《マルチな才能を発揮してますが、顔出しはNGで》顔出しNGで新曲作ります 4

「えっと… 俺に拒否権はありますか?」

「ありません、何が何でもマリーさんのご機嫌を取って來なさい!これは社長命令です!」「かしこまりましたー!」

 《Godly Place》のリードギターの翔ちゃんの提案で、誰でも聴きやすいヘビメタをコンセプトに新曲を作るのを手伝っていたのだが、水戸さんに呼び出され開口一番言われたのは…だと

「ユウくんは次の日曜日までスターエッグプロダクションのヘルプで呼ばれたから、今すぐ行って來なさい!」

だった。

 なんでも《kira☆kira》のギタリストが急遽退社したため、臨時で代わりのギタリストを探しているということだった。

 俺でなきゃダメなのかと聞いたところ、先方はガップレのユウを名指しで指名したそうで、水戸さんは二つ返事で了承したらしい。

 しかも、時間がないためにスターエッグプロダクションに泊まり込みで練習しないと間に合わないんだと。

 飛んだ厄介ごとを引きけたものだ。

 1度家に帰り荷をまとめた後、またすぐに家を出てスターエッグプロダクションに向かう。

 以前から曲作りのために何度も足を運んでいるため、電車の乗り換えの最短ルートもばっちし頭にっていた。

 最初はあまりにもスケールがでか過ぎて、別世界のように思っていたスターエッグプロダクションだが、何回も來るうちに大分慣れてしまっている自分がいた。慣れって怖いね。

 付のお姉さんに取り次いでもらい、エントランスのソファー座らせていただいていると、5分もしないうちにドタバタと足音が聞こえてきた。

 どうやらお迎えが來たようだ。

「ユウさん! お待たせしてごめんなさい!!」「いやいや全然待ってないよ、俺の方こそキアラを急がせたみたいでごめんね」

「いえ! 全然全然、大丈夫です!!」

 毎回こうして俺が到著すると、キアラがいつも走って迎えに來てくれる。

 すごくありがたいのだけど、同時に申し訳ないと思ってしまうんだよな〜。

 何と言っても天下の《kira☆kira》のキアラ様なのですから、もうし上から目線でを言ってくれても全然構わないのだが、この他人想いの優しい格が多くのファンを惹きつけているのだろう。

 かく言う俺も陣に正座させられて、ボロカス言われてたのを庇ってもらった時からファンになりました。

 今度、でも連れて《kira☆kira》のコンサートに行こうかな。

 いやいや、その前に俺が《kira☆kira》のコンサートに出るのか。なんか想像出來ないが、《kira☆kira》の名前に泥を塗るようなことがないように頑張ろう!

 もしそんなことがあったら、間違いなく水戸さんにぶっ飛ばされるしな… 

「あの、ユウさん大丈夫ですか? お面越しであまりよく分かりませんが、あまり元気がないような気がします」「え!? 大丈夫大丈夫、ちょっと考え事しててね、 あははははッ」

「そうですか… 私と居ても楽しくないですよね… 」

 え? 何、どうしてそんな悲しい顔してるのかな? 俺が話しを聞いてない時に、そんな大切な話しをしてらしたのですか!?

「違う違う! キアラといるとすごく楽しいよ! 今はその… 臨時とはいえ、俺が《kira☆kira》のギタリストとして務まるかなって心配してたんだ… 」

「ユウさん… 今回のこと本當にごめんなさい。私たちの問題にユウさんを巻き込んでしまって、実は私がユウさんをマリーさんにヘルプに來てもらってはどうかと話したんです。ユウさんの負擔になるということなんて考えもせずに、本當にごめんなさいッ!」

 深々と俺に向かって頭を下げるキアラ、俺みたいな用貧乏を1枚買ってくれるなんてありがたいことじゃないか。 むしろ謝しないと…

「ほら頭を上げて、キアラがそこまで俺に期待してくれているなんて思わなかったよ。すごく栄だ、ありがとう!」

「ユウさん… 」「キアラの期待を裏切らないように一杯頑張るね!」

「はいッ!!」

 その後からキアラの顔はいつもの、はち切れんばかりの笑顔に戻った。泣きそうな顔をも可いけど、やっぱりキアラはこの顔が1番素敵だな。

 守りたい、この笑顔。

 そう心に決めた俺は、何としても日曜の《kira☆kira》のコンサートを功させるとキアラの笑顔に誓ったのであった。

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