「もう！ また神無月がメンバー代」「これじゃあ月先輩たちの力が持ちません… 」

「それが神無月學園の作戦のようね」「そんな… お兄ちゃん…. 」

 後半戦にり、時間が経つにつれて月くんや、コートにいるメンバー全員の表が険しくなっていく。

 確かに相手チームの弱點をつくのはセオリー通りだし、卑怯でもなんでもない。 けれど…

「いくらでも、こういうやり方は私は嫌いだわ」「莉奈さん！ 來てたんですか！？」

 私の気持ちを代弁するように西野莉奈がの作戦に苦言する。

 まだ先の試合で火照ったままので男子の試合を見に來たようね。

「莉奈、試合はどうだったの？」「楽勝よ！ それより男子は隨分と接戦してるのね、六花大の男子がここまで強いなんて聞いてなかったわよ？」

  子の方は一足早く決著がついて試合が終わったようね。

 そして、莉奈の言う通り、弱小校の六花大付屬が格上の神無月學園にここまで互角の試合をしているなんて、誰が見ても驚くでしょうね。

「月くんがスケットにってくれたのが大きいわ。彼がいなかったらここまでの試合はできなかったもの」

「何よアイツ… あんなにバスケが出來るなんて聞いてないわよ！ ちょっとカッコいいじゃない… 」

「も～、莉奈さん素直じゃないんだから～！ 今日のお兄ちゃん超カッコいいからライバルがいっぱい増えちゃうかもしれないよ～？」

 「ちょっとッ！ ちゃん！？聲が大きい！！」

 誰だって一目見れば莉奈が月くんのことが好きだってわかるけれど、妹のさんにまで知られているなんて、先が思いやられるわね…

「ふーん、莉奈？ もしかして勇志のこと好きなの？」

 歩が莉奈とさんのやり取りを聞いていたようで、莉奈に詰め寄りながらストレートに問いかける。

「べべべべ別に！？ すす好きじゃないわよ！ なんで私があんなやつ好きにならなきゃいけにゃいのよ！ 」

 莉奈、必死に否定してるけれど噛んでるし、そんなに慌ててたら認めているようなものよ…

「ふーん、そう？ ならくれぐれも勇志に手を出したりしないでね？」

 そんな莉奈の気持ちをわかっていて、あえて否定せず利用しようとする歩はお世辭にも良い格をしているとは言えないわね。

 歩は月くんの事となると格が変わったように豹変するから困るわ。

「なんで歩にそんなこと言われなきゃならないのよ！？」

 さすがに莉奈も、好きな男のこととなると引き下がれないみたいで無謀にも歩に食ってかかっていく。

「私は勇志の馴染ですから！？ 勇志が過ちを犯さないように気をつけているんです〜！、」

「何それ！？ じゃあ歩は勇志のこと好きでもなんでもないのよね！？」「ええッ！？ そ、そうだけど！？」

「だったら別に勇志が過ちを犯そうが勇志の勝手でしょ！？ それに勇志にだったら私、過ちを犯されてもいいもん！！」

「サラッとなに変なこと言ってんのよ！？アンタは！！」

 一歩も引かない攻防がこの客席でも行われている。恥ずかしいから他所でやってくれないかしら？

「罪な男だね～、お兄ちゃん」「先輩たち喧嘩はやめてください～」

 花沢さんが間にってなだめようとしてくれているけど、一向に収まる気配がない。

 はぁ… 全く世話が焼けるんだから…

 「その月くんがコートの中で頑張ってるんだから、喧嘩してないで応援してあげたら？」「「はい、ごめんなさい」」

「そろそろ3回目のタイムアウトが終わるわ」

 私の言葉をけて全員が席に著きコートの中に視線を戻す。男子たちは円陣を崩し、それぞれがコートの中へと戻っていくところだった。

「月先輩… 頑張って… 」

 隣に座る花沢さんが、顔の前で祈るように手を組み月くんにエールを送っている。そんな花沢さんの手の上に自分の手を重ねて、笑顔を向けて頷いて見せた。

 結局、村嶋くんから言われた賭けのことを月くんに話さなかった。もし話してしまったら余計な心配をかけるし、何より月くんが純粋に試合を楽しめないと思ったから。

 それにそんなことをしなくても…

「大丈夫よ花沢さん、月くんなら必ず勝つわ」「… はいッ！」

 殘り90秒、8點差。

 六花大がゾーンディフェンスを始めてから、あっという間に點差がまる。

 そして月くんがレイアップでシュートを決めて6點差になった瞬間…

「危ない！！」「勇志！？」

 シュートを決めた月くんが著地をする瞬間に、相手選手が背後からタックルして吹き飛ぶように壁に激突してしまう。

「私、行ってくる！」「私も！！」

 言葉を発するよりも速く歩とさんが駆け出して月くんの元へ向かう。

「慎のやつ、今のはどう考えてもわざとじゃないの！」「ひどい… 」

 そんな… これは…

 私はまるで中學の全國大會の決勝戦の景をそのまま見ているような錯覚に陥ってしまった。

 月くんはあれ以來、バスケをしなくなった。

 そして今日、また同じようにファールをけて苦しむ月くんの姿が嫌でもその景を思い起こさせる。

 せっかくまた月くんのプレーを見る事ができたのに、一緒にプレーをする事ができたのに！ どうしてまたこうなってしまうの！？

「ーー 長… 部長！ 大丈夫ですか！？」「え？ ええ、大丈夫よ」

  花沢さんに聲を掛けられて落ち著きを取り戻すと、すぐにコートに視線を戻す。

 試合は止められ、審判が小畑くんと何やら話しをしている姿が見える。 おそらく審判は小畑くんに代を勧めているのでしょう。

 ここから見える限りでは月くんの狀態はかなり酷そうで、すごく痛がっているのが分かる。それでも尚、月くんは試合に戻ろうと懸命に立ち上がろうとしているところだった。

「花沢さん！ 子の荷からコールドスプレーを持ってきて！」「はッ、はい！！」

 私も急いでその場を離れ、水道の水でタオルを濡らして月くんの元へと向かった。

 月くんにこれ以上無理をさせられない！

 きっと中學の全國大會の決勝戦だって、チームと全校生徒の期待を一に背負って試合に臨んだに違いない。

 そして、怪我さえしなかったら勝てていた試合だったからこそ、自分のせいで負けたと思い込んでいるに違いない。

 彼はそれ程までに優しい人だから…

 今だって月くんは無理してでも試合に戻ろうとしているに違いないわ！

 私はもっと月くんのプレーを見ていたいけど、私が見たいのは怪我をした腳を引きずってまでプレーする月くんの姿じゃない！

 必ず月くんを止めるという想いをに、私は髪がれることも気にせず、月くんの元へ走っていった。