《異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??》自責

 「まま……?」

ヒカリが母親に心配そうな聲をかける。

「このクソガキが!お前のせいで俺の人生めちゃくちゃじゃねえかよ!」

父はヒカリに罵聲を浴びせると、裏拳で毆って立ち去る。

しして、母がヒカリの元へと歩み寄る。そしてその手をヒカリの首に絡め、力を込めて息のを止めようとする。

「ままぁ…………っ!ぐるじぃよぉ……!!」

掠れた悲鳴をあげる。対して、母。

「お前がいなきゃ…!お前が生まれてなければ……っ!こんなことにはならなかったんだよ……っ!!」

ヒカリは生まれる事を神に許された。だが、周囲の人間は生きる事を許さなかった。

その間にも、ヒカリの意識は遠のいていく。

「この…疫病神があ!!お前のせいだ…!全部お前のせいだ……ッ!!」

ヒカリは自らの死をじた。すぐ目と鼻の先で死が自分に手招きをする。そんな覚。

だが、ヒカリはそれを拒んだ。

ヒカリの本能が、全のあらゆる細胞に『生きろ』とんだ。んでしまった。

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ヒカリは手をバタつかせ、手元にあった空の酒瓶で、母の後頭部を毆り抜いた。

同時に母の手から力が抜ける。ヒカリは母からの怨嗟を背にけながら、家から逃げ出した。

 逃げ出した時刻は25時。間違っても中學二年生のが一人で外出して良い時間では無い。

ヒカリは近所の公園のブランコに一人腰掛け、考えていた。

これから家に帰るか。そんな事をしようものならアタシはパパとママに殺される。

警察に通報するか。果たして警察は真面目に取り合ってくれるだろうか。警が両親を呼んだらそれは死と同義だ。

そんな事を考えていると、背後から聲をかけられる。

「そんなところで何してるの?」

齢はヒカリと同じくらいの。夜闇に紛れてその面は見えない。

「あなた……誰…?」

ヒカリは小首を傾げてに尋ねる。

「私は※※※。あなたは城嶺ヒカリさんね?」

「どうしてアタシの名前を……?」

「そんなことはどうでもいいの。今はあなたの命が先決よ」

は優しくヒカリの頰をでる。

「もう一度お家に帰ってみよ?」

「ダメよ!!そんなことしたら…………殺されちゃうよ……」

は帰宅を勧告したが、今更のこのこと帰っても何も変わらない。どころか普段より強く暴力を振るわれ、今度こそヒカリの命はない。

ヒカリは俯いていった。ヒカリに帰る場所はない。あるのは地獄のような場所だけだ。學校も、家も、どこにいても…………。

「いいから、帰りな。何かあったら、その能力でを守ればいいじゃない」

「なんでこの能力のことを……!?」

ばっと顔を上げを見ようとする。だが、そのの姿はなかった。

孤獨に乾いた夜風が、ヒカリの鼻先を掠める。

「………………帰ろう……」

に言われた通り、帰宅することを決意する。

もし暴力を振るわれたとしても、それは自分が招いた結果だ。

もし自分の命が潰えても、それは両親がんでいることだ。

そう自分に言い聞かせるように。

ヒカリはブランコから立ち上がり、自宅へと足を向けた。

玄関扉の前で立ち止まり、一度深呼吸をしてから戸を開く。

「た、ただいま…………」

小さな聲でそう言う。だが、帰ってくるのは木霊こだました自分の聲のみ。

「…………まま…?……ぱぱ……………?」

真っ暗な家の中でそう言うが、やはり返事はない。

誰も家にはいないのだろうか。だとしたら、明日謝るべきだろうか。

そんなことを考えながらリビングへ向かう。

燈りもつけずに暗闇のリビングを歩く。だが、人の気配はない。

ヒカリは踵を返し、自室に戻ろうとする。

すると、ヒカリは何かにぶつかってしまう。

まずい。父とぶつかってしまっただろうか。また毆られる。謝らなきゃ。謝らなきゃ。謝らなきゃ。謝らなきゃ…。

「ご、ご、ごめんなさい!!」

震える聲で必死に謝る。だが、呼応する聲はない。勘違いだろうか。否。今まで暗闇に包まれていたダイニングの中で、そのシルエットが見え始める。

ヒカリば自分の周りの電磁波の周波數を下げ、一気に視界をクリアにする。

そして、見つけた。見つけてしまった。

自分が衝突したものの正を。

最初に見えたそれは、足。ゆっくりと視線を上へと向ける。

「う、うそ…………まま…?」

それは首を吊ったヒカリの母親だった。

何故に母が首を吊っているのか。そんなことは考えるまでもない。

全てアタシのせいだ……。

アタシがこの能力を使わなければ。

アタシがもっと早く死んでいれば。

アタシが─────生まれて來なければ……。

「ぃいいやぁぁあああ!!」

ヒカリがぶと同時。玄関扉が強く開け放たれ、五、六人の全を武裝した集団がってくる。

うち一人が、被っていたフルフェイスのヘルメットをぎ、手を差しべる。

長くびた黒い髪と、真面目そうな雙眸。

その人は言った。

「城嶺ヒカリさん。私は聖アニュッシュ學園の浜曷というものです。ご同行願います」

ヒカリは無言でその手を取った。

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