《異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??》Equal Dead Weight
「なんだ……これ?」
「アンタはついにったのよ。アタシの程に」
ヒカリが邪な笑みを浮かべながらそう言ってきた。する
と、再び轟音が鳴り響いた。その時、俺は足元に違和をじた。足元を見やると、敷き詰められているタイルが細かく振していた。そして、その振は次第に大きくなっていく。 
やがてタイルは、砕け散った。
砕けたタイルの破片は四方八方へと飛び散る。
無論、俺の方にも。その破片はまるで弾丸の様だった。
「んなっ………!?」
俺は右手でアテスターをガードしながら後方へ跳びのき、ヒカリから距離を取った。
何が起こったのか全くわからない。まるで魔法でも使われたみたいに、勝手にタイルが砕けたのだ。だが、なくともこれで彼の能力には有効程があるということが証明された。それだけでも十分といえる。だが、問題なのは彼の能力の容である。皆目見當もつかない。一何をすればタイルを砕け散らせることができるのだろうか。恐らく、あの時の轟音と何かしらの関係があるのだろう。しかし、一どんな関係があるのか。
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ヒカリの能力に思案を巡らせていると、彼はこちらを見ながらこう言った。
「今度アタシに近づけば、割れるのはタイルなんかじゃない。アンタの頭蓋骨よ」
ヒカリはこちらを睨み続けたまま、そう言った。
敵意むき出しのその視線に思わず後退りそうになる。遠距離では銃が、近距離では能力が使われてしまう。遠近一で、自の能力をよく理解していると考えられる。だが、今は彼の能力を分析していく必要がある。
何だ、彼の能力は。
れたを破壊するのか?否、それであれば破壊寸前の轟音についての説明がつかない。
轟音、タイルの振、タイルの破壊。これらから導かれる彼の能力は………。
「その頭!撃ち抜いてやるわ!!」
そうんだヒカリは、銃を向けながらこちらへと駆けてきた。が、それと同等の速度で俺も逃げた。すると彼は足を止め、俯きながら靜かな怒りをわにした。
「なに。結局私の能力が分からなくて逃げの一手?けないわね。見ててムカつくわ」
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「いや、お前の能力については既にかなり絞り込めている。お前の能力は“自の周囲の音を近くのモノの固有振數に同期させる”とか、そんな能力だな」
この容であれば周囲が轟音に包まれタイルが破損したことにも説明がつく。
「お前は自分の周囲の音をタイルの固有振數に同期させ、共振によってタイルを破壊した。違うか?」
共振現象。にはそれぞれ固有振數というものがあり、その振數(周波數)と同じ音を當てることでを破壊することが出來るのだ。テレビ等で聲でワイングラスを割るのは、この原理を利用してグラスの固有振數と同じ高さの聲を當てることで共振を起こし、グラスを割っているのである。
「へぇー、知識は一応あるのね。でも、半分正解で半分間違いよ。いいわ、そこまで能力を絞れたことに免じてアタシの能力を教えてあげる。アタシの能力は、『アタシの周囲のあらゆる周波數を自在にる能力』よ」
ヒカリは能力の容を話した。それはつまり、自分の能力が把握されても負けることはないという自信があるということだろう。たしかにどんな周波數も自在にれるのなら、どんなものでも破壊できるであろう。かなり手強い能力である。だが、かといって今のまま逃げ回り続けていても勝算はない。
「くそっ……!」
俺は歯噛みしながら一直線にヒカリへと走った。
このままヒカリのアテスターに右手でれ、消し飛ばすしか方法は無いかもしれない。
「策もなしに突っ込むなんて、慘めよ。見せてあげるわッ!!アタシの能力の真髄をッ!!!!」
ヒカリの能力の程圏にる寸前に、彼はそうんだ。
そして彼の程圏にった…。だが、そこは一縷のもない暗黒の空間だった。
一彼はなにをしたのか、そこは見渡す限りの暗闇。戦闘における興からか、次第に俺の溫も上がっていく。
「どこだ…?」
彼の能力が使われているということは、今の俺がいる場所からヒカリまではそう離れていないということだ。しきりに周囲を見回しながらヒカリを探すが、その姿は見當たらない。まだ四月というのに汗を掻くほどには溫まっていた。
「アイツ…どこに逃げたんだ……」
次第に掻く汗の量が増えていく。張しているのだろうか。いや、だったとしてもこの発汗量はおかしい。俺は、屈んで床のタイルにれた。
そのタイルは…高溫に熱せられていた。
「まさかっ!!」
急いで側方へと飛び退き、ヒカリの程圏外へする。すると、腕組みしているヒカリの姿が見えた。
「マイクロ波……か?」
「ご明察」
、即ち電磁波にも様々な種類がある。その一種であるマイクロ波は、電子レンジなどで食材を溫めるのに使われている。原理としては、食べの中に含まれている水分子の固有振數と、マイクロ波の振數を合わせることで、水分子の振を強め、その振で食べを溫めているのだ。そして、人の約60〜70%は水分である。つまり、人間にマイクロ波を當てるとごと沸騰し、死に至ってしまうのだ。
「まさか、電磁波の周波數までれるとはな」
ヒカリにマイクロ波が出せたのは、恐らく彼の『周波數を自在にる』という能力において、れるものは音だけではなく電磁波()も含まれていたのだろう。そして、周囲の電磁波をマイクロ波に変えて、俺のを熱することができたのだ。
「アタシはこの能力を『FREEQUENCY』って呼んでるわ」
ヒカリは自慢げにそう言った。
確かにヒカリは強い。近距離であれば能力の圏であり、遠距離なら固有武である拳銃の程である。どちらを取っても彼は強い。 が。かと言って俺の勝率がゼロになるわけではない。
人間の恐怖は未知からやってくる。構造やメカニズムを理解できたものに恐怖は生まれない。
まだ、まだ勝ち目はある。一対一の戦いにおいて、勝敗を左右するものは知能だ。バカから負けていく。
俺は目を瞑り、一度深呼吸をしてからヒカリへこう告げる。
「お前の能力を俺は知ってるのに、俺の能力をお前が知らないのは不公平だよな。だから、俺の能力も教えてやるよ」
「はぁ?別にアンタが弱いことはよく分かったからそんなのいいわよ。どうせ負けるのはアンタだし」
ヒカリは呆れたようにそう答えた。だが俺は続けた。
「俺の能力は『右手でれたものと同じ重さのものを左手から作り出す能力』だ。そして、お前みたいに能力に名前をつけるなら、『等しい重さ』という意味で『Equal Dead-Weight』とでも呼ぼうかな」
そう言ったが、ヒカリはさらに呆れたように返す。
「わざわざぶくらいだからどんな能力かと期待したのに、まるで役に立たない能力ね。もう見てるこっちがかわいそうだから、さっさとケリを付けてあげるわ」
ヒカリは視線を鋭くすると、かかってこいと言わんばかりに人差し指を立てて自分の方へ二度曲げた。
それを見て、俺はヒカリの方へと駆けた。ヒカリも俺が駆け出したのを見て、銃を構えた。そしてトリガーを引き、発砲する。
無論、ヒカリの程圏にるまでの間で彼が発砲することは読めていた。だが、いている標的に的中させるのは至難の技だ。俺は一撃も食らうことなく、駆けていく。
そして次第にヒカリとの距離は短くなり、彼の程圏まであと一歩というところまで接近する。
「今度は最大出力のマイクロ波よッ!」
どうやら、またマイクロ波を使うようだ。無論、そんなことは読めていた、だから俺は左手を前へ突き出しながら右手で床のタイルにれてこうぶ。
「〈等重変換Equal Dead-Weight〉!!」
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