《異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??》崩落
登校中、頭の中は昨日の出來事でいっぱいだった。
なぜ男子生徒は消えたのか、なぜ大量の水が出てきたのか、ひたすらに考えたが答えは出なかった。當然か。
やがて校舎が見えてきた。視界の校舎が大きくなっていく度に、がズキズキと痛んだ。病的ではなく神的に。
昇降口で靴を履き替え、階段を上っていく。二年五組がある階で廊下へと出た。廊下は一部分だけ妙にを反していた。昨日の水の影響だろうか。
それを一瞥して、俺は教室の扉の前で立ち止まる。
「昨日のはきっと夢だ」
俺は自分に言い聞かせるようにそう言い、扉をあけ放った。
そこで俺は現実を知った。
さっきまで賑やかだった教室に、一瞬にして靜寂が訪れる。突き刺さるのはクラス中の氷柱のような冷たい視線。その視線に耐えながら自分の席に著く。周囲からひそひそと話聲が聞こえる。本來なら聞こえないような聲量なのだが、この靜かな教室ではその會話は筒抜けだった。
「ねぇ、昨日いなくなった東雲(しののめ)くんってさ…」
「塚田君が喧嘩して、いきなり消えたらしいよ」
「え~、なにそれ。どういうこと?」
「なんか、った瞬間に消えちゃったんだって!間近で見てた佐伯さんが言ってたよ」
「うそ、じゃあアタシらも消されるの?」
「関わらない方が良いよ…」
どうやら、昨日の出來事はなくともクラス中には広まっているようだった。噂は信じられないような速さで広まっていく。
そして、それを広められるのは、昨日の男子二人と佐伯だろう。
佐伯の方を見ると、俺は佐伯と目が合った。と同時に佐伯は怯えるように目を背けた。
一方の佐藤の方を見てみると、佐藤は申し訳なさそうに視線を逸らしていく。
そこで初めて実した。人と人との繋がりはこうも簡単に崩れてしまうものだと。
昨日まで楽しく談笑をしていたような人間も、翌朝には自分を無視するようになってしまうのだ。
すると、教室の扉が開け放たれた。擔任だ。
「塚田。いるか?」
発散し始めていた視線は、再び自分へと収束した。
「…………はい。」
「ちょっと來なさい」
ゆっくりと席を立ち、教師のいる扉へと向かう。教室の通路は俺が通ろうとしただけで、生徒たちが退いていった。
「ほかの皆は、自習していなさい」
そう言って、教師は俺に職員室まで來るように指示した。
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