《過去に戻り青春を謳歌することは可能だろうか》20話 立派なの大人

「好きよ…直斗なおと…」

既に歩き出している直斗の背中に消えってしまいそうな聲量で呟く。

案の定直斗は気づかなかった。

病院の近くの漫畫喫茶に店して部屋にる。

そういえば可憐さんの連絡先また聞きそびれたな。

明日どうしようか。

考えてから寢ようと思ったが俺の疲労がそれを許さず。すぐに意識は闇の中に落ちていった。

朝目覚めると時刻は8時を回っていた。

昨日の夜、可憐を待っているときに先生に欠席の連絡をれた。だからそこは心配しなくていい。

おそらく可憐のおばあちゃんはもう…

人生とは何が正解なのだろうか…

俺は“あの日”からこのことをよく考えてしまう。

人生には正解なんてない。あるとするならば、自分らしく生きるということが正解なのだろう。

けれど自分らしさって何なんだろうな

可憐のおばあちゃんはどんな人生を歩んだのだろうか…

漫畫喫茶から出て真っ直ぐ帰ろうと思ったが、せっかく岐阜に來たからし街並みでも覗きたいと思い足を進める。

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途中、溫泉を見つけた。

昨日から風呂にっていない。

「清潔のない男子は嫌われるからな」

平日ということもあってか、所に人はいなかった。

るとお風呂の音が聞こえるだけで、シャワーの音や溫泉獨特の洗面のカランッサウンドも聞こえない。

「ラッキー」

一人の時間は大好きだ。結婚しよう。

頭とを洗い、天風呂に向かう。

天風呂は初めてで、どこか冒険をしているようで、年心がくすぐられる。年だけで探偵団作っちゃうまである

「ふぅ〜…」

今日は快晴でしが強くが日天風呂の屋の脇からしている。その景も落ち著き居心地がよく、も心も癒される…

——ガラガラガラ

誰かが扉を開け、風呂にる。

一人の時間はこれまでのようだ。

し殘念だが仕方ない。

「あれ?直斗なおと君じゃないか」

湯気で最初は誰かわからなかったが、その男…夏ノなつのさんは、肩まで浸かる前に俺を発見してジャブジャブと音を立てて歩み寄り、そのまま俺の隣で落ち著く。

「夏ノさん、昨日ぶりですね」

「そうだね、というか直斗君って意外といいしてるんだね、著痩せするタイプか」

そう言って上半を下から上まで何度も往復して見てくる。

知り合いの父さんにを見られるのは本當に居心地が悪い。

「ま、まぁ…バイト先が家電量販店で重たい家電をよく運ぶからですかね」

「それでも結構いいしてるね〜、アスリートみたい…、直斗君って何か部活はやっているの?」

この人すごいな、職業がスポーツ関係か何かだろうか。

「今はやっていないですけど中學校でバスケをやっていました」

「お!バスケか!私もバスケをっていた時期があってね、それで可憐と遙希はるきが影響をけて始めたんだよ!」

夏ノさんはとても嬉しそうに懐かしむような言葉を綴る。

それにしても可憐さんがバスケをしていたということが意外で驚いてしまう。

「可憐さんはいつバスケやってたんですか?」

「中學校までだよ、とてもいい選手だったよ」

「そうだったんですね、可憐さん高校からはモデルやってますしね」

「そうそう、私としては嬉しい反面ちょっと不安だったよ」

「親として不安ですよね」

蕓能界は華やかな世界だと思う。けれど周囲からの注目や意見に苛まれてしまうことだって多々ある。だから親からしたら不安なのだろう。それを許すのだから

「それもそうだけどね」

「他に不安な理由が?」

「え、だって私は…あ、なるほど」

「どうかしました?」

「いや、なんでもないよ」

夏ノさんは微笑む。とても気になるが聞いてもはぐらかされてしまう気がした。

「というか、どうして夏ノさんはここに?」

「ちょっとみんな疲れちゃってね、気分を変えるために家族で來たんだよ」

夏ノさんの表は曇っている。

しかし、夏ノさんは「気分転換サイコー!」と言って湯を救い、屋に向かって放つ。

その姿は子どもっぽい。けれど、この居心地の悪くなった雰囲気を打開する行だと思うと、とても優しい立派な大人に見える。

夏ノさんも辛いのに…

「直斗君…」

「何ですか?」

夏ノさんの顔が耳元まで近づき左手で俺の耳と夏ノさんの口を隠すようにして、とても小さな聲で…

「あそこの壁の向こう…パ・ラ・ダ・イ・ス」

「いや、壁高すぎて覗けないっす」

「はははっ一応覗けるか考えたんだ」

まぁそりゃ、男の子ですし、本気では考えてないけどしだけ?しだけだぞ!

「てかサイトを漁れば畫が山ほど出てくるんで俺は間に合っています」

畫ってのがまだ子どもだなー、私は経験富だから見ないんだよねーそーゆーの」

「それ、聞かれたらマズくないですか」

何だこの人、親とは思えないほどのチャラさだ…

「結婚する前だよ」

「ならよかった…のか?」

夏ノさんの萬人ウケするルックスなら余裕なのだろう。

「しかも私の息子は立派だ」

「子持ちの大人が何言ってるんすか」

「俺の心は子どもだぞ?」

「でしょうね」

気づくと俺は夏ノさんと親になっていた。夏ノさんの人當たりの良さはもはや才能なのではないのだろうか。

すげー大人だわ

「ねえ、直斗君…可憐のことありがとね」

「ああ、まー岐阜に行くように促うながしたのは俺っすけど最終的には可憐さんが自分で決めたことですよ」

「はははっ、それも謝だけど、昨日の夜のことだよ」

「…何でそれを?」

夏ノさんはずっと病院にいたはずで、夏ノさんには會っていないはずだが。

「可憐はね、昔からおばあちゃん子でね、岐阜にいるときはずっと一緒に居たんだよ、長野に引っ越してもよく一人で岐阜に行ってたくらいでさ」

夏ノさんは、壁の向こうの可憐さんを見ているかのような目をしている。

「外に出た時は相當落ち込んでるんだなって思ったよ。無理もない…だけど帰ってきたときにはし顔が晴れていてね、もしかしたらって思ったんだ。そしたらまだ岐阜に殘っている直斗君を見つけて確信したのさ」

言葉は最後になるに連れ謝を含んでいたような気がした。

「いや〜でも、さすが可憐の彼氏ってじだよ、昨日は『大切な他人がいない』って言ったけど違ったね」

「い、いや、可憐さんと付き合ってないっすよ…」

「またまた〜、だって家泊めて岐阜まで來てってもう彼氏だよ〜直斗君はシャイだなー」

まー傍目から見たらそう見えるかもしれない。けれど違う…

さすがに噓はつけないので正直に話す。

「いや本當です…」

「………」

「………」

「え…親友てきな?」

「まだ関わり始めて3日目です」

俺からしたらもっと経っているけれど…

「か、可憐が…お、お、おビッチに!?」

夏ノさんは急に立ち上がる

「なってない!」

湯から可憐の聲が飛んで來た。

聞こえていたのか…

「ゔゔんゔん」

痰が絡んだかのような咳払いをして夏ノさんは再び湯に浸かる。

そしてこのあと夏ノさんの質問責めに合い、見事に逆上のぼせてしまった。

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