《過去に戻り青春を謳歌することは可能だろうか》3話 彼を保護した
ブランコに座っている可憐は泣いていた。鼻をすんとならし下を俯いて。
ブランコの目の前まで俺は近づき可憐にかける言葉を探した。
「あのー」
可憐は俯いていた顔を上げた。
街頭に照らされたその泣き顔は本當に儚く、いつかいなくなってしまうのではないかと思った。
「直斗くん、どうしてここに?」
目元の涙をぬぐいながら出たその聲音は震えていた。
「バイト帰りにコンビニ寄ろうと思って、てか會長さんこそどうしたんすか?」
「別に何でもない」
「何でもないわけないでしょ」
橫のブランコに俺は腰をかけた。
「コンビニ行くんじゃないの?」
「さすがに今は行けないっすよ」
「どうして?」
「泣いてる人がいるから」
「それだけ?」
もう涙は流していない、淡々と質問を投げかけてきた。
「會長さんが人だから」
「何それ、口説いてるの?」
ふふっとし笑顔を取り戻した、しかし、學校で見た笑顔とはまるで違っていてどこか居心地が悪い。
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「ま、そんなもんですよ、で、本當にどうしたんすか?」
「直斗くんは理由聞くまで帰らないつもり?」
「はい、そのつもりです」
さすがに泣いてる知り合いを無視して帰るのは罪悪がこびりつく。
可憐はため息を吐き口を開いた。
「家出したのよ」
「なんで?」
「親と喧嘩したのよ」
家庭の事か。
家庭の事となれば迂闊にズケズケと聞くことはできない。それは俺の家庭事も複雑だからだ。その事を聞かれて答えたくないわけではない。答え方がわからないのだ。可憐の家庭にはどんな事があるのかは全く分からない。俺は頭の中で中學3年生の頃の自分の家庭を思い出してしまった。そのためか、それ以上俺は可憐の家庭事については聞かなかった。
「ねえ會長さん、今日一日どうやって過ごすの?」
「そうね、どうしよ」
「漫畫喫茶とか近場にありますよ?」
「財布も全部置いてきたのよ」
見ると可憐の近くには何も鞄らしきものもなくすぐに本當に全て置いてきたのだろうと確信した。
「ちなみにメシは?」
「食べてない」
「カレーパン以降?」
「うん」
返事がだんだんと小さくなっていった。
「グゥ〜」
さっきの返事より大きいのではないかと思うほどの音量の音が橫から聞こえた。
俺はため息を吐いて口を開いた。
「あの、家來ます?」
「は?」
すごい、何そのお顔、こわいっ。
「年頃の男の子の家になんて行けっこない。」
「じゃあどうやって今日を乗り切るの?」
「それは…」
「メシ俺まだ食ってないんで作りますよ」
でも…と可憐は続けたがまた可憐の腹が鳴り顔を赤らめていた。
「何もしない?」
顔を赤くしながらこっちを向き、消えそうな聲音を放った可憐は本當に可かった。何度目だろうか、彼にドキッとするのは。
「しない」
「ほんと?」
「ほんと」
「したら即警察に通報するし生徒會権限を行使してあなたを退學にまで追いやるから」
どんだけ俺は信用ないんだ。まあ今日初めて會ったんだから仕方ないか。
「ご勝手にどうぞ、今頃犬が寂しがっているのでとっとと行きましょう」
「わんちゃん飼ってるの?」
「飼ってません、一緒に暮らしてるんです」
俺がを張って言うと、可憐はふふっと笑って「親バカね」と付け足した。
しいつもの笑顔に戻った気がする。
「私わんちゃん大好き」
「多分俺以外に懐きませんよ」
「それはどうかしら」とまたし笑った。
「會長さん何食べたい?」
ブランコから腰を上げた。可憐も腰を上げながら口を開き意外な言葉を放った。
「ねえ、その“會長さん”って呼び方やめて」
未だにブランコに座ったままの可憐はすこし頬を膨らませていた。
「じゃあ夏ノ先輩?」
「苗字で呼ばれるの好きじゃない」
「周りからはそう呼ばれているでしょ」
「私は嫌なの」
「なら可憐先輩?」
「長い」
「かれんちゃん?」
「うざい」
立っている俺の脛をローファーで軽く小突く、地味に痛いな、と思ったがつぎの呼び方の候補を挙げた。
「可憐さん?」
「うん、合格」
ブランコから立ち上がった可憐の顔は俺の顔に近づき俺の顔が熱くなった。
すぐに俺は顔を背けた。今が暗くて良かったと思った。
「さ、行きましょ」
「うん」
俺と可憐は公園から歩き出した。コンビニに行くのはやめた、作るといった矢先に弁當を買うのはカッコ悪いから。
「本當なんかしたら殺すから」
「どーぞ」
この時間はまるで夢のようで一生俺の記憶に殘るだろう。
頬の筋が緩んだ。
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