《マルチな才能を発揮してますが、顔出しはNGで》顔出しNGの事があるのです 12

「さあーて! いよいよ六花大付屬高校と神無月學園の試合が始まろうとしておりますッ!! 會場もこの世紀の1戦を今か今かと待ちわびている様子です! 今回この試合の実況をいたしますのは私、山崎義也、 解説には六花大付屬高校男子バスケ部のスケット、月勇志さんにお越しいただきました。月さんよろしくお願いします」

「あっはい、よろしくお願いします。 じゃねぇーよ! なんだ!?この機とマイクは!!」

 コートサイドに用意された簡易式の長テーブルとパイプイスが2つ、またご丁寧に『実況』『解説』と書かれた紙が機の前に張り出されている。

「學校の備品です」「そういうことじゃないの! こんな事して怒られるぞ!?」

「ちゃんと許可取ってありますので大丈夫です。 むしろ大歓迎とのことです」「いいのか?それで…」

「さあ! 気を取り直して試合の方に戻りましょう!」

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 もう義也のやつは放っておこう。

 コートに目を向けると、両チームすでに部長を中心に円陣を組んで気を高めている。

 練習試合だというのに、凄まじい気迫がこちらにも伝わってくる。

 各チーム、レギュラーの5名が出揃い、コートサイドの真ん中からコートり、それぞれ目の前の選手と向き合うのだが、1人だけ目の前の選手でなく、斜め前の選手に凄い視線を向けている選手がいた。

「おーっと! 早速相手選手に向かってメンチを切っている選手がいるようだぁ~! 神無月學園の西野莉奈選手だー! その相手は六花大付屬高校のキャプテン立花時雨選手のようです!! 2人は先程、1人の男を巡って口論になっていましたが、やはりそのことが尾を引いているのでしょうかぁ~!? 解説の月さんはどうお考えでしょう?」

「い、今はその男は関係ないんじゃないんでしょうかね~…」

 うわ、凄い表で2人に睨まれた… こ、こわい…

「いや~、そうもいかないようですね~」「そうですねッ!」

 お互いのチームがれ、ジャンプボールの態勢にる。審判がボールを高く上げて試合が始まった。

 両チーム共、テクニックに大きな差はなく、それと同じく點數も拮抗している。

 やはりお互いのエースはそれぞれ六花大は委員長、神無月は西野だろう。 その2人が中心となり、お互いに點數を量産していた。

 エース同士ということもあり、マークマンはお互いに委員長と西野でマークし合っているが、どちらも一歩も引かない攻防を繰り広げている。

 委員長がディフェンスでボールをカットすれば、西野がディフェンスでボールをカット仕返したり、西野が3ポイントシュートを決めれば、委員長がお返しにとばかりに3ポイントシュートを決める。

 この息つく間もないスピーディーな點數の取り合いこそバスケットボールの魅力だよなと改めて思う。

 こうして客観的に観ても、とても楽しめる。

 バスケって本當に面白いよなと呑気に考えているが、コートの選手たちは楽しめる余裕もないほどに疲労困憊していた。 2人の選手を除いて。

 委員長と西野のセットプレーからの疑似1on1(ワンオンワン)では、フェイントやテクニックを駆使して相手を抜きあっているが、ほぼ両者互角の戦いをしていた。

 2人とも間違いなく疲労しているはずなのだが、その顔は薄っすらと笑顔が見られ、どこか楽しそうにも見える。

 「さあ! 前半戦も殘り僅か! 神無月學園が若干リードしているが、點數はほぼ互角、このまま神無月學園のリードで前半戦が終了してしまうのか!? それとも六花大付屬が追い上げを見せるのかぁ~!? あ~ッと、ここでブザーです。 前半戦終了~!」

 點數は六花大付屬が48、神無月學園が51、點差は僅か3ポイントしかない。 本當にいい勝負をしていた。

「アナタ、なかなかやるじゃない。 まさかここまでやれるとは思ってなかったわ」「西野さんこそ、いいきをするわね。 何回か抜かれてしまったわ」

「とにかく、アナタにだけは絶対に負けないから!」「それはこちらのセリフよ」

  委員長と西野がコートで火花を散らしていたが、どこか互いの実力を認め合っていたようなじもする。

「うんうん、青春だね~。 やっぱバスケはこうでないと」 

 自然と俺もテンションが上がって來ているようだ。

「…よくそんな呑気なことを言ってられるよ、元はと言えば勇志くんのせいでしょーに」

「ん? なんか言ったか?」「なんでもなーい」

 なんか今義也が失禮なことを言っていたような気がするが、今は気分がいいから全く気にならない。

 ふと六花大付屬高校のベンチを見ると、ベンチに戻った委員長に花沢さんがタオルやら飲みやらを出して団扇で扇いでいた。

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