《異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??》発覚

し歩いて、目的地に到著した。コンクリート製の建には金屬製のプレートでこう彫られていた。『檜戸町立図書館 あーかむ』

そう、ここに來た目的は他でもない読書だ。ただ、読むのは小説などではない。読むのは、自然科學分野の本である。

昔から理科が好きで、自然科學の本を読んでいるときは落ち著くのだ。さらに、消えた東雲のことも科學的に証明できるかもしれない。

400と彫られた本棚を見つけ、その中の本を何冊か持って近くの椅子へ腰かける。

ひたすらに本を読み進めていく。だが、持ってきたいずれの本も瞬間移やそのヒントになることは何一つとして書いてはいなかった。

「流石に無いか…」

超能力のような非科學的な存在は、自然科學の本には載っていないのだろうか。

その後も、手掛かりになりそうな本を読み漁ったのだが、結局は何も見つからなかった。

「こんな時間か…」

壁掛けの時計の文字盤を見てみると時刻は午後六時半。かれこれ十時間近く本を読んでいたことになる。

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「帰るか」

またスミレに怒られたくはないので、本をもとあった棚に戻して帰宅した。

家に帰り、玄関の扉を開けると食をそそる香りが漂ってきた。

「ただいま」

「おかえり〜」

キッチンをのぞいてみると、スミレがから揚げを揚げているのが見えた。

「今日はから揚げなのか?」

「そうだよ。あ、でも、いくつかは明日のお弁當にれるから取っておいてね」

スミレは視線を油に向けたままそう返事をした。俺にはもう弁當が必要無くなるとも知らずに…。

「夕飯出來たら呼んでくれ」

「はいよ〜」

そう言ってから、自室にり、右手を見つめながら考えた。

「やってみるか」

自分の能力の有無。そして、萬が一あった場合、その條件や抑制方法を把握しておいた方が良いと思ったのだ。

自分の學習機の上に置かれた消しゴムを一つ手に取り、念じるようにイメージしてみる。消えろ、消えろ、消えろ…。

だが、その消しゴムに一向に変化は訪れなかった。二度、三度と繰り返してみるが、やはり結果は同じ。

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「やった!やっぱり無かったんだ!」

消しゴムが消滅しないということは、俺には超能力なんて無かったことになる。

「これで、ひとまず大丈夫だろ」

能力がないということは、人に危害を加えたりすることもないということだ。

「よし、じゃあ風呂るか!」

自分の無実の確証が得られ、晴れやかな気分になった俺は、浴して疲れを流そうとした。

そして、手に持っていた消しゴムを機の上に投げて、部屋を出ようとする。しかし、機に消しゴムが落ちた音がしない。

振り返ってみてみると、機の上に消しゴムが乗っていない。

「投げるのミスったか?」

だが、部屋中のどこにも消しゴムが見當たらない。

「あれ、どこ行った?」

床に四つん這いになって消しゴムを探すが、どこにも落ちていない。そのとき、右手に冷たいが伝わる。自分の右手の方へ視線を向けると、そこだけ濡れていた。

「は……?」

消えた消しゴムと、突如現れた水。真っ先に思い浮かんだのはあの廊下の景。

「まさか…」

頭の中で一つの仮説が思い浮かんだ。

俺は直ぐに、機の上から手近なボールペンを取り、先刻の消しゴム同様念じてみる。だが、今回念じるのはが消えるというイメージではない。が形を変え、やがて水へと変化していくイメージ…。

次の瞬間、目を開くと右手から黒い、左手から白い炎が燃え盛っていた。握っていたボールペンは消え、代わりに左手から水が滴っていた。

「そういうことだったのか」

これは今しがた立てた仮説通りの結果である。

つまり、俺は右手でれたものを左手で水として排出することができる。ということになる。

しかし、いまだに謎が多い。俺は急いで階段を駆け下りて、洗面所へ向かった。

「逆も行けるよな」

逆説の証明を試みるのだ。右手一杯分の水を掬い、先ほどと逆のことをイメージする。不定形の水がプラスチックや、金屬へ姿を変え、徐々にボールペンへ変化していくイメージ。

しの靜寂の後、ペチャッという音が左足元から聞こえてくる。見てみると、赤黒いが左足元に溜まっていた。

「これは…ペンのインク……?」

ボールペンを作ることはできなかったが、インクのみであれば生み出すことができた。

即ち、水から何かしらの質への返還も可能ということだ。

しずつ能力を理解し始めてきた。だがそれは、あの男子生徒を消したのは他でもない自分という証明につながるのだ。

「じゃあ、これは…」

俺は再び水を右手で掬うと、今度はまた別のものを想像した。それは他でもないあの男子生徒である。

必死に念じ続ける。だが、いつまで待っても手ごたえも音も鳴らない。

「人はできないのか…」

「何してんの?」

「ひぎゃっ!」

突然背後から聲を掛けられ、けない聲を上げてしまう。振り返ると、そこには汚を見るような視線を向けて立っているスミレがいた。

「スミレ?脅かすなよ」

「一人でぶつぶつキモいんだけど。ご飯できたよ」

さらっと暴言を吐かれ、傷つく。

「わ、分かった今行くよ」

「ん。あ、それと、またお兄ちゃん宛の手紙來てたよ」

「え………?」

その言葉を聞いた瞬間、先日のストーカーじみた手紙の容が思い出される。

「あれか、分かった。ありがとう」

そう言って、スミレについて行くように食卓へ向かい、食事を済ませた。

その後、スミレから手紙を渡された。手紙の大雑把な容はこうだ。

〈塚田コウジ様へ

先日は不躾な容の手紙を送ってしまったことを心よりお詫び申し上げます。

さて、まず自己紹介ですが、我々は聖アニュッシュ學園という教育機関の者であります。本日は塚田コウジ君を特待生としてお迎えしたく、お手紙を書かせていただきました。

折角の自分の生涯を自らの手と能力で破滅へと導くなら、その手で人々を救ってみませんか?

同意していただける場合は、一週間以に指定された住所まで來てください。〉

同封されていた紙には住所と簡易的な地図が描かれていた。また、特待生は授業料が全額免除などの學園に関する的な容も書き記されていた。

前回の手紙とは打って変わって丁寧な口調の手紙であった。だが、一つ引っかかる點がある。それは、『自分の生涯を自分の手と能力で破滅させる』という部分だ。おそらく普通の人が見たなら犯罪や非行を連想するフレーズだが、今の自分にはこの異常な能力のことにしか聞こえなかった。事実、俺は自分の能力で人を一人殺めたといってもいいのだから。

それに、この組織がこの能力のことを知っているとしたら、前回の手紙の容も合點がいく。

「なに、今度は転校の勧?」

深く考え込んでいると、橫から覗いていたスミレが興味深そうに言ってきた。

「コウジは今の高校で充分だろ」

そう言ってきたのは親父だった。確かに今通っている檜戸高校で充分だが、すぐに俺の居場所は無くなるだろう。いや、もう既に無いのかもしれない。そう考えると手紙の送り主の學校への特待生として転校するのは非常に甘な響きである。

きっと今ここにいる親父やスミレの為にも転校した方が良いのだろう。

そう決意し、ゆっくりと重い口を開く。

「親父。俺、この學校に転校したい」

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