《過去に戻り青春を謳歌することは可能だろうか》2話 過去に戻った

「どういうことだよ」

俺はどうやら過去に戻ったのだ。

手に持ったカレーパンを見て食べる前にそう呟いた。

橫を見ると膝の上にパソコンを乗せ腹の蟲を鳴らしたことに顔をし赤くしている可憐がいた。

中庭にある時計をちらっと見ると今はお晝休みの時間だった。理解が追いつかない。だが、間違いなく分かることは過去に戻ったということだけだ。

「あ、あの!」

パニックということが手伝ってし聲が大きくなってしまった。気づけばも前のめりになっている。

可憐は俺の聲に反応して肩をビクッとさせ驚いた様子で俺のことを見た。

「す、すみません」

を元の勢に戻し頭を下げた。

「い、いえ、それでなに?」

「あの、この景何回目ですか?俺は2回目なんですが」

早口で喋った俺を見て可憐は首を傾げる。

「え?私は中庭のこのベンチに座るのすら初めてよ?」

「そうですか」

「うん」

可憐はこちらを見て眉を寄せている、その表から何も知らないことと変な人だと思われているということが読み取れた。

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どうやら過去に戻っているのは俺だけらしい、一何がどうなっているのだろうか、まだ寒い気候だが俺の背中には汗が噴き出していた。冷や汗だろう。だが焦っても仕方ない、ここは落ち著かなければ

ふぅ、と深呼吸をしてし落ち著く。

「グゥ〜」

可憐が再び腹を鳴らした。

「そっか、朝から食ってないんだもんな」

學校の有名人と2回目の會話だ、1回目の會話の容は鮮明に覚えている、だから不意にそんなことを言ってしまった。

「え?なんで?」

「あ、いえ、それよりこれあげます」

誤魔化すように手に持っていたカレーパンを可憐に差し出す。

「それ、あなたのでしょ、大丈夫よ」

問いかけは違えど帰ってくる返事は1回目と変わらない。

「いや、今食無いんで」

「ならなんで買ったのよ」

當たり前の返答が帰って來た、しかしそれは事実だ、今起こっているこの現狀に頭が混して食というが上書きされたように無くなっていた。

「なんか急に無くなりました」

「なによそれ」

「てことでどーぞ」

「あ、ありがとう」

可憐は諦めたように差し出したカレーパンをけ取り封を開け口に運び咀嚼そしゃくした後「おいしい」とし笑顔で呟いた。1回目にこの笑顔にドキッとした、2回目の笑顔は1回目と何も変わらない笑顔だが再びドキッとしてしまう。

1回目は半分こにしたが2回目は一つ丸々あげた。

5時間目開始5分前の予鈴が鳴り

「君、名前は?」

「俺は、2年5組の町直斗まちなおとです」

「私は、3年1組の夏ノ可憐なつのかれんよ」

2回目の自己紹介だった。

帰りのホームルームが終わった。その中で擔任が遅刻が多いだの何だの言っていたいたが2回目だったので一ミリも聞かなかった。そして話が終わった瞬間に教室から駆け足で昇降口に向かう。一階に降りると可憐が下駄箱から茶がかったロファーを取り出し上履きから履き替えて駐場に向かおうとしている。

その姿を後ろから追って行く。

途中で可憐は左手に持っていた鞄を開け紙がったクリアファイルを取り出した。文化祭関係の書類だと思う、駐場にいたのもショートカットしてグラウンドに向かうためだろう。そしてそこで活する部活に何か渉しに行ったのだろう。

可憐がクリアファイルを取り出した瞬間同時に鞄から鍵が溢れ駐場に1番近い用水路の網の中にって行った。確か網の名所は“グレーチング”だった気がする。

「それは見つからんわ」

ボソッと呟く。

俺はすぐさまグレーチングに手をかけ持ち上げた。

目の前では鞄をもう一度開き何か取り出そうとしてもう一つのクリアファイルを取り出した可憐が自分の家の鍵がないことに気がついていた。

「あれ、どこかで落としちゃったのかしら」

困った顔をしている。

そして俺は鍵を手に取り可憐のところに向かった。

「會長さん、はい、落としましたよ」

掌に鍵をのせて差し出す。

「君はさっきの」

「はい、さっきのです」

「ありがと直斗くん」

「落としものには気をつけてくださいね會長さん」

「ええ、そうするわ、ありがとう」

「いえいえ」

「今日初めて話した人に2回も“ありがとう”なんて言うと思っていなかったわ」

ニコリと笑ったその顔に俺はまたもや心を躍らせてしまった。まあ、俺はもう3回くらい聞いてるんですけどね、という言葉は飲み込んだ。

「俺も初めて話す人さんに“ありがとう”なんて言われると思いませんでした」

「口説いてるの?」

悪戯っぽく上目遣いで一歩近づいてくる。

「口説いてますね」

「ふふっ、ストレートに言うのね」

口元に手を當て微笑みを浮かべている。本當に人だ。

「それじゃあね」

「はい、それじゃ」

そう言って可憐は校庭の方に踵を返し歩き始めた。數歩歩いた可憐は再び踵を返し長い黒髪を耳にかけながら「さようなら」と言った。

その一連の作に俺は釘付けになっていた。はっと我に帰り「さようなら」と返し自転車にまたがった。

一度著替えるために家に帰ると小さくて黒いモコモコの生が駆け出して來た。

「わん!わん!」

「おう、めるちゃんただいま」

「わん!わん!」

「ごめんなー、今日はこれからバイトだからご飯あげたらすぐ行かなくちゃなんだ」

犬をでながらそう語りかける。本當に癒される。

「クゥ〜ン」

悲しそうな眼差しを向けてきた。しかしバイトに遅れるわけにはいかないのでめるちゃんのご飯を作り著替え家を出た。

バイト先は近くの家電量販店だ勤務時間は17時〜21時の4時間だ。

俺が過去に戻った16時52分はもう3分前のこと、もしかしたらその時間を境にまた過去に戻るのかとヒヤヒヤしたが何も起こらなかった。そしていつも通り仕事を終えし殘業をして21時20分に店を出た。

「帰りにコンビニでも行くか」

もう時間は遅い、今から自炊をしたとしてもかなりの時間がかかってしまうのでバイト終わりはいつもコンビニに寄ることにしている。

コンビニに向かう途中に公園を通る、いつもはスルーするのだが今日はし気になってしまう。理由は今朝の夢にその公園が出てきたからだ。

夢の容を思い返そうとすると頭の中に靄もやがかかり鮮明に思い出すことはできない。夢の容を鮮明に思い出せないのは別に珍しいことではない。むしろ當たり前のことだ。だが、何故かその夢を思い出したくて俺は公園にって行った。

公園にり夢の中で俺が座っていたであろうブランコに向かった。その場に行けばしは思い出すのではないかと思ったのだ。

ブランコの近くまでやってきて俺は気づいた。誰か座っている。

俺は目が悪い、中3の験期間に悪くしたのだ、多分勉強が原因だ。だってゲームとかしてなかったから。だから公園にる前は誰かが座っていることに気づかなかったのだ。

正直言ってめっちゃ怖い。

薄暗い街頭に照らされて誰か座っている。もう怖すぎる。

帰ろうと思ったがよく見てみるとどこかで見たことがあるような気がした。

目を細め見るとそこに座っていたのは夏ノ可憐だった。

は泣いていた。

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