《チートスキルはやっぱり反則っぽい!?》番外編_召喚された勇者ではないお話1
魔王が軍を揃え侵攻してきた。
數年前に魔王の一人が倒されたのは記憶に新しい。
しかし今回は三人の魔王が人間の國々を脅かしていた。
暴食の魔王グラトニー、の魔王ラスト、憤怒の魔王フュリーだ。
この三人の魔王はいずれも魔大陸と言われる大陸に本拠地を置くと言われている魔王である。
前回、怠惰の魔王レジーを倒したのは無名の冒険者だった。
今ではその冒険者は世界で一番有名な冒険者になっているが、その冒険者にまた魔王討伐をと考える者も多くいた。
しかし魔大陸から遠いエスペノ王國では魔王たちの侵攻を食い止める大事を冒険者一人に任せるのは流石に呑気すぎると勇者召喚を行ったのだ。
勇者召喚は異世界で平和に暮らしていた年をこの世界に呼び出した。
過去の事例では召喚される勇者の年齢は十七歳から十八歳と若い。
そして勇者たちのステータスはこの世界の標準的な値よりも高く、レア度の高いスキルを複數所持していることが多かった。
「よくぞいらして下さいました、勇者様方!」
エスペノ王國の第一王であるアナンメアリーは和な笑みを浮かべ魔法陣のの中から現れた年にそういった。
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エスペノ王國は過去の勇者が建國した國であり、國王は勇者の直系である。
そのためか、アナンメアリーはしい黒髪を腰あたりまでばしているみ目麗しいである。
勇者としてこの世界に召喚された年は三十一人。
いずれも過去の事例と同じように若い男であった。
しかもいずれも過去の勇者と同じ黒髪黒目の若者である。
期待はいやが上にも膨らむ。
「こ……こは……どこ?」
召喚された場所は石造りの神殿の中であり、召喚された年の國にはこのような場所は滅多にないだろう。
混して當然であり、若い年の中には場の雰囲気を読めずに騒ぐ者も當然ながら存在した。
「お前たちは何だよ!?」
「ここはどこ?私たちはどうなったの?」
混する年の中からアナンメアリーへ質問する年が現れる。
アナンメアリーは彼の質問に素直に答える。
「ここはエスペノ王國です。皆さまには魔王を倒して頂きたいのです」
「魔王?それは僕たちに戦えと言っているのですか?」
「申し訳ありませんが、そうなります」
彼は驚いたようだが、騒ぐことはなかった。
寧ろ彼の後ろで話を聞いていた年が騒ぎ出す。
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「皆、騒いでも事態は好転しないよ。ここは冷靜になろう!」
アナンメアリーと話していた年が年を落ち著かせる。
「有難う座います。自己紹介が遅れ申し訳ありません。私はエスペノ王國第一王のアナンメアリーと申します」
ペコリと頭を下げる王。
その王城の所作を見て落ち著いた年たちは息を飲み、は嫉妬の炎を燃やす。
それほどにアナンメアリーはしい顔立ちをしているのだ。
「あ、僕は上城英雄と言います」
アナンメアリーに見惚れていた上城英雄がやや遅れて自己紹介をする。
落ち著いた年たちを連れてアナンメアリーは王城に向かう。
馬車五臺に分けて乗った年はその馬車の窓から見える景にここが異世界だと改めて認識させられる。
「私たちどうなるのかな……」
誰かがポツリと呟く。
誰もそれには答えられなかった。
「よく來てくれた、勇者殿たち。余はこのエスペノ王國の國王、フェリペ三世である」
勇者として召喚された年は國王から説明をける。
年の何人かが何度か騒いだりしたが、國王はその都度子供に言い聞かせるように説得した。
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そして勇者たちに言うのだ、ステータスを確認するように、と。
この世界の人であれば鑑定系のスキルを使わなければステータスの確認はできない。
しかし異世界より召喚された勇者たちは自分の意思でステータスを確認できるのだ。
「何だよこれ?」
「スゲー本だ!」
「とうとう俺の時代がやってきた!」
「すごい~」
思い思いに自分の気持ちを口に出す年。
「あ、あの、すみません。ステータスは確認できましたが、これが良いのか悪いのかが分からないのですが?」
「カミシロ殿の仰る通りですね」
アナンメアリーがステータスの容を勇者に教える。
個人報には氏名、種族、年齢、別、職業や分。
能力は年齢でも変わってくるが、十七・八歳ではHPとMPは一般人は30程度、STRからLUKは一般人が15程度だという。
スキルはレア度の高い順に並んでおり、ユニークスキルはこの世界で一人しかそのスキルを持っていない。
後はウルトラレア、スーパーレア、レア、ノーマルの順にレア度は下がっていく。
そして稀に種族スキルがある場合もあるが、人族に現れた事例はないという。
「カミシロ様のステータスはどうでしたか?」
「えーっと……」
■ 個人報 ■
ヒデオ・カミシロ
人族 18歳 男
勇者
■ 能力 ■
HP:500/500
MP:400/400
STR:200
VIT:200
AGI:150
DEX:150
INT:150
MND:150
LUK:50
■ ユニークスキル ■
聖剣召喚
■ スーパーレアスキル ■
魔法Lv1
■ ノーマルスキル ■
剣Lv1
盾Lv1
「ユニークスキルに【聖剣召喚】があります!素晴らしいです!それにスーパーレアスキルの【魔法】も滅多にない強力な魔法スキルです。能力も非常に高く素晴らしいです!」
アナンメアリーが手放しで褒め稱えるものだから上城だけではなく、他の勇者も満更ではない表である。
ただ、この中で一人だけステータスを見ることができなかった年がいた。
「あの~ステータスが見えないのですが?」
「え?何故?」
その年の名前は生島亙。間違いなく異世界の日本から召喚された勇者のはずだが、何故かステータスが見えない。
更に【鑑定】を持っている者に確認させたところ、この世界の一般人並みの能力でスキルは一つも持っていなかった。
「……申し訳ありません。イクシマ様のステータスは一般人と変わりありません」
「と言うと僕はどうなるのですか?」
「そんなの決まっているだろ、廃棄だよ、廃棄!」
アナンメアリーとイクシマの話に割ってってきたのは、宇垣浩二だ。
彼は生島をめているグループのリーダー格の年である。
「ウガキ様、私どもはそのようなことは致しません」
アナンメアリーの言葉に宇垣は舌打ちをして離れていく。
生島はため息を吐き頬をポリポリかくのだった。
「イクシマ様にはこの王城で過ごすか、城下で過ごせるように手配をします。生活の保障はしっかりさせて頂きますので、ご安心下さい」
王からの説明で元の世界に戻すことができないとあったことから、生島がこの世界で一般人として生きていくことはほぼ確定のように思われた。
生島はし考えさせてほしいとアナンメアリーに答えるのがやっとであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
エスペノ王國ではないどこか。
「魔王様、人間どもが勇者召喚をしたようです」
「そいつらは強いのか?」
「今はまだ大したことはないようです。ただ、長すれば……」
「ガッハハハ、なら勇者とやらが強くなるのを待たないとな。俺はつえー奴と戦えればそれで良いからよ!」
魔王城の謁見の間、うす暗い中で憤怒の魔王フュリーとその部下であろう者の會話である。
「そんなことよりレジーの野郎を倒した奴と戦うぞ!レジーを倒したのだからつえーだろ?」
「その者の向を探ろうと手の者を放っているのですが、一向に報告が上がってきません。恐らくは全員殺されたものだと考えられます」
「ガーッハハハ、良いじゃねぇーか!俺が直々に乗り込んでやるわ!」
「しかしどこに住んでいるのか分かっておりませんし―――――」
「そんなもん、そいつの活範囲で暴れていればそいつからやってくるだろーがっ!」
そう言うと居城である魔王城を飛び出していった魔王。
しかしその魔王が二度と魔王城に帰って來ることはなかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「何じゃと!?魔導王國セトマの首都ライベスが魔王に攻められただと!?してライベスは、魔導王國セトマはどうなったのだ!?」
エスペノ王國の國王フェリペ三世は驚き玉座から立ち上がった。
「は、死者は100名ほど、負傷者多數、街の一部が破壊されましたが見事に憤怒の魔王フュリーを討ち取ったとのことです!」
「何じゃと、魔王を討ち取ったと言うのか!?」
フェリペ三世は驚愕した。
確認されている三人の魔王の一人が討ち取られたのだから驚くのも仕方がない。
「まさかまた……」
「はい、冒険者のシローが魔王を討ち取って座います」
「……」
フェリペ三世はその名を聞いて天を仰いだ。
「そうか……シローとやらが………………余は決めたぞ!」
フェリペ三世は立っていたの座り直して何やらを決意する。
數段低い場に居並ぶ家臣たちを一人一人見てフェリペ三世は口を開く。
「冒険者シローを、いや、シロー殿を勇者殿の教育係として招聘する!」
こうしてエスペノ王國國王であるフェリペ三世はシローに使者を送ることを決めた。
「ソナタを使者にたてるは、冒険者シローの格を考えてのことだ。ソナタであれば間違いはなかろう」
「この老いぼれに何ができるか分かりませぬが、最後のご奉公と思い全全霊を傾けましょうぞ」
白髪頭の老人がシローへの使者となったが、これはシローの格を考えてのことだった。
シローと言えば気にらない貴族を滅ぼし、小國とは言え國をも滅ぼしている過去があるからだ。
下手な貴族を送りシローの怒りを買えば魔王より先にシローとの戦爭になりかねない。
しかし國王はしっかりとシローの格を調べ上げていた。
傲慢な態度をとらず禮と誠意をもって接する者に敵対するようなことはしないのがシローだと。
「よいな、決して高圧的に接するでないぞ」
「分かっております。この老いぼれも余生を靜かに暮らしたいですからな」
國王と使者に指名されたアルグラーツ元伯爵はお互いに頷くのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「某、エスペノ王國に仕えておりますアルグラーツでござる」
シローが冒険者ギルドからの呼び出しで二十日ぶりに冒険者ギルドの會館へ赴いたら、アルグラーツと面會の場が設けられていた。
「……」
「冒険者ギルドには某が頼みこんでこの場を設けて頂いた。シロー殿には急なことで申し訳ないと思っておるが、どうか某の話を聞いて頂きたい」
こうしてシローとアルグラーツ特使が初めて顔を合わせたのだった。
アルグラーツ特使はここにきて違和をじていた。
それは目の前で憮然として座っている冒険者のシローについてだった。
(似ている。顔ではなく雰囲気があの子と似ているように思える)
アルグラーツ特使には五人の子供がいたが、三人がの子である。
アルグラーツ特使は自分の三に雰囲気が似ている目の前の青年を凝視する。
長は既に他界しているし、子もなしていない。
だから他人の空似だろうと思うようにしてシローとの渉に臨む。
「はぁ、俺はシローだ。俺に何かようか?」
「ふむ、聞いていた通りの態度ですな」
「これが俺だ。この態度が気にらないのなら話はここまでにしてもらおう」
「ははは、某は何も気にしておらぬ。だから話を聞いてほしいのだが?」
「……良いだろう。できるだけ手短に頼む」
「若いの。うんうん、某の若いころを思い出すわ。ははは」
シローはこれまで會った貴族とはまったく違う不思議な覚を目の前の老人からじていた。
まるで自分の祖父にでも會って話をしているかのような懐かしい覚だ。
「最近、我が國は異世界より勇者たちを召喚したのは知っておられるかな?」
「……さぁな、そんなことに興味はない」
これは本當のことである。
シローにとって大事なのはするスノーと信頼できる仲間たちだ。
スノー、アズハ、クルル、ジーナの4人と4人に関わる者以外にはまったくと言ってよいほどに興味を示さないのだ。
だから勇者が召喚されたとアズハやジーナが話しているのをすぐ橫で聞いていても右から左の狀態なのだ。
「そうか、説明すると長くなる。それではシロー殿の意に反することになるからな、かなり端折ることにするかの」
アルグラーツ特使はかいつまんで勇者召喚に関することを説明した。
そしてエスペノ王國で勇者の教育係りをしてほしいと包み隠さず話す。
「興味ないな。悪いが他の冒険者を當たってくれ」
けんもほろろである。
しかしそんなシローの回答はアルグラーツ特使の予想の範囲であった。
粘り強くシローを説得するアルグラーツ特使。
ここまでしつこいと今までのシローなら切れていただろう。
しかし今日は何故か目の前の老人ともっと話してみたいと思うシローだった。
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