《異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??》追観
そこは暗黒の世界。影のみで構築されたような漆黒の場所。
そんな暗闇に、・城嶺ヒカリは一人で立っていた。
「なによ………ここ……」
自分がなぜそんな場所にいるのか理解できず、周囲を見回しながらそう呟いた。この場所に見覚えはないし、ここに至る経緯さえも思い出せない。
なぜ自分がこんな場所にいるのか思案を巡らせていると、ふと前方に小さなの點が見えた。
完全に暗黒な世界であるため、最初ヒカリは分からなかったが、それは小さなではなく遠くから瞬くまばゆい明だった。ヒカリはその源へ向かって駆けて行った。その一縷の明はヒカリが走った距離に伴って次第に大きくなっていく。
しばらく走って、ようやく発の元へとたどり著いた。そのは直徑2メートルほどの球で、太を彷彿とさせるような猛烈なを放ち続けている。
「これは……?」
ヒカリが恐る恐る手をばしてその球にれた、その瞬間。
ガリガリという不快音とともに、今まで暗黒だったその場所に果ての見えない幾何學模様が現れた。その模様は三、四度形を変えると、やがてと匂いと風を生み出した。
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そこには、広大な草原が作り出された。
視界を遮るものはなく、見渡す限りの若葉が視界を満たしていた。
ヒカリはその草原にし見覚えがあった。
「なんだか一度來たことがある気がするわ……。ここはどこだったかしら…」
視界いっぱいの風景を頼りにこの場所を思い出してみようとするが、何故だか思い出せない。とても、とても大切な場所だという認識はある。だが、まるで記憶が「思い出してはいけない」とんでいるかのように、靄がかかっていて思い出せない。
ヒカリが記憶を掘り起こそうとしていると、ふと後方から楽しそうな聲が響いてきた。
振り返ると、そこには手を繋いで歩いく三つの人影があった。
真ん中の小さな人影はこう言った。
「お弁當楽しみだね!!パパ!」
左の大きな人影はこう返した。
「そうだな。お母さんが作ってくれたお弁當だから、きっと絶品だぞ」
親子だろうか。そんなことを言われた母親と思しき右の人影は、照れたようにはにかんでいた。
ヒカリは、そんな微笑ましい景を見て、驚愕していた。
 ヒカリの生白いからはすうっとの気が引いていき、真っ青な顔でその景を見ていた。
「ま、まさか……。あれは……!」
その人影を震える手で指さしながら、怯えた聲でそう言った。
すると、父親は娘にこう言った。
「きちんとママにお禮を言うんだぞ。ヒカリ」
「っ………!!!」
ヒカリは薄っすらと頭に浮かんでいた最悪の想定を肯定せざるを得なくなった。
ヒカリは思い出した。否、思い出してしまった。
この場所はヒカリが六歳のときに、父親と母親と家族三人で訪れた場所。今しがた一家の人影していた會話は、その時の城嶺一家がしていた會話と全く同じ。そして、子供の名前はヒカリ。自分と同じ『ヒカリ』。
つまり、今見ているものはヒカリの記憶を第三者的視點から見ているものである。
「なんなのよッ!!」
ヒカリは自分の太ももに付けられたガンホルダーから素早く拳銃を抜き取ると、銃口をその人影へ向けて引き金を引いた。
だが、弾丸は當たらなかった。否、確実に命中はしていた。それなのに、出された弾丸はまるで幽霊のように人影をすり抜け、そのまま虛空へと消えてしまったのだ。
すると、突然背後から聲を掛けられた。
「そんなことしても無駄よ」
「誰ッ!?」
慌てて後ろを振り返ると、そこには長で長い髪を下ろしたが立っていた。だが、そのはなぜか顔だけがモザイクでもかかっているかのように表が窺えない。
「誰かと聞かれると答えに困るけれど、そうね……幽霊とでも言っておきましょうかしら」
そのは戯けるような聲でそう言った。
「ココは一なんなの。早くココから出してちょうだい」
そのへ、持っていた銃の銃口を向け、ヒカリはそう言い放った。
「うーん…それは出來ないわ」
「ふざけてないでさっさと出せっつってんのよ!!!」
彼の戯けるような口調にヒカリの怒りはピークに達し、銃の引き金を引いた。だが、その弾丸は先刻同様にのをすり抜けて虛空へと消えた。
「レディーがそんな言葉遣いをするものじゃないわ。それに、さっきも言ったけど、ココでは銃なんて意味ないわ」
なぜ?と聞く前に彼は話を続けた。
「ココはあなたの記憶の世界。あなたのが覚えていることをに再現しているの。今見ているのはその記憶よ」
「………の……記憶…………」
ヒカリはその言葉を改めて聲に出した。
「そうよ。だから、忘れる事はないの。そして、記憶とは過去の出來事。その弾丸で過去を書き換えられたりしない限り、記憶が書き換わることもないのよ」
「そんな…………」
ヒカリは絶した。ヒカリの記憶の中には楽しかった記憶はほとんど無い。つまり、ココにいる限り地獄のような記憶と向き合い続けなければならないのだ。
「でも安心して、待っていればすぐに出られるわ」
「どういうこと…?」
彼の口から放たれた言葉に対し、疑問を投げかける。
「ココにったら自分の意思で出ることは出來ないわ。けれど、あなたの中の『最も快な記憶』と『最も不快な記憶』の〈追観リプレイ〉を見れば、自的に出られるようになるわ」
「そんな……」
ヒカリはその言葉に暗然とし、膝から崩れた。今までで一番の『快』と『不快』を見るという事は、おそらく「あの記憶」も見ることになるだろう。
「多分これが、『快』の記憶ね。じゃあ、これから『不快』の記憶が〈追観リプレイ〉されるわよ」
「ウソっ!!……いやっ!」
さっきとは打って変わって怯えたような聲でそうぶが、無慈悲にも視界いっぱいの草原は幾何學模様に呑まれ、その姿を変えた。
ヒカリは自の中の最も不快な記憶の〈追観リプレイ〉を強いられた。
次に現れた空間は、暗く異様だった。
突然の暗闇でヒカリはを見ることができない。だが、視覚より先に信號を送ったのは嗅覚だった。
なぜならそこは、強烈な酒とタバコの匂いが充満していたからだ。やがて暗闇に目が慣れると、ある程度が見えるようになる。すると、ココは一般民家のリビングであることがわかる。だが、フローリング製の床には空の一升瓶がいくつか転がっており、中央に設けられたテーブルには、灰皿と、溢れかえりそうな大量の吸い殻が積まれていた。
「ココって……」
ヒカリは恐怖で震えていた。だが、その時。
「きゃあああ!」
突然、悲鳴がヒカリの耳を劈いた。
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