《異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??》邂逅
數十分程度歩き、佐伯サトミの玄関前が見え始める。人が立っているが、佐伯だろうか。
コウジはそのままゆっくり歩き玄関から十五メートルほど手前で立ち止まる。
「急になんだ。佐伯」
簡潔に用件を聞く。
「その、この前塚田くんに酷いこと言っちゃったから、そのこと謝りたくてさ……」
そう言いながら、佐伯はしずつこちらへ歩み寄って來た。
「それ以上は近寄らないでくれ!」
コウジはんだ。これ以上人を殺したくなかったからだ。この前の校舎での一件のように、佐伯を消し飛ばすわけにはいかない。また、俺の能力は質限定ではないかもしれない。もしかしたら目に見えないものも、別の何かに変換することができるかもしれない。エネルギーや、磁力や、命でさえも………。あくまで可能だが、警戒するに越したことはない。
とにかく、現時點では能力について分からないことが多すぎるため、不用意に近づくのは得策ではない。
「わ、分かった…」
佐伯はし困ったように返事をした。
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夜風が二人の間をすり抜け、二人の距離の儚さを囁くように告げる。
「ごめん、佐伯。俺はもうすぐこの街を出るから」
そう、コウジは知っていた、そして既に決斷を済ませていた。この街に自分の居場所はなく、孤獨に生きていくしかないのだと。
「じゃあ、さよなら」
佐伯に背を向け歩き出す。その心ではが渦を巻いていた。
呼び止めてしい。抱きしめてしい。「私がいる」と言ってしい。「一人じゃない」と言ってしい。
気を抜いたら栓が外れてしまいそうな涙腺を引き締めて歩みを進めていく。
だが。瞬間、背後から。
「今です!」
と佐伯のび聲が聞こえる。すると、それを合図に大量の人影があるいは民家の影から、あるいは屋の上から降りてくる。そしてコウジの元へ近寄ってくる。やがてそれが全を武裝し、銃火を所持したた特殊部隊であると理解する。
「お、おい。なんだよ!來るな!」
コウジは必死に聲を上げる、だが彼らは聞く耳を持たず接近を続ける。
「……やんのか」
コウジは両手に白と黒の炎を燈し、強い聲でそう言い放つ。今のコウジは能力をある程度の範囲ではあるがれるのだ。一度右手でれることさえ出來れば、コイツらは敵ではない。無論、れるのは攜えている銃であり、隊員達は誰一人として殺さないつもりだ。
そして正面から向かってくる隊員と対峙する。だが。
「がは……っ!」
思考を巡らせていたその一瞬、バヂバヂバヂという音とともに背中に強い衝撃か加わる。のきが鈍くなり、視界が歪んでいく。視線を背後にやると、スタン警棒を所持した隊員と思しき人が立っていた。どうやら最初から完全に包囲されており、背後から不意を突かれたらしい。抵抗する力を失い、簡単に地面に組み伏せられてしまう。
「どういうことだよ佐伯!騙したのかよ!」
今一度、この狀況について佐伯に問う。
「うるさい!他にアンタを呼ぶ理由なんてないでしょ…!!もう二度と私の前に現れないで!!この人殺し!!!」
冷酷かつ軽蔑的な視線をこちらへ向けてくる。最初から話し合うつもりなんてなかったのだろうか。自分の単純さに呆れ、佐伯の裏切りを憎んだ。きっと自分はこれから連行され、解剖や能力に関する尋問でもけるのだろう。
こんなことなら、いっそ生まれなければよかった…………。
これから起こるであろうことと、自分の歩んできた人生の不甲斐なさに悔恨の念を抱いていたその時だった。
「待てぇぇえええい!」
上方からの聲が聞こえてきた。聲のした方向を見ると、民家の屋の上にら黒い人影が一つ佇んでいた。隊員かと思ったが、違う。彼らは攜えた銃をその人影に向けていた。
「貴様何者だ!」
隊員の一人が警戒しながらその人影へとぶ。その人影は仁王立ちしたままこう言った。
「なぁに、ただのコンビニ帰りの超能力者よ」
彼が一何者で、どんな能力を持っていて、學園とどんな関係なのか。そんなことは何一つ分からない。
ただ一つ言えることは、きっとまともなヤツではないという事だけだった。
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