《異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??》遭逢

近づくにつれ、だんだんと場ゲートが巨大になっていく。

「で、これからどうするんだ?まさかチケット買う訳じゃないだろ?」

場するにはチケットがいる。だが、チケットを買うにも長蛇の列がある。

一刻を爭う事態を前に、このタイムロスはかなりの痛手になる。

一人でも犠牲者を減らすには、1秒でも早く犯人───那原マサタを探し出さなければならない。

「無論だ。塚田、あの柵を消してしい」

「…えっ」

「あの柵を消し、もう一度柵を作ってしい」

そう言って、場ゲートの隣にある高さ4メートルほどの巨大な柵を指差した。

「……分かったよ…」

もうなんと言うか、行力の塊のような人だ。強行突破、全速前進、豬突猛進。

立ち止まったり、知恵を働かせたりはしないのだろうか?

そんなことを考えつつ、コウジは柵を見やった。

赤錆ができており、塗裝は所々剝げかかっている。

柵に近づき、爪で柵を弾く。

コーン、と、小気味良い音が響く。

恐らく、柵の部は空。材質は鉄。質量はおおよそ600kgといったところだろうか。

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コウジの才華である〈等重変換Equal Dead-Weight〉は、右手でれたと等しい質量のを左手から生み出す能力。

つまり、柵を消し飛ばすと言うことは、柵と同じ重さの別の何かを作る必要があるのだ。

コウジは一つ息を吐くと、右手に漆黒の、左手に純白の炎を燈し、柵にれる。

そして呟くように言う。

「開華…〈等重変換Equal Dead-Weight〉」

アテスターの前方に施された竜膽りんどうの意匠が眩しく瞬き、眼前に聳そびえていた柵が一瞬にして消え去る。

そして、一瞬後に左手から銀の新たな柵が生まれる。

その一瞬の間に、コウジとサナエは園に侵する。

新たな柵は、その下部に板のようなものがついている。元々地面に刺さっていた柵を新たに作った為、風等で倒れないように、底面を板狀にした。材質はコバルト。一般人であれば気づきはしないだろう。

だが、ここでまた問題が生じる。

広大な敷地面積を誇るこのアミューズメントパークで、たった一人の年を探し出すのは極めて難しい。

すると、サナエは徐おもむろに小さな機械を取り出し、何やらボタンを押す。瞬間、先ほどまで野球ボール程度の大きさだったその機械は、カシャカシャと音を立てて大きく変容していく。やがてその機械は、バレーボールほどの大きさになる。

そして、サナエはそれを軽く中空に投げ、足元まで落ちてきたときに──────勢いよく蹴り上げた。より高く舞い上がった球は、場ゲートの上に乗り、靜止した。

「な、なんだ…今のは?」

「學園が作ったハッキングツールだ。アレでパークの凡あらゆるカメラの映像を覗き、犯人の顔を照合し、居場所を洗い出せる」

「普通に犯罪じゃねえか」

もっとも、不當に園に侵した時點で人のことは言えないのだが。

すると、コウジがそんなツッコミをれてから、ものの30秒でアテスターから機械音のような聲が聞こえた。

『保護対象の位置を補足。現在地より北東に距離700mです』

「行くぞ!」

「ああ!!」

駆け抜けること、約3分。パークでも一際に人気の多い場所に行き著く。

すぐ近くにはジェットコースターがあり、ここで才華を使った戦闘が起これば怪我人は大勢出るだろう。

「何処だ、那原マサタは…?」

「………なあ、ちょっといいか?」

「何だ」

焦燥に満ちた口調のサナエに、コウジが問いかける。

「なんで、そんなに焦ってるんだ?」

「……それは、今我らが為する可べき事と関係が有るのか?」

「ああ、あるさ。焦りとか怒りとか、心に余裕のない奴ほど簡単に負けるからな」

それに。と、コウジは続ける。

「さっきヘリでレンタに聞いたら、普段はそんなに慌てたりしないらしいじゃないか。新生の保護にも、特に興味がないらしいし。はっきり言って、明らかに今の鵞糜は変だ」

そう言い切ると、サナエは目を伏せ「そうか…」と、小さく呟いた。

しかし、すぐに顔を上げ、コウジの目を見據えた。

「詳しい事は、帰還したら話そう。今は、那原マサタを拿捕だほし、保護することが最優先だ」

「わかった。でも、負けるなよ」

真剣な眼差しで最後の忠告をする。

「任せろ。なに、し肩慣らしをするだけさ」

「いやそれ死亡フラグやんけ…」

サナエの不穏な発言に額から汗が流れたが、このくらいの余裕があった方が心強い。

だが、そんな生溫い雰囲気は一瞬で砕け散った。

サナエの背後から、コウジを見據える一つの視線によって。

黒いパーカーを羽織り、下にはグレーのスウェットを履いた年。

長は175前後、フードから覗く髪はダークブルー、その奧にある雙眸は濃紺。

多くの條件が、那原マサタと合致している。

「あ、あの、そこの君…」

犯人である確証は無いが、疑うにたる要素を持ち合わせたその年に、コウジは聲を掛ける。

すると、その年はパーカーのポケットからUSBメモリほどの小さな機械を取り出す。

そして、その機械に取り付けられたスイッチを押した。

カチッ。

瞬間。年の背後にあった池が──────発した。

巨大な水柱を上げて。

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