《マルチな才能を発揮してますが、顔出しはNGで》顔出しNGで楽曲提供 4

「あ… あれ?」

 目を開けると、目の下を真っ赤に腫らせたキアラが俺の顔を覗き込むように見下ろしていた。

 頭の下にじるらかいから察するに、俺は今キアラの膝枕で寢ているという狀況にあるようだ。

 何というご褒だろうか! これは!

「ユウさん気が付きましたか? 大丈夫ですか…?」「えっと… 」

 そういえば顔全がやけに痛いな…

 ああそうか、突然練習用のスタジオにって來たアキラに問答無用でドロップキックをかまされたんだったけな。

 顔が腫れているのか、お面がキツくじる。

「ああ大丈夫、大丈夫! 心配要らないよ! ちょっと顔が痛いだけ」「本當ですか!? それなら良かったです… 本當に良かったです…」

「そういえばアキラはどうした? もうここにはいないみたいだけど」

 華麗にドロップキックをかました張本人は俺が意識を失っている間にいなくなっていた。 全く、文句のひとつでも言ってやろうかと思ったのに。

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「アキラちゃんなんて知りません!」

 いつになく強い口調でキアラが言い放つ。 俺が気絶している間に2人の間で何かあったのだろうか?

 「もしかして、俺のせいで2人の仲が悪くなったりしてないよね?」

「それは… でも、ユウさんの所為ではないです! アキラちゃんが分からず屋なんです…!」

 なんか申し訳ないことしたな… 

 誤解とはいえ、あの場面だけ見たら誰だって勘違いしても仕方がない狀況だったし、なにより俺には前科がある。 

 だから、アキラが誤解してしまうのも無理はない。

「俺、アキラに謝ってくるよ… 」「そんな…!?  ユウさんが謝る必要はありません! 先程のことはアキラちゃんが悪いんですから!!」

「いや、あの場面だけを見たら勘違いしても仕方ないし、それに2人が喧嘩してたら《kira☆kira》の活にも支障が出るでしょ?」「そうですけど… 」

「それに、俺が原因で2人の仲が悪くなるのは嫌だから… 」「ユウさん… 」

  とか、格好いいこと言ってはみたが、もしこのまま2人が仲違いして《kira☆kira》が解散なんてことになったら、日本中、いや世界中の《kira☆kira》のファンに申し訳なさ過ぎて潔く腹を切るしかなくなってしまう。 

 その前に水戸さんに何をされるか分かったもんじゃないし、これはもうアキラとキアラの2人だけの問題ではない…!

 俺の命に関わる大問題だッ!!

 「じゃあ、ちょっと行ってく… 」「それなら私も付いていきます! ユウさんはアキラちゃんの居場所わからないでしょうし」

 「そうでした」

 ここは完全なアウェーだった。

 1人で出歩くの怖いし、キアラが一緒に來てくれるなら心強い。 そして何より道に迷う事もない。

「じゃあ、お願いしてもよろしいでしょうか?」「はい、お任せください」

 そう言って、ニコッと笑う姿もまた可かった。

 本當に罪な子だよ、全く。

……

……… 

 アキラの部屋まで向かう道中、エレベーターに乗って降りた辺りから、まるでホテルのように同じような通路に同じような部屋のドアがある場所が続く。

 本當はもっと早い行き方があるらしいのだが、アキラが寄りそうなところを経由しつつ向かっていたため、迷路のような道をクネクネ曲がったり曲がらなかったり、部屋にったりらなかったり、途中から方向覚もおかしくなり、自分がどこにいるかも分からなくなっていた。

 キアラと一緒に來て本當に良かった…

「このフロアが私とアキラちゃんが普段生活しているフロアになります」「はぁー… 」

 先程とは違うエレベーターに乗って辿り著いた場所は、他のフロアと違ってグレードが高いと一目で分かるような豪華な作りだった。

 エレベーターを降りて目の前にはそれこそ何処か高級なホテルのスイートルームのような共用スペースがあり、その奧は1面ガラス張りで外の景が一できる。

 その橫にはバーカウンターが設置されていて、これまた絵に描いたようなバーのマスターのような人が磨かなくても十分綺麗なグラスを丁寧に磨いている。 

「このフロアは私たちだけでなく、社長に面會に來られるお客様なども泊まられるんですよ」「そ、そうなんだー… 」

 住む世界が違うとはこういうことを言うのか…

 「ここです… 」

  共用スペースを抜けた通路を進んですぐの部屋の前でキアラが立ち止まり、俺に告げる。

 どうやらここがアキラの部屋らしい。

 アキラの部屋に向き合うキアラの橫顔からは、何処か気まずいような表が見て取れる。

 そしてキアラは、スゥーと聞こえるほどの息を吐いてインターホンを押した。

「アキラちゃんキアラです、話しがあります」「………」

 インターホンからの返事はなく、部屋の中からは音1つ聞こえてこなかった。

 もしかして、部屋には帰って來てないのかと思いキアラの様子を伺うと、まるで俺がそう思っていることがわかっていたかのように、キアラはどこからかカードキーを取り出して俺に笑顔を向けていた。

「アキラちゃんは怒られたり喧嘩したりすると大いつも部屋に閉じこもるんです」

 キアラはそう言いながらカードキーを読み込み部分にタッチして部屋の鍵を開け、部屋の中にって行く。

「お邪魔しまーす… 」

 俺もキアラの後にゆっくり付いて部屋の中に足を踏みれた。

 アキラの部屋は想像していた通りのスイートルームのような部屋だったが、部屋の中はアキラの明るく元気なイメージからは想像出來ないような、大小様々なぬいぐるみや、ふわふわしたクッションなど可らしいもので溢れていた。

 罵られ、嫌われて、最後は蹴られてと散々だったが、もしかしたらアキラにはこういう可らしい一面があるのかもしれない。

「何しに來たんだよ!出てけッ!!」

 し枯れかかった怒鳴り聲が発せられたのは、ベットの上の布団の丸い膨らみからだった。  昔、妹のも俺と喧嘩した後、よくああしてベッドで布団を被って丸くなって拗ねてたな…

 そういう時はいつも俺の方から謝って、頭をでてやると落ち著くんだよな。

「アキラちゃん、ユウさんを連れて來たよ、アキラちゃんに話があるって… 」「今更何だよ!  ほっといてよ!」

 今更も何も、俺さっきまで気絶してたんですけど… と元まで出かけた言葉をぐっと呑み込む。

「アキラ、さっきのは勘違いなんだ。 あの時はキアラが服に引っかかっていたお面をがしてくれてて、それで…」「そんな事はどうでもいい!」

 えーッ!?

そのことで喧嘩したんじゃなかったのですかーい!

「お前のせいで私とキアラの関係がめちゃくちゃだよ… ずっと… ずっと仲良しだったのに… なのに… なのに… 」

 確かに俺と関わったせいで2人の関係が悪くなったのは事実だ。

 アキラからすれば、キアラに害をなす俺をキアラがなぜ庇うのかはわからないのだろう。

 しかし、俺からアキラに何をどう説明すればいいのか…

 この2人のすれ違いを説明するには、キアラの恥ずかしいを話すことになるがそれは俺から話すことは絶対にできない。

 「聞いてアキラちゃん、ユウさんは… ユウさんは私がおらししたのを庇ってくれたの!」

 俺が俯いて黙っていると、代わりにキアラがテレビ局でのトイレ事件の真相を話し始めた。

 なぜ俺が初対面のキアラに水を掛けたのか、その経緯をキアラはアキラにすべて話して聞かせた。

 アキラは最初こそ布団から顔を出して驚いていたが、キアラが話し終わるまで何も言わずに黙って聞いていた。

 俺が墓まで持っていくつもりだったキアラのを、俺の汚名を晴らすためだけに自分の最も恥ずかしいことをキアラ自が話してくれた。

 話の最後にキアラは「だから、これ以上ユウさんを悪く言わないで」と言って泣き出してしまった。

 それをアキラが「うん、わかった」といいながら優しく抱き締めていた。

 これといって何もしてないけど、これで一件落著かな。 では、邪魔者は退散しましょうかね…

 何となく、今は2人だけの方が気がして、そっと部屋を抜け出そうとしたところでアキラに呼び止められる。

「ユウ! その… キアラのこといろいろ誤解して悪かったな… 」「いやいや、こっちこそ」

「お前には謝してるけど、でもやっぱり私お前の事嫌いだから!」

 そう言いながらあっかんべーをされたが、その顔はし笑っているように見えた。

 「面と向かって嫌いって言われたの生まれて初めてだよ」

 そう言い殘して俺は部屋を出た。

 相方同士水らず、しばらく2人でいさせてあげよう。

 さて、何か飲みでも飲むかな!

 俺は自販機を探しに通路を進んでいったのだった。

……

………

「あれ…? ここはどこだ!?」

   案の定、俺は道に迷った。

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