《マルチな才能を発揮してますが、顔出しはNGで》顔出しNGの事があるのです 14

「いやいや、だから解説者の席に座ってたけど、ほとんど解説してなかったって言ってるでしょ!?」

 試合が終わると、この練習試合を放送部が撮影していたらしく、最後に解説者のコメントがしいということで俺のところへカメラを引き下げてやって來られていた。

「でもね~、放送の締めにビシッと解説者の言葉がほしいんですよ! お願いします」

 そんなに頭を下げられたら、なんか言わないと申し訳なく思っちゃうでしょ。

「わかったよ、このカメラに向かって言えばいいんだな」「はいッ! お願いします。 それではいきまーす、3・2・1 」

「えー、只今の試合はですね、六花大付屬高校の連攜とディフェンスの粘り強さが勝利へと繋がる鍵だったと思います。  後半からディフェンスをゾーンディフェンスに変えて、特に突破力のある選手をチーム全員で抑えるような形にできたのが素晴らしかったです。 神無月學園の怒濤の攻撃を抑えつつ、ポイントを奪うのは簡単ではなかったはずです。まさしくチーム全で勝ち取った勝利だと思います」

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「以上、解説の月勇志さんでした… はい、カット!!」

「ふぅ~、張したー」「いやぁ~! 月くん!良かったよ~、完璧な解説だったよ、ありがとう! また機會があったらよろし頼むね」

「もう2度とご免だ」

 はぁ… それにしても、本當にいい試合だったな。 

 委員長も西野もあんなにバスケを楽しんでいて、こっちまで楽しさが伝わってきた。

 そんな試合を見せられたら俺だってプレーしたいと思わないことはないけど、やっぱり俺は見ている側の方がいいなと改めて思う。 だって疲れるじゃん、きが激しいから。

 スケットするならコーチとか監督とかの方が良かったかなとまで思い始めてきた。

 さて、次は新人戦か。

 コートでは1年生たちがアップを始めていた。 花沢さんも同じくコートでアップを始めているが、何処となく前とし違って見える。

 し吹っ切れたのかな、今の試合でバスケの楽しさが何かわかったんだろう。 後はもう自分で験するだけだ。

 「ゆ~ぅしッ!」 

 後ろから肩を叩かれて、振り返ると試合を終えたばかりの西野が立っていた。 

「おう、西野お疲れさん」「試合、負けちゃった」

「だけど、いい試合だったな。 最初から最後まで興しっぱなしだったよ!」「え…? それって私を見て…?」

「え? まあ西野を見てだけど?」「きゃーッ!!! もう!急に変なこと言わないでよバカッ!!」

 なんか西野が顔を赤くしてクネクネしてるが変なこと言ったか?

月くんがそうやって思わせ振りなことを言うから、莉奈が勘違いしてしまうのよ?」

 西野の後方からゆっくりとこちらに向かって歩いてきた委員長が開口1番に俺に文句を言う。

「お、委員長お疲れさん。 思わせ振りって?」「はあ… もういいわ、気にしないで」

 大きくため息をついた後、最初から諦めていたように話を終わらせる。

「あら? 時雨、部長の貴がここにいて大丈夫なの?」

 委員長の登場に、西野が一歩下がって3人で向き合うような形になり、委員長に上半を向けながら問いかけた。

「ええ、大まかな指示は出してきたし、試合中は自分たちで考えて行するように言ってあるから」

 へぇ、まずは自分たちの力で戦ってみろってことか。 俺も最初の試合はそうやって自分たちだけで考えて試合したなと思い出す。

 ろくに連攜も取れず、個々の能力のみで挑んだ試合に勝ち目なんかあるわけもなく、コテンパンに打ちのめされたのは今ではいい思い出かな。

「それより委員長も西野も、お互い名前で呼び合って、いつそんなに仲良くなったんだ?」

 俺の記憶が正しければ、2人とも試合前は訳わからんことで言い合いしてたような気がするが、激闘の末に和解でもしたのだろうか?

 昨日の敵は今日の友ってやつか? の子にもそういうことがあるのかね…

 俺の言葉をけて2人はお互いの顔を見合わせてクスッと笑う。

「仲良くなったのかどうかはわからないけど、お互い相手が、鈍でスケベで、その気もないくせにの子をどんどん誑かしていく悪いやつだから、苦労するねって意気投合したの」

「そいつ最低なヤツだなー!」

 意味ありげに笑いながら西野が説明してくれたが、そんなことで仲良くなれるものなかね。

 それにしても、2人でそんな悪いヤツの相手をしていたなんて初耳だな。 もし俺がそいつに會うようなことがあれば、バシッと言ってやらねばな。

 「こりゃダメね」「ええ、どうしようもないわね」

「へ?」

「なんでもなーい」「月くん、そろそろ新人戦始まるわよ」

「おっと、もう始まるか。 花沢さんはスタートメンバーなんだよな?」

「ええ、もちろん。 男子相手は別として花沢さんは1年生の中でなら、飛び抜けてセンスあるもの」

 確かに花沢さんはれ方や足の使い方、作のひとつひとつが委員長とそっくりだ。

 間違いなく委員長を手本にして、がにじむような努力をしてきたんだろうなとわかる。  けど、花沢さんは委員長じゃない。 

 どうしても長やのつくりが違うため、プレーにも影響が出てしまう。

 委員長は足が長く、の線が細い。 それによってしなやかなきが出來るのだが、花沢さんはそうもいかない。 

 長が委員長よりも低く、足の長さも平均くらいだから、同じきをしてもやはり差が出てしまう。

 まあそれはいずれ花沢さん自が気付くだろう。 それよりも今はもっと本的な問題がある。

 バスケを楽しめるか、だ…

 バスケは1人ではできない、5人揃って初めて出來るスポーツだ。 個人プレーだけで勝てるほど甘いものではない。

 だからこそ、チームのメンバーとのチームワークが不可欠だ。 

 そして、俺が考えるバスケの極意はチームメンバーへの無條件の“信頼”だと思う。

 それこそがバスケの醍醐味であり、楽しさの訣だ。

 花沢さんが男が苦手なのは委員長から聞いた。 けど花沢さんがバスケの楽しさを自分のものにしたとき、他人との付き合い方がしは変わるんじゃないかと勝手に思っている。

 いや、違うな…

 変わってほしいと願っている。 

 まず相手を信頼しなければ良質な人間関係を築くことは出來ないと、どっかの誰か偉い人が言っていたような気がする。

 「花沢さん、頑張って…」

 俺は誰にも聞こえないほどの大きさで花沢にエールを送った。

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