《異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??》暴発
「ん…、・・・ちゃん…、お!に!い!ちゃん!」
耳元で大聲を出され、俺は目を覚ました。
「んだよ…」
「遅刻するよ!」
ゆっくりとを起こし、壁掛けの時計の文字盤を確認する。時刻は八時を指している。
「まだ八時じゃん………八時!?」
うっかり二度寢してしまいそうになったが、遅刻寸前である。
「私、何度も起こしたんだからね…」
呆れたようにスミレが言う。
「やべっ!急がねぇと!」
俺は全速力で支度を整え、家を出る。
走って學校へと向かうが、足を踏み出す度に視界を白い息が覆っていく。
「はぁっ…はぁっ……」
いくつか角を曲がり、やがて校門が見えてくる。
だが、校門をくぐろうとしたところで校舎からチャイムの音が鳴り響く。
「噓っ…だろ……!」
昇降口で上履きに履き替え、階段を駆け上がる。
、二年五組の札を見つけ、扉を開ける。
「おはようございます…っ!」
肩で息をしながら教卓を見ると、擔任の教諭は既に出欠を採り終えていた。
「はい、塚田は遅刻な~」
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殘念ながら間に合わなかったようだ。俺はそのままゆっくりと自分の席へ著いた。
「コウジ、どんま~い」
半笑いの佐伯が、小馬鹿にしたようにそんな言葉を掛けてくる。ウザい。
「これでも…頑張った…つもり…だったんだけどな…」
未だ呼吸が整わないため、言葉は途切れ途切れになってしまった。
「こんな季節なのに、すごい汗だよ」
そう言いながら佐伯が自分の額を指さしている。俺も自分の額にれてみると、濡れたがあった。
「マジか、気付かなかったわ…」
確かに昔から汗っかきではあったが、ここまで酷いと思うとしショックである。心なしか臭もし汗臭い。
と、そこであることに気が付いた。弁當がない。朝急いで支度を整えたため、れ忘れてしまったのだろう。仕方ないので今日は購買で済まさざるを得ない。
三限目終了のチャイムと共に、俺は席を立ち購買へ向かった。
すると佐伯が「どこ行くの?」と聲をかけてくる。
俺は「弁當忘れたから、購買で買ってくる」と返した。
「え?コウジも今日お弁當忘れたの?」
「コウジ『も』って?」
「いやぁ~、実は私も今日のお弁當忘れちゃったのよ…」
佐伯はハハハと笑いながら頭をポリポリと掻いていた。
最終的に、俺と佐伯は二人で購買へ向かい、佐伯は菓子パンを、俺はカツサンドをそれぞれ購し、教室へ向かうため廊下を歩いていた。
「晝に菓子パンって…お前正気か?」
俺は佐伯の手に握られた袋を見てそう言った。
「何言ってんの?砂糖のブドウ糖と、小麥のブドウ糖でめっちゃ頭働くから!」
やけに熱心な口調で佐伯が答える。
「………なるほど」
「ふん、分かればいいのよ」
やたらと偉そうにを張りながら佐伯は大仰にうなずいた。
「ようやく理解したよ。だからお前は、午後の授業をほとんど寢てたんだな」
「知ってたの!?」
よほど知られたくなかったのだろうか、凄く驚いたように俺を見てきた。
「知らないのか?糖値のピークは食後一時間。だから摂取しすぎると猛烈に眠くなるんだぞ」
「なんでもっと早くに言わないのよ~!」
そう言いながら俺のネクタイを摑み、前後に揺さぶってくる。別に俺は悪くないと思ったが、何故か被害に遭ってしまった。
すると揺さぶっているとき、右肩に衝撃が加わる。右側を見てみると、同學年の男子が三人で橫に並んで歩いていた。
「あ、ごめん」
三人の姿を確認しすぐに謝った。
しかし、三人のうち真ん中の生徒が俺に顔を近づけ威圧してきた。
「あ?ぶつかっといて何その態度?ナメてんの?」
「いや、だからごめんって」
「そういうことじゃねーよ。謝る気あるならセーイ見せろよ。ほら」
男子生徒はニタニタと下卑た笑みを浮かべながら、挑発するようにそう要求してきた。
「誠意、って?」
大この男子生徒が何を言うかは想像できていたが、あえて尋ねる。
「ドゲザに決まってんだろ。ド・ゲ・ザ」
「………聞いた俺が馬鹿だったよ。さ、行こうぜ佐伯」
この男子の思考は至極単純であると分かり、俺は佐伯の手を引きその場から立ち去ろうとした。だが、
「は、何逃げようとしてんの?」
その男子は強引にコウジを自分の方へ向け、ぐらを摑んで脅してくる。すると、それを傍観していた二人の男子が「いいぞー」だの「やれやれー」だの、馬鹿丸出しの煽り文句を言ってくる。
「あー、もしかして彼の前でボコられんの怖いの?」
脅してきた男子生徒はニタニタと笑みを浮かべながら、そう言ってきた。
俺ははなにも返さなかった。
こういった輩は基本的に頭脳が十分に機能していない。そのため言語を使って反論しても理解できないだろう。だから俺は無視をしたのだ。
「だんまりかよ。一発毆られないとわかんないのかなァ?」
男子生徒は、コウジのぐらを摑んだまま、明らかに聲音を変えてそう言った。
それでもコウジは何も言わなかった。
「テメェ…ッ!」
流石に男子は頭にきたのか、右手の拳を振り上げて毆ろうとした。
あまりに大きく拳を引きすぎていて、素人目にもどこを毆ろうとしているのかが分かってしまう。コウジの左頬だ。小さい頃から喧嘩はよくやってきたので、ある程度は見切れるつもりだ。反撃をするのも手だが、この場合第一撃がこちらになってしまうので、その場合、非はこちら側にあることになる。そして何よりも、喧嘩というものは同レベルの者の間でしか起こりえない。この生徒は俺よりもレベルが下なのだ。相手にする価値はない。
コウジは彼の拳をけ止めて速やかに退いてもらうことにした。
コウジは自分の右手を左頬の前に出し、拳をけ止めようとした。そして、拳が當たるタイミングで腕に力をれて衝撃に備えた。
だが、拳が當たると思った瞬間。右手がを放った。すると、彼の姿が視界からフッと消えた。一瞬、屈んでアッパーを仕掛けたのかと思った。だが、その場には彼の著ていた制服だけが殘されていた。
まるで、男子生徒のだけが忽然とその場から消えたように―――――――――。
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