《マルチな才能を発揮してますが、顔出しはNGで》顔を隠したある休日の話 2

「えぇッ!? 俺がキアラとデートぉ!? 一どういうことですか、マリーさっ… マリー“ちゃん”…!?」

 放課後、珍しくバンド練もなく、歩にも捕まらなかったため、久々にダンガムをしようとゲーセンに寄ったら、見慣れない番號から著信があり出てみると、なんとあのスターエッグプロダクションの社長、『マリーちゃん』だった。

『やーねー! 明日はキアラちゃんの誕生日でしょーぉ? だからユウくんにはキアラちゃんのために一いでもらおうかと思って〜、あ、一って言っても服をぐわけじゃないわよ〜ん。いや、でもいでもらっても全然構わないんだけど、むしろ私のためにいで〜ん! キャー!! ってもう冗談よ〜、冗談〜 』

「いえ、あの… それで何で俺なんですか?」『いやーね〜、あなた達… 今ぎくしゃくしてるでしょ?』

「え、どうして… それを… 」『やーねー、知らないわけないでしょ〜ん。これでも社長なのよー? うちの大事なキアラちゃんに群がる蟲のことくらいお見通しよーん』

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 まさか… 學園祭での告白のこととか、全部お見通しということなのでしょうか…?

「へ、へぇー… 蟲ですか…?」『そう! 最近特に多くてね〜… 困るわ〜』

「その蟲はどうなってしまうのでしょうか…?」『もちろん、全力で叩き潰してるわ!』「ひぃッ!!?」

『でも、大丈夫よーん! ユウくんだったら、キアラちゃんに貰ってあげてもいいわよん?』「あ、俺… 婿前提なんですね… って、そうじゃなーい!」

 思わず電話越しに大聲を上げてしまい、周りの人に迷になっていないかとあたりを確認する。

『もう冗談だってばー』「ふぅ… ならいいですけど… 」

『実のところ、最近キアラちゃんの元気がないのよ… だから、ユウくんに勵ましてもらいたくてね… 』「俺なんかじゃキアラに元気出させられないと思いますけど…」

『あら? そんなことないわよー!? 分かってるくせに〜 とにかく、明日キアラちゃんを頼むわね! 後で詳細はメールするから、それじゃあね〜ん』「あ! ちょっと!!? 切れた… 」

 やっぱりあの時…

『…勝手なことばかり言ってごめんなさい… でも私はユウさんのことが大好きです。これからもっとたくさんユウさんのことを知って、それも含めて全部、ユウさんのことを好きになりたいです』

『ユウさんが私のことを何とも思っていないのは知っています。けど、いつかユウさんが私のことを好きになってくれるように私… 頑張りますッ!』

 あんなことがあったからかな…

 まさかキアラから告白されるなんて、夢にも思ってなかったからな。

 あれから毎日來ていたメールや電話も來なくなり、結局何も話せていない。

 俺の方から連絡することも考えたけど、なんとなくキアラのことを意識してしまって、結局連絡出來ずにいた。

 「… そりゃあ、キアラの方が俺よりもずっと連絡し難いだろうな… 」

 攜帯を見つめながら、ふと獨り言が溢れる。

『好きな人に自分の想いを伝えることって凄く覚悟がいることなんだと思う。きっとそのために何かを犠牲にするくらい』

 キアラとアキラから告白された後、歩に言われた言葉がずっと俺の心に殘っていて、今その言葉がさらに俺のを締め付けているようなじがする。

「おーい勇志、いつまで待たせんだよ! 早くダンガムやろうぜ?」

 一緒にゲーセンに來ていた小畑が、外にいた俺を呼びに來る。小畑にしては珍しく、先にゲームをせずに待ってくれていたらしいが、それよりも大事な用ができてしまった。

「あー… 悪いな小畑、急用がったから今日は帰るわ… また今度頼むわ!」「え〜ッ!? 何だよ! 勇志の方からゲーセンっといてー!」

 ゲーセンと小畑に別れを告げて直ぐに、マリーちゃんからメールが屆き、早速容を確認すると、キアラちゃんに緒で誕生日パーティーを開催するということだった。

 最近、元気が無く落ち込んでいるキアラちゃんを勵ますために、緒で準備を進めて驚かそうという魂膽で、お晝のレッスンの教室を飾り付けるための時間稼ぎが、俺に與えられた役割りとして割り振られている。

 とは言っても、これは飽くまで表向きで、実際のところは俺とキアラのぎくしゃくしている関係を何とかしろということなのだろう。

 さっきの電話でマリーちゃんはそこまで言わなかったけれど、いくら俺でもそれくらいは分かっているつもりだ。

「はぁ… 」

 俺だってこのままキアラとの関係が悪くなってしまうのは嫌だけれど、かといってキアラの気持ちに応えられるだけの覚悟も自信もない… 

 そんなことを考えていたら、あっという間にキアラの誕生日になってしまった。

 そして、俺はいつものお面を被り、スターエッグプロダクションの前に立って、この大き過ぎる建を見上げているのだった。

 毎度のことだが、この大き過ぎる建る前は決まって深呼吸してからでないと最初の一歩を踏み出せない。

 もう結構な回數ここに來ていて、宿泊だってしたことがあるというのに、未だに慣れないのはどうしてだろうか?

 そんなことを考えながら、大理石の床の上を進んでエントランスにると、ちょうどこの位置から見えるソファーの右端の方に、見覚えのあるの子が難しい顔をして下を向いているのが見えた。

 《kira☆kira》といえば、スターエッグプロダクションの1番の稼ぎ頭で、スターの中のスター、世界に輝く1番星だというのに、俺なんかに気を遣って、り口から見える位置のソファーに座って、しかも広いソファーの端の方に座るなんて、キアラは本當に良い子なんだなと笑顔が溢れる。

 まあ、もちろんお面を被っているから、周囲の人たちに「何こいついきなり笑い出して気持ち悪い」と変な目で見られることはない。

 しばらくこうして何か考え事をしているキアラを鑑賞して癒されたいのだが、決められた時間にキアラを誕生日パーティーの會場に連れて行かなければならない。

 俺は眉間にしわを寄せて俯いたキアラに、そっと聲を掛けた。

「あの〜… 」「……… 」

「キアラ?」「……… 」

 どうやらキアラは周りの聲が聞こえないほど何か考え込んでいるようで、全く俺の存在に気付いてくれない。

 仕方なく、俺はキアラの顔を覗き込むようにしてもう一度聲を掛けてみた。

「おーい! キアラ? もしもーし!」「えッ!? あっ、はいッ!! ゆッ、ユウさんッ!?」

 やっと俺に気付いたキアラは、いきなり目の前に俺のお面があったからか、凄く驚いてひっくり返りそうなほどだった。

「大丈夫? なんか難しい顔をしてたけど… 」

「でゃ、大丈夫でひゅ!!」

  數秒、目が泳いだ後にキアラの口から勢いよく飛び出した言葉は、頭と語尾を咬み間違えたとっても可らしい言葉だった。

「ふッ、あははははッ!」「もっ、もう! 笑わないでください! いきなり聲を掛けられて驚いただけなんですからね! 」

 咬み間違えたキアラも、笑われてむくれるキアラもどちらも可くて、もうし揶揄いたいところだが、これ以上はキアラが可哀想なのでやめておこう。

「いや、ごめんごめん…  それじゃあ早速だけど行こうか….?」「ちょっと待ってくださいッ!」

 早速ショップエリアに向かおうとした俺の腕をキアラが引っ張り、の位置をれ替えるように前に出てきて、今にも泣きそうな顔をして俺の顔を見上げてくる。

「その… どうしてユウさんがここにいるんですか?  それに私と一緒に行くって… 私、ここで待っていること以外は何も聞いてなくて… 」

 そう言って俯くキアラは、學園祭の時、俺に告白をした後のキアラと同じ雰囲気がして、すごくキアラに悪いことをしている気分になってくる。

「えーっとね… 俺も詳しいことは言えな… 知らないんだけど… まあとにかく! これからキアラは俺とデートをします!」

「えぇーッ!!??」

 キアラのこんなに驚いた顔、初めて見たな…

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