《異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??》自棄

「俺に………行かせてくれないか……」

コウジは、真剣な眼差しでサナエを見つめながらそう言った。

「コウジくん!?何言ってるんだよ!今回が初陣だろ!?君には危険すぎるよ!」

レンタが驚いた様子で抑止しようとする。

だが、コウジが頼み込んでいるのはあくまでもサナエだ。

が許諾さえすれば、それでいい。

「其れは出來ぬ。これ以上長時間、人手を割く訳にはいかんのだ」

サナエがそう強く言う。しかし、ここで折れては意味がないのだ。コウジは一刻も早く、ヒカリの元へと向かわなければならない。

「そこをなんとか……」

コウジはそう言いながら深々と頭を下げ、心の底からサナエに頼み込んだ。

「……」

「頼む………」

コウジは完全に地面のみを見ていたが、サナエが難しい顔をしていることは容易に想像できた。

それだけ無茶な頼みをしているのだから當然だ。

しかし、サナエの反応はコウジの予想の範囲外だった。

サナエは、ふふっ。と優しく笑ったのだ。

「わかった、認めよう。但ただし、城嶺も塚田も無傷で戻ってこい。其れが條件だ」

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真剣な、しかし、それでいてどこか優しい口調でそう言うと、サナエはコウジの背を叩いた。

「……っ!ありがとう!!」

サナエから許諾の言葉をけ取り、コウジは全速でヒカリの元へと向かった。

─────────────────

同時、ヒカリは。

銃口を【排斥対象イントゥルージョン】の中樞に向けて、発砲。

背後から【排斥対象イントゥルージョン】が接近、その前腳で攻撃を仕掛けられる。

ヒカリは大きく跳躍。を翻ひるがえし、著地し、発砲。

まだだ。まだ足りない。もっと、もっと殺さなきゃ…。

そんな焦燥が、ヒカリの頭を満たしていた。

今まで、ヒカリは「母親の治療費を稼ぐ」という名分のもとで【排斥対象イントゥルージョン】を殺してきた。

しかし、その母親を亡くした今、彼に生きる目的や理由は存在しない。

は考えた。

自分はこれから、一何をして生きればいいのか。

人は、その生涯に目的があるから生きられる。些細な目的は引っ切り無しに生まれ、巨大な目的はその達のために生涯を費やせる。

結婚がしたい、車がしい、子供がしい、しいが買いたい、好きな蕓能人のイベントに行きたい、志校に學したい……。そんな大小様々な目的は、人間という生機関を駆するのに必要不可欠な燃料である。

だが、今のヒカリにはその燃料が無い。底を盡きてしまったのだ。

車が燃料無しでは走れぬように、人は目的無くして生き続けることはできない。

ヒカリは答えを察していた。

─────────死ぬしかない、と。

ヒカリにとって、自らの一生に幕を下ろし、覚めることのない眠りにつくのは、決して難しいことではない。

しかし、ただ死ぬことはヒカリのプライドが許さない。

故にヒカリは

“このまま死ぬくらいなら一でも多く【排斥対象イントゥルージョン】を道連れにしてやる”

そう決めたのだ。

そして、ヒカリは作戦を無視し、その雙銃を巧みにって【排斥対象イントゥルージョン】の殄戮りくめつを開始したのだ。

「まだ……まだよ…。もっと殺さなきゃ、アタシは死ねない!」

そうびながら、頻りに引き金を引く。

弾丸は、何いずれも狂い無く【排斥対象イントゥルージョン】の中樞を破壊する。

次いで、前方に一の【排斥対象イントゥルージョン】を確認。

ヒカリは【排斥対象イントゥルージョン】に向かって直進する。

だが、奇妙な浮遊がヒカリのを襲った。

視界が回転していく。

足元を見ると、散らばった大量の瓦礫があった。

その瓦礫を踏み、バランスを崩し、足首をひねってしまったのだ。

転倒するヒカリ。全力で駆けていたため、転倒する際にが大きく前方へと投げ出される。

眼と鼻の先に、【排斥対象イントゥルージョン】がいる。

「(あ。アタシ、ここで死ぬのね。)」

奇妙な確信。

【排斥対象イントゥルージョン】の前腳がヒカリをめがけて振り下ろされる。

本來であれば一瞬であるはずが、何分にも引きばされてじられる。

引きばされた時間は、ヒカリをより深い絶と後悔へと叩き落とした。

もっと味しいものを食べたかった。

もっとお弁當を作りたかった。

もっと歩きたかった。

もっとお喋りをしたかった。

もっと笑いたかった。

もっと怒りたかった。

もっと泣きたかった。

もっとびたかった。

もっと自分を現したかった。

もっと、もっと、もっともっと……。

もっと、生きたかった。

悔しさと悲しさが、互いに渦を巻きながら、ヒカリの肺腑を満たす。

しかし、その口から溢れたのは、絡んだとは裏返しの言葉だった。

「………………バイバイ」

と、ヒカリは呟いた。

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