《過去に戻り青春を謳歌することは可能だろうか》13話 過去に戻り後悔を拭うことは可能だろうか 7
直斗の言っていたことが本當ならあと2時間弱でおばあちゃんの容態が悪化する。直斗には「信じる」と言ったが本當のところ素直に信じているとは言い難い。というか信じたくない。
「お姉ちゃん、どうかしたの?」
「あ、いえ、何でもない」
私は暫しばらく考え事をしていた。その様子は傍目はためから見たらぼーっとしているように見えたのだろう、遙希はるきが聲をかけてくれたおかげで意識を今に集中させることができた。
「可憐は人になったわね」
ニコリと微笑んでおばあちゃんは私に語りかけた。毎回會うたびにおばあちゃんは私のことを褒めてくれた。小さい頃からずっと。
「おばあちゃんの孫ですもの、當たり前じゃない」
「それもそうね」
ベットの上でニコニコと元気そうにしているおばあちゃんを見るとこれから起こることがどうも信じれない。
まだ関わり始めてから2日しか経っていない男子が私をからかうために付いた噓。そう思いたいけれど、そうは思えない。
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だって直斗は屋上で私のおばあちゃんが院している病院を言った。誰にも話していないのに。
そしてそのあと脳にフラッシュバックされたあの風景。
私が泣いていて、直斗がぶ。直斗の部屋だったと思う。
「可憐」
「なに?おばあちゃん」
また意識が思考にシフトチェンジしていたが、おばあちゃんの呼びかけで脳みそを切り替える。
「彼氏はできた?」
「いないわよ」
「あら、そうなの?ならさっきの男の子は?なかなかイケメンだったじゃないの」
「な、直斗とは何にもないしそうゆう関係にもならないから!」
悪戯いたずらっぽく笑いながらおばあちゃんは私をからかい、それに対して両手を振り全力での潔白を主張する。
「お姉ちゃんはもっといい人と付き合うわよ、あの男は良くないから付き合わないの」
「そうかしら?優しそうだったけれど」
「は?どこが?おばあちゃん騙されちゃダメだよ!」
「そうかい、てっきり遙希はるきも好意を抱いだいているかと…」
「抱いだいてないから!」
私は2人のやりとりを見て苦笑するものの2人のやりとりは微笑ましく心の中では暖かい気持ちになっていた。
話の容に出されている直斗には心で謝っておくことにしておく。
今頃クシャミでもしているかもしれないとし頬が緩む。
「安心して母さん、可憐の彼氏はこの目でチェックをれて、いい男と付き合わせるから」
お母さんは右手の拳を握りの高さまで持ってきて自信満々な仕草をしている。
その橫でお父さんはニコニコしている。
「さて、そろそろ9時だから一旦ホテルに向かうか」
お父さんがパイプ椅子から立ち上がり上著のジャケットを羽織りながらそう言った。
ダメだ。おばあちゃんと離れてはいけない。
「お、お父さん、もうしいてもいいんかな」
私はお父さんに懇願こんがんの眼差しを向ける。
「その気持ちは分かるけれど、消燈時間が21時なんだよ」
時刻は20時56分、普通ならばお見舞いなんてできない。病院の人もさっきからちょくちょく部屋を覗きに來ている。
「だけど…一緒にいたい…」
理由の話し方が分からない。言葉の尾ひれは小さく、自信の無いものになってしまった。
「あら可憐ったら、私のことそんなに好きだったかしら?嬉しいわね」
「うん、好きだよ、大好き」
気づくと私は涙を流していた。
小さい頃…小學生だった頃のことを思い出す。
んなことがあって疲れていた私に、おばあちゃんはんな手料理を振舞ってくれた。畑で採れた野菜で作ったじゃが。野菜炒め。胡麻和え。生姜焼き。そして年齢には似合わないフレンチ料理っぽいものも何度も作ってくれた。
おばあちゃんの手料理はいつも私を元気付けた
おばあちゃんに何度“ありがとう”と言ったことか。その度におばあちゃんは
「おじいちゃんが亡くなって寂しかったけど可憐や遙希のおかげでおばあちゃんはいつもパワーをもらっているんだよ。おばあちゃんは可憐や遙希に返しても返しきれないほど沢山のものを貰っているよ。ありがとう。」
そう言った。
そして今も、その言葉を私に投げかけた。
「うぅ…うっうぅ…」
私はおばあちゃんに抱きつき嗚咽おえつ混じりの聲を出している。
おばあちゃんの病院服は私の涙で濡れた。
お父さんが戻ってきた。
「可憐、騒がしくしなければ居てもいいって、個室だからって特別に許可を貰ったよ」
「ほんと?」
「ああ、本當だよ」
泣いている私を見てお父さんは看護婦に渉をしてくれた。
お母さんやお父さん、遙希は私が泣いた理由と殘りたいと言った理由を聞いてきたりはしなかった。
ただ、私が家族でここに居たい、ということは皆んなにひしひしと伝わったのだろう。
家族で各々の近況報告について談笑をし盛り上がった。許可は出ているものの“靜かにする”というのが條件なのであまり騒がしくはしていなかったと思う。
その楽しさに何故家出をしているのだろうと思ってしまう。
理由は、お父さんとお母さんの喧嘩だ。おそらくまだ続いている。というかずっと続いている。けれど今だけはそんなの皆んな忘れて話すことに集中して今の時間を大切にしている。
22時50分
遙希は眠ってしまった。椅子に座ったまま。個室には落ち著いた空気が流れていた。
「うっ…」
橫になっていたおばあちゃんが苦しそうなうめき聲を出す。
「ん?」
最初に気づいたのはお父さんだった。
直斗の言っていたことは本當だった。
「か、母さん!」
お母さんがパイプ椅子から立ち上がりそのガチャッという音で遙希が目を覚ます。
「だ、大丈夫ですか!お母さん!」
次にお父さんが立ち上がる。
「な、なに?」
遙希はまだ狀況を把握できていない様子だ。
分かってた。
けれど何をしていいのか分からない。
は立ち上がったものの直したまんまだ。
頭の中で混が渦巻く。
23時ちょうど。
おばあちゃんは醫者に運ばれて病室を後にした。
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