《マルチな才能を発揮してますが、顔出しはNGで》顔出しNGの事があるのです 11
「なあ委員長、花沢さんを次の試合にレギュラーで出してしいんだけど…」
 聞けば花沢さんは1度も試合にメンバーとして出たことがなくて、いつもベンチにもれないそうだ。
 まあ、余程うまいことがない限り、1年生がベンチにることはまずないらしい。
 でも、きっと花沢さんは試合で仲間と一緒に勝利したとき、バスケの楽しさが分かるはずなんだと、授業の合間に委員長の所を訪れては同じような話を1日中している。
 とにかく思いの丈を全部委員長にぶつけてみたが、反応はいまひとつ。
 ダメかと諦めかけたとき、地區大會の前日に練習試合をれてあるから、そこで1年生同士の新人戦をしてくれないか相手方に頼んでみるとのことだった。
 流石、委員長頼りになる。
 そして、練習試合當日。
 うちの高校がホストとなり相手方を招くということなので、俺は応援に駆けつけた次第であった。
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 「相手のチームは中々腕のある奴が多いな、それに人數も多いし、ホームなのにまるでアウェーのような雰囲気が出てるぞ… 」
  試合前のアップの雰囲気を見れば、どれだけその學校がバスケに力をれているかが大わかる。
 対戦相手の方がムード作りが上手いと、雰囲気に圧倒されてしまう。
 だからこそ、試合前からお互いにプレッシャーを掛け合い、牽制し合っているわけだ。
「うちの部も聲を出してはいるけど、圧倒的に人數が違うね。 完全に飲み込まれてるよ」 「おい義也、お前はどっから湧いて出てきた?」
 どこからともなく現れて、いつの間にか隣で、さもずっと居ましたみたいな顔をしながらコメントしている山崎義也。
「嫌だなー、勇志くん。 まるで僕が蟲とか幽霊みたいじゃないかー」「じー」
 ただ何も言わずにじーと義也を見つめる。
「えッ?  嫌だな~、勇志くんが來るだろうなと思って來たわけじゃないよ?」「じゃあ、俺帰ろうかな」
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「待ってぇー! わかったごめん、帰らないでー!」 「はいはい、それで何しに來た?」
「実はね~、今日のうちのバスと試合するとこがね、これまた面白そうなんだ~」
 確かに面白そうという顔をしてニヤニヤしていた。
「それで、面白そうって何がだよ?」「あら? ご存知ない?」
「勿ぶってないで教えろよー」「今日來てるとこ、神無月學園子バスケ部だよ」
「本當か!?」
 神無月學園って、たしか西野んとこの學校じゃないか? ってことは、まさか西野も來てるのか?
 急いでコートを見回すと、一際目立つ金髪のセミロングを揺らしながらパス回しをしてきる西野の姿があった。
 第1印象から思ってたが、やはり運神経良いんだなー。 きにキレがあるし、踏み込みも鋭い。
 本人はスケットだって言ってたが、背番號の7番は伊達じゃないってことだろう。
 いや、だから決しての抵抗がないからとか、そんなことは思ってないからな!
「西野莉奈さん、男子子問わず人気があって、すごく可憐なお嬢様ってじなんだって。 それでいて運神経抜群で數々の運部から聲が掛かってて、順番にスケットで回っているみたい。 でもそれは表向き、本當のところは男勝りで気が強いの子なんだってね〜」
「あれ? ちょっと待て、なんで義也が西野のこと知ってるんだ?」
「嫌だな~、僕が知らないわけないでしょ? それにしても立花時雨先輩と西野莉奈先輩。 にひひひッ、修羅場になりそうでワクワクが止まらないよ~」
「おい、答えになってないぞ! それになんで委員長が出てくるんだよ?」
「當の本人がこんな調子だから修羅場は不可避だろうな~」
 くぅ~! こいつは1度本気でとっちめた方がいいのかもしれん。
 義也の首に腕を回し、モジャモジャの髪のをさらにモジャモジャにかき回す。
「このこのこのこのこの〜!!」「らめ〜ッ!」
「月くん」
 あともうしで義也の頭をアフロみたくできたところでお聲が掛かる。
「お、委員長か! 試合前のアップはいいのか?」
 そこには軽く汗を掻いた委員長が上著を肩から羽織った狀態で立っていた。
 相変わらずの綺麗さで、汗もまた委員長の良さを一際引き立たせているような気さえする。
「ええ、一通りは終えて來たわ。 今日は応援に來てくれたのかしら?  休みの日は1日中家に閉じこもってるのかと思ってたけど、珍しいこともあるのね」
「俺だってできれば閉じこもってたいよ、でも…」
 視線をコート中のある人へと向ける。  ただがむしゃらにシュートを放つその姿は、どこか自分の気持ちを振り払おうとしている… そんなようにも伺える。
「花沢さん… ね、貴方が彼に言った『バスケを楽しむ』ということ、あれ真剣に考えているみたいよ」「そっか、そりゃあ良かった」
 花沢さんならきっと大丈夫だと思う。 拠はないけど、あんなにがむしゃらに頑張ってるんだから、それが報われないはずがない。
「それより月くん、そろそろ山崎くんを放してあげたら?」「おお、そうだな」
 気付いたら暴れるのをやめて、グッタリとした表をしている義也。  委員長に言われてすぐに解放する。
「ありがとうございます立花先輩、最近勇志くんのスキンシップが激しくて困ってるんですよ」「それは貴方も気の毒ね、あまりにも酷いようなら私に言ってね、しっかり教育しておくから」
「はい! お願いいたします」
「おいおい、それより2人は知り合いだったけか?」「嫌だな~ 勇志くん、立花先輩と僕が知り合いじゃないわけないじゃないかー」
 本當お前は恐ろしいやつだよ…
 敵に回したくないとはこういう時に使うものなのか? いやでも散々迷被っているし、むしろ敵なんじゃないかとも思えてくる。
 「あら? 月くん、ちょっとごめんね」
 腕を組んで難しそうな顔をしていた俺に向かって、委員長がおもむろに手をばしてくる。
 委員長のことだから何か変なことはしないだろうと思い、されるがままにする。
「ほら、髪のついてたわよ。 モジャモジャのやつ」「お、ありがとう」
  義也の髪のを掻き回している時に、知らぬ間についてたんだな。
 義也の髪のが付いていただけでしゾッとする。 
 実はこれが発信機みたくなっていて、いつでもどこでも義也に居場所が筒抜けなんてことないだろうか。 必ずないとは言い切れないのがし怖い。
「ちょっと勇志くん、なんか失禮なこと考えてないー?」「あ、わかる?」
「もう! バレバレだからね」
 そんなやり取りをしていると、向こうの方からこちらに向かって、まるでドタバタという効果音をつけたような勢いで迫ってくるやつがいて、その場にいる全員の視線が集まる。
「ちょっと勇志! この子誰よ!?」
 俺の前まで來たと思ったら急停止して、凄い勢いで俺に詰め寄ってくる。
「お、おう西野、いきなり誰とはご挨拶だな」
「だって見たわよ! この子が勇志のほっぺに手を當てて、ききききキスッ、しようとしてたの!」「え゛!? キス!?」
「私は六花大付屬高校2年の立花時雨。それでさっきのは月くんのほっぺにゴミが付いてたから取ってあげただけよ? それより貴こそ誰? 月くんと知り合いのようだけど」
 俺がキスというワードにピュアな心が反応してしまい、たじろいでいると変わりに委員長が説明をしてくれる。 
 しかし、それが逆に西野に燃料を投下してしまったらしく、見る見る表が恐ろしくなっていく。
「私は神無月學園2年の西野莉奈、勇志とはちょっとした腐れ縁があって家にも行ったことありますから! それにゴミを取っていたって言うけど、あんな乙みたいなウットリした表して、よくそんなことが言えるわね!?」
 え、そうなの? その時俺違うこと考えてて委員長のこと見てなかったからわからなかったわ。
 それと義也、お前はし落ち著け。 初めて飛行機を見た男の子みたいな顔をするのはやめろ!
「言いがかりよ! わッ、私が月くんなんかにウットリなんかするわけないでしょ!?」
 委員長… そうかもしれないけどもうちょっとオブラートに包んで言ってくれません? それはそれで傷つくから…
「ふーん、そう? とりあえずこれ以上、勇志に近付かないでくれる?」「なんで西野さんにそんなことを言われないといけないのかしら? 貴は月くんの彼なのかしら?」
「かかかかかか彼ッ!? わたひゃぃが!?」
「いや、違うからね委員長、お前もちゃんと否定しろ!」
「違うのだったら貴にどうこう言われる筋合いはないわね。 クラスメイトとしてこれからも月くんと接していきますから」
 「きぃーーッ!! 彼じゃないですけど今度、勇志と遊園地にデートに行きますから!!」
「3人でな、それとデートじゃないから」
「ふッ、ふーん! デート!? そう?そっそれくらいなら私も月くんと2人でお茶したことあるわよ!?」
「え? あれデートだったの? 時間潰しでお茶しただけじゃなかったの?」
「ぐぬッ! 私だってまだお茶した事ないのに!!」
 ダメだ、どんどんエスカレートしていっている。 話の意味すらもうわからん。 
 ここは男の俺がバシッと間にって止めるしかないか。
「はいはい、2人とも落ち著いて。 ここは冷靜にな… 「アンタは黙ってて!!」「あなたは黙ってて!!」 はい…」
 いーさ、別にいーさ!どうせ俺なんてなーんにもできませんよ! 
「こうなったら試合で決著つけてやるわ! 私が勝ったら勇志に近付かないで!」「じゃあ、私が勝ったらどうするつもりなの?」
「あなたが勝ったら勇志と今まで通り接してくれて構わないわ!」「それ貴にデメリットが何もなくて、私にメリットが何もないじゃない…  まあそれでいいわ」
「覚悟しときなさいよッ!」
 はあ… これどうなるの?
「うふふふふ、楽しくなってきたーーッ!!」
 義也、俺はお前のポジションが羨ましいよ…
【書籍化】外れスキル『目覚まし』、実は封印解除の能力でした。落ちこぼれの少年は、眠りからさめた女神達と優しい最強を目指す。【コミカライズ企畫進行中】
サーガフォレスト様より、1巻が6月15日(水)に発売しました! コミカライズ企畫も進行中です! 書籍版タイトルは『神の目覚めのギャラルホルン 〜外れスキル《目覚まし》は、封印解除の能力でした〜』に改めております。 ほか、詳細はページ下から。 14歳のリオンは駆け出しの冒険者。 だが手にしたスキルは、人を起こすしか能がない『目覚まし』という外れスキル。 リオンはギルドでのけ者にされ、いじめを受ける。 妹の病気を治すため、スキルを活かし朝に人を起こす『起こし屋』としてなんとか生計を立てていた。 ある日『目覚まし』の使用回數が10000回を達成する。 するとスキルが進化し、神も精霊も古代遺物も、眠っているものならなんでも目覚めさせる『封印解除』が可能になった。 ――起こしてくれてありがとう! 復活した女神は言う。 ――信徒になるなら、妹さんの病気を治してあげよう。 女神の出した條件は、信徒としての誓いをたてること。 勢いで『優しい最強を目指す』と答えたリオンは、女神の信徒となり、亡き父のような『優しく』『強い』冒険者を目指す。 目覚めた女神、その加護で能力向上。武具に秘められた力を開放。精霊も封印解除する。 さらに一生につき1つだけ與えられると思われていたスキルは、実は神様につき1つ。 つまり神様を何人も目覚めさせれば、無數のスキルを手にできる。 神話の時代から數千年が過ぎ、多くの神々や遺物が眠りについている世界。 ユニークな神様や道具に囲まれて、王都の起こし屋に過ぎなかった少年は彼が思う最強――『優しい最強』を目指す。 ※第3章まで終了しました。 第4章は、8月9日(火)から再開いたします。
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