『炎の迷宮』４０層のボス部屋。

そこには最強の種族と言われる竜種が陣取っていた。

レッドドラゴン、その力は山を抉り、そのブレスは海を焼くと言われるほどの魔である。

しかしその最強種であるレッドドラゴンでさえシローからすれば足りない相手である。

「とどめだっ！」

シローが言葉を発した途端、ドラゴンの首はを殘し吹き飛ぶ。

それはシローの【闘神武技とうしんぶぎ】によって練り上げられた気を拳に載せた一撃による破壊活である。

迷宮であり相手がレッドドラゴンだから許されるが、地上で放てば大地を割り町を破壊するほどの威力の一撃である。

そんな攻撃をけては最強種であるレッドドラゴンもたまったものではなく、レッドドラゴンの頭部は綺麗さっぱりとこの世から消滅していた。

「うは～ご主人様、容赦ないです～」

「シロー殿の前では我ら２人の力は不要だったな」

「２人が奴の気を引いてくれたからだ」

シロー１人でも余裕で倒せたが、アズハとジーナへの気遣いの言葉をかけることができるようになったのはシローの長と言えるだろう。

「さて、４１層に進むか」

休憩をする必要もないほど疲弊をしなかった。

４０層の魔、そして４０層のボスである最強種のレッドドラゴンでもシローを疲弊させる存在ではなかったのだ。

ボス部屋から４１層に移したシローたちの目の前には緑かな森林が広がっていた。

ここは『炎の迷宮』であり、これまでは武骨な巖やマグマ蠢く灼熱のエリアばかりだった。

その『炎の迷宮』でこのような緑かな景が広がっているとは流石のシローたちも思ってはいなかったので驚きの目で森林を眺める３人だった。

しかしそんな森林エリアにひとたび足を踏みれるとシローたちは不快な覚にを包まれる。

「くっ！？」

「えっ？」

「……瘴気か？」

不快に兜の中で顔を歪めるジーナ、そしていつもはゆらゆらと揺れている尾をの間に挾むアズハ。

共にシローが瘴気と言った不快な力のようなものをじたのだ。

「気持ち悪いです」

「ああ、これは流石にキツイな」

ジーナはまだしも【超覚】のあるアズハは酷い気分であった。

【超覚】は索敵能力や地形把握に優れたスキルだが、それだけにアズハの五を研ぎ澄ますスキルでもあることから不快にも敏なのだ。

「ジーナは【闘気】で自を包み込むようにしてみろ。アズハはこれでどうだ？」

「あ、気分が良くなりました！」

「む～、こうか……違うな……こうか……」

瘴気への対策を直的に考え付いたシローは【気】によって自分を包み込み瘴気から自分自を隔離することに功した。

それにより同じような【闘気】を纏うことができるジーナには自分自で対策をさせ、【気】や【闘気】をに著けていないアズハにはシローが【複合魔法】によって結界を施したのだった。

それなら３人を包む結界をと思うだろうが、この結界の維持ＭＰが以外に多く、人外のＭＰ量を誇るシローでもアズハの周囲に結界を施し自分自は【気】でコーティングした方が楽なのだ。

普通に結界を張るだけならここまでＭＰを必要としないが、アズハのきに合わせて移し、しかも瘴気が常に結界を侵食しようとすることでそのダメージの修復をするという狀況下ではＭＰの消費量が半端なく多くなっているようだ。

ジーナが覚えたての【闘気】をに纏わせるのに暫しの時間を要したが、不慣れながら【闘気】をに纏うことができた。

その狀態で３人は森林の中に分けっていくと、木のから兎のような魔が飛び出してきた。

既にアズハによって警戒が促されていたので奇襲をけることなくジーナが長剣をひと振りして斬り捨てる。

「ここは４１層……か？」

ジーナは兎の魔があまりにも弱いことに違和をじたのだ。

長剣から伝わってくる手応えがなさ過ぎて拍子抜けをしているじだ。

シローも【解析眼】で兎の魔のステータスを見たが、その數字が明らかに低いのを確認していた。

「魔が弱いのは納得いかないが、それでもここが４１層なのは間違いない」

「そうか、ならば先に進むのみだな」

「ああ、その通りだ」

結界に守られているアズハはその特徴であるスピードを生かした戦いができないことからしょんぼりしているが、この程度の魔しか居ないのであれば問題ないだろうとしホッとしている。

そしてそれをじ取ったシローに窘められる場面もあった。

森林の中を進むと雑魚魔ばかりしか出てこなかった。

そして暫く森林を進むと草原が目の前に現れた。

そして目を凝らすと分かるほどの距離にポツンと小屋が建っていた。

「あの小屋はあからさま過ぎて怪しいな」

ジーナの言う通り、視界の先にある小屋は怪しいと思うシローだった。

「む～小屋の中の狀況は分からないです」

アズハの【超覚】は索敵範囲が広いことも自慢だったが、そんなアズハでも視界の先にギリギリ見える程度の小屋の中の狀況を把握することはかなわなかった。

「行ってみれば分かるだろうさ」

シローの言葉で３人は草原に足を踏みれるのだった。

その瞬間と言えば良いだろう、まるでシローたち３人が罠を踏み抜いたかのように魔が空から現れる。

その魔は鷲の上半とライオンの下半を持つグリフォンである。

しかもこのグリフォンは４０層のボスであるレッドドラゴンよりも能力が高いのだった。

「グリフォンだ。レッドドラゴンより強いぞ」

「私が行きます！」

アズハが一歩前に出てグリフォンを迎え撃とうと短剣を両手に構える。

シローは自分が結界を張っていることをアズハは忘れているようだ、と思うのだった。

しかし丁度良いのでアズハの高速戦闘に自分の結界が追隨できるか試したくもなった。

「危なくなったら介するからな」

「はい！」

アズハはシローのその言葉に弓から放たれた矢のように地を蹴ってトップスピードにまで加速する。

シローはそのアズハのきに追隨させるように結界を張り移させる。

アズハのきは正にスピードスターと言うべき速さを誇っているので、その速さに結界を追隨させるだけでもＭＰがガシガシ削られていく。

普通に歩いている時でも結構な消費量だったが、戦闘速度のアズハのきをカバーするのはシローの能力をもってしても簡単ではないことからＭＰが急速に減っていく。

「シロー殿、大丈夫か？」

「正直、かなりつらいな。しかしアズハのきに付いて行ければ俺の自信にもなるからな」

シローは自力でスキルを長させられない質なのだが、唯一【闘神武技】だけは努力の結果でレベルが上がるスキルだ。

その【闘神武技】の能力である【気】を使いつつアズハに魔力で結界を張るのはＭＰ消費だけではなく、【気】の練度を上げるのに適しているのではと考えている。

本當は魔法も自力でレベルを上げたかったが、質が邪魔をし現在は難しいことに歯噛みするシローだった。

アズハはグリフォンを捉えようと【立機】を駆使して空を駆ける。

グリフォンもまさか人間が空を駆けてくるとは思ってもいなかったのか、やや困気味の表を見せる。

しかし困は直ぐに収まる。グリフォンは空の王者であり、空ではドラゴンとさえ互角以上に戦える存在なのだ。

その自負が人間の如き脆弱な存在に気おされることを許さなかったのだ。

「その程度のスピードでっ！？」

アズハが更に加速するとグリフォンは視界からアズハが消えたように見えた。

そして次の瞬間、グリフォンの自慢の翼が綺麗に元から斬り飛ばされていたのだ。

「キュルゥーーーーーっ！？」

片翼を失ったグリフォンは錐み狀態で落下し地面に叩き付けられる。

何とか死を免れたが最大の特徴である空での機力をあっという間に奪われたグリフォンは驚愕していた。

まさか空の王者である自分が人間如きに後れを取った。しかも人間は自分よりも早く空を駆けていたのだ。

王者の自信、矜持を傷つけられたグリフォンは逆上よりも恐怖をじてしまった。

足がすくみがかない。翼を切り飛ばされ地面に激突したダメージもあるが、今のグリフォンはアズハに対する恐怖でがかないのだ。

「トドメです！」

「キュリュゥゥゥ……」

縋るようなけない視線を向けられたアズハは躊躇する。

一方的な暴力を振るわれる記憶はアズハにもある。

奴隷となってからは優しい主人に恵まれたが、奴隷になる前は一族から疎まれ謂れのない暴力を振るわれることはざらであった。

止めてほしくても誰も止めてはくれない、庇ってもくれない、そんな地獄のような日々を生きていた自分と今のグリフォンを重ねるのだった。

「どうした？怪我はしていないだろ？」

近付いてきたジーナがアズハを気遣う。

きを止めるのは戦闘が終わってから、これは戦闘中に気を抜き怪我をしてほしくないとシローが皆に常々言い聞かせていたことだ。

「私には……この子にトドメをさせません」

シローとジーナは顔を見合わせ、そして消えりそうな聲で鳴くグリフォンを見る。

そしてアズハの信條を理解したのだった。

「トドメを刺さないのならテイムするしかないな」

「え？……でも……」

「このまま放置はできないだろう」

「ひゃっ！」

シローは徐にアズハの尾を摑むとアズハがビックリするのを無視して【ステータスマイスター】を発させ【モンスターテイム】を付與するのだった。

「え？あ、有難う座います！」

シロー的には尾を堪能できて全然ＯＫ！的なじだったが、ジーナはそんなシローをジト目で見ていた。