薄暗い場所で、長い黒髪を一つに結えたスーツ姿のは目の前のディスプレイと睨めっこをしていた。

彼の名前は浜曷伽(はまがちみか)。聖アニュッシュ學園の教員の一人だ。そしてここは、聖アニュッシュ學園の地下に設けられた司令室。たくさんのモニターがそれぞれ違った報を表示している。また、ここ司令室では、生徒、及びこれから生徒になる可能のある者の監視、並びに取り締まりを行なっている。現在も、何人もの職員がモニターを作していた。

そして、【例の生徒】の外出を確認する。

「塚田コウジの外出を確認しました。おそらく、家出かと思われます」

「追跡してください。見逃すことのないように」

その報告に対し、髭を蓄えた初老の男が威厳のある聲で厳命した。

今回、転する可能がある中で、能力が最も危険とされている生徒。それが、「塚田コウジ」である。既に彼は不隨意とはいえ自の通う高校の生徒を一人、どころか純水にしてしまった。

また、彼の能力は直接的に人を殺すことが可能なうえに、そのも殘らないといった厄介なものだった。

彼が何も問題を起こさずに我が學園へ転してくれれば良いが、逆に彼が能力を使って道を踏み外してしまったなら、最悪の対応も視野にれねばならないことになる。

それ故に、塚田コウジの向には二十四時間制で監視の目をらせていた。

「如何なさいますか、學園長」

浜曷はしい姿勢を維持したまま、學園長へと指示を仰いだ。

「“彼”を使って彼をこの學園まで連れてきてください」

「彼…とは……？」

學園長の放った『彼』の示唆するものが分からず、聞き返す。

「城嶺ヒカリです」

「……ハッ！」

學園長から発された名前に揺しつも、見事な敬禮と返事でもって自の機へと向かった。

城嶺ヒカリ、この學園でかなり上位の能力の持ち主。そして、それ以上に本人の格が一癖も二癖もあることで有名である。そんな生徒を送るということは、學園長は一何を考えているのだろうか……。

とはいえ、考え無しに無闇矢鱈に上司に逆らうのは賢い部下の行う行為ではない。

浜曷はディスプレイを素早く作し、ヒカリの擔任に電話を掛ける。ニ、三回コール音が鳴るとヒカリの擔當教諭である簑田紗枝みのたさえの聲が聞こえてきた。

「もしもーし、蓑田でーす。どったの？みーちゃん」

その口から発せらる間の抜けた口調と聲音から確認を取らずとも本人だと確信する。

「蓑田先生。只今、學園長から城嶺ヒカリさんの出撃命令が下されましたが、出撃は可能ですか？」

「ん？ああ、大丈夫だよ！今日も元気だったからね～。んで、何処へ行かせればいいのかな？」

「ありがとうございます。目的地は檜戸町外田地區にある商店街です」

軽い調子で返事されし心配になるが、今は彼しかヒカリの狀態を把握している教師がいない。彼の言葉を信じるしかないだろう。

「わかった～。んじゃ、そう伝えておくね～」

ブツという音と共に通話が終了する。

「學園長。城嶺ヒカリを現在商店街に向かわせております」

「了解しました。今後の指示は全て浜曷教諭に一任します。」

學園長は浜曷にそう言い殘すと、そのまま司令室をあとにした。

「ハッ！！」

浜曷は幾度目とも知れない見事な敬禮をし、司令室を見回した。

全職員の視線が浜曷に集中する。だが、その視線にも臆することなくこう言い放った。

「これより塚田コウジの保護、及び、拘束を行います。総員、自の持ち場に付き如何なる命令にも順応できる狀態で待機してください」

職員一人一人の顔を見ながら指示を下す。

「了解ッ！！」

その命に対し、全員が敬禮と誠意のある返事でもって応えた。