《過去に戻り青春を謳歌することは可能だろうか》18話 過去に戻り後悔を拭うことは可能だろうか 12
保健室のベットからを起こし、大きな欠あくびをする。
橫には茶髪っぽいの髪を窓からってくる風になびかせている。
高春 菜月たかはる なつきが「よかった」とをで下ろす。
時刻は13時24分
倒れて4時間ほど眠っていた。
脳はし回復したが、睡眠負債ふさいを貯めに貯めていたため、まだぼーっとしてしまう。
「部活は?」
「もう、とっくに終わってます」
「あーまーそうか、先生は?」
「保健室の先生は30分くらい前にどっか行っちゃいました」
「そうか」
「あの…」
「ん?」
ベットの橫の椅子に座っている菜月なつきは下を俯き、どこか居心地が悪そうな様子だ。
「お、お久しぶりです…」
「ああ。久しぶりだね」
俺と菜月は中學校が同じで部活の関係上何回か話したことがある。
「よかった…私のこと覚えてくれてた」
菜月は安堵あんどの聲を吐とろしてさっきよりも肩の位置を低くした。
「高春たかはるさんのこと、ちゃんと覚えているよ」
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俺はそんな菜月を見て笑みをこぼしながらそう言った。
「それと…私の呼びかた」
「ん?“高春さん”ってやつ?」
「そうです、それ変えましょうよ」
「なんて呼んでしいの?」
菜月は顔を赤く染めて
「下の名前で呼んでください…」
「分かった、菜月」
「……」
さっきよりも顔を赤くしている。
その照れた表は小のようで可らしかった。
こいつ、絶対モテる系子だ
「でも、俺をここまで運んでくれてありがと」
「あ、いえ、直斗先輩を運んだのは翔かける先輩ですよ」
「あーなるほどね、あいつにも禮を言わなきゃな」
「真っ先に擔かついでカッコよかったです」
「あいつ本當にイケメンだよな」
「ですね」
翔が俺を運んだとき、育館で部活をしていた子生徒の一何割が惚れたのだろうか。
「もう2時に近いけど菜月なつきは帰らないの?」
「あ、えっと…その…まだ、い…いかな…」
言葉を続けていく菜月は段々と下を俯うつむき言葉のボリュームも俯いていく。
後半いったい何を言っているのかわからなかった。
俺はアニメや漫畫、小説で出てくるような鈍主人公とは違う。むしろ敏な方だと自負している。
だからし容は分かった気がした。
でも本當に聞こえなかったんだからね?実際にこのボリュームで言われたら聞き取れないからね?
「そっか…ありがと」
「どういたしましてです」
そして沈黙が降り注ぐ。
保健室獨特の消毒っぽい匂い。
開いている窓から聞こえる野球部の掛け聲。午後部活はもう既に始まっていた。
その保健室だけが別の世界のように思えてしまう。
ここに菜月がいなければ今頃俺は何をしていたのだろうか。
保健室から出て捜索?
あ、そうだ…俺にはやることがあった…
でも、見つからない…
何もできない…
辛い…本當に辛い…
何故か“寂しい”というが芽生える。
「ねえ、直斗先輩」
「どうした?」
「すごい大変な思いをしてるんですね」
「え?なんで?」
その菜月の言葉は、俺の心を読み取ったかのような意味を含んでいた。
「大変そうな顔をしているからですよ」
「そんな顔に出てたか…まあ、々あってな」
「そうですか…」
その瞬間、髪のに細くて綺麗な指がり込む。
しだけ気恥ずかしい。
頭をでられるなんていつぶりだろうか。
「どうですか…?しは楽になりましたか?」
「あ、ああ…」
楽になったどころではない。
謎の安心と心地よさをじが熱くなる。
「ならよかったです…えっとですね、今直斗先輩が置かれている狀況は分かりませんし聞きません。けれど、そんな顔をされたら何もしないわけにはいかなくなるわけで、だから…これはその…社辭令です!」
「なんだよそれ」
俺は微笑した。
「私は、直斗先輩に中學校の頃出會い、んなことを教えてもらいました。そして助けられました」
「多分それは菜月なつきが可かったからだよ、俺じゃなくても男なら誰でも菜月なつきのことを全力で助けたさ。そんなもんだからね男なんて」
「違います」
「え?」
「直斗先輩しか知らないようなこと沢山沢山教わりました…誰でもなんかじゃないですよ、直斗先輩はすごく優しいんです。他の誰よりも…。だから、どんなことがあっても大丈夫です…」
なぜ、こんなにも菜月なつきは優しいのだろうか。落ち込んでいる相手を元気づけようと、必死に心の中にある単語を繋げて俺に差し出してくれる。
「でも…俺には…俺には何もできない…それがどうしてもけない…」
気づくと熱を含んでいる雫しずくが頬を伝った。
涙を止めることはできず嗚咽混じりの聲を出しながら心の中にある負のを菜月なつき曝さらけ出した。
その言葉を丁寧に拾い上げるかのように、菜月は頷く。
「人生は“バネ”だ。一度沈むと大きく飛び上がる。けれど、沈んだままだといつまで経っても飛び上がれない。だから沈んだ時がチャンスだ。」
ゆっくりとその言葉を口にした菜月に俺は驚かずにはいられなかった。
「これ、直斗先輩が中學三年生のときに落ち込んだ私に言った言葉ですよ、覚えてます?」
「あ、ああ」
覚えている。あの日、育館でそう言った。
まさか覚えているとは…
「この言葉、本當に好きです。直斗先輩…飛び上がりましょう…高く!」
「そうだな」
菜月は両手を広げ満面の笑みを浮かべる。そのい笑顔は中學校の頃とは変わっていなく懐かしさを覚える。
その姿に俺は笑みを浮かべる。
「——戻りますか?」
聞き覚えのあるの聲。
待っていた。お前の聲を…ずっと…
まだ一緒にいる時間は全然ない。
まだ連絡先すら換していない。
家も知らない。
趣味だって知らない。
好きな歌も知らない。
好きな本も知らない。
けれど、誰よりも正しい人。
だから、即答をした。
「可憐さんに…會わせてくれ!」
「はい。」
——目の前が真っ白になった。
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