佐伯と別れてから二、三分歩くと見慣れた我が家が見えてくる。夕焼けに照らされた我が家を見ると、ようやく一日が終わったことを実する。

「ただいま～」

玄関の扉を開き、ため息混じりの聲を発する。

「おかえりぃ～」

リビングからは俺の更に上をいく、とても気だるげな聲が返ってきた。スミレだ。

リビングの扉を開けると、スミレはこたつでココアを啜り、雑誌をめくっている。

「あ、お兄ちゃん宛に手紙來てたよ」

そう言いながらスミレはこたつの上を指さした。そこには、『塚田コウジ様』と書かれた封筒が置かれていた。

その封筒をハサミで慎重に開けて、中を確認する。

手紙にはこの様な容が記されていた。

〈塚田コウジ。

檜戸高校　一年五組　出席番號二十七番。

生年月日は十一月二十五日。型はＢ型。

家族構は父と妹の三人。母親は十二年前に通事故で他界。

學での績は３２２人中１４５位。

出生時の重は3624グラム。

我々は貴様の全てを知っている。

今後の全ての行に細心の注意を払うように。〉

正直言ってかなり怪しかった。しかし、記されている報はどれも正しい。

だが、様々な個人報が載っている。出席番號などを掌握しているということは、クラスメイトだろうか。いや、だったとしても母の死因や個人績まで知っているのはおかしい。ストーカーか何かだろうか。

考すればするほど謎は深まっていく。

見かねたスミレが手紙を覗き込む。

「何これ…キモぉ……」

全く包み隠さずに想を述べてくる。學校ではそんな言葉を使っていないだろうな…。

ちょっと心配になってしまった。

しかし、正不明の者に自分のことを知られているというのは、気分の良いものではない。

「コレって、警察とかに出した方が良いんじゃない？」

「どうだろうな。でも、警察はかないんじゃないのか」

これは言い方を変えればただの手紙であり、殺害予告でもないため警察がいてくれるとは考えづらいだろう。それに、家族の誰かが被害に遭ったわけではない。ただのイタズラである可能も十分にあるのだ。まだ大事にするには早すぎる気がした。

「誰かが怪我してからだと遅いんじゃない？」

「まあ、大丈夫だろ」

スミレが心配してくれたが、俺はそれを笑ってスルーした。

今思えば、この忠告を真摯にけ止めていたならどんなに良かったか――――――――。