＴ：400

ＭＮＤ：600

ＬＵＫ：400

■　ユニークスキル　■

騎士の魂

■　ウルトラレアスキル　■

闘気Ｌｖ１（ＮＥＷ）

■ スーパーレアスキル ■

騎士Ｌｖ８（ＵＰ）

剛腕Ｌｖ６（ＵＰ）

鉄壁Ｌｖ６（ＵＰ）

■ ノーマルスキル ■

大剣Ｌｖ５（ＵＰ）

大斧Ｌｖ５（ＵＰ）

＠闘気

戦う意志が強い者に現れるスキルである。

戦う意志を力に変え強化以上の能力向上とその気の力によって敵を討つ。