《異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??》修復

「良い腕をしておるな。那原マサタ」

「てめえも中々な」

邪魔など存在しない、二人だけの世界で鎬を削る。一度距離を取った狀態で、互いの顔を見合う。互いにダメージは無し、あるのは疲労と力の消耗のみ。

僅かな沈黙が、二人の周囲を包む。

それを破り、き出したのは、またしてもマサタ。

瞬間、サナエの眼前にもう一人サナエが現れる。否、巨大な平面鏡が眼前に展開されていた。

剎那の逡巡の後、サナエはその場から右手側へと飛び退く。だが、勝負の世界では剎那でさえも致命的。

鏡が消えたかと思うと、今度はマサタが先刻までサナエがいた場所に矛先を突き立てていた。

マサタはすぐに、サナエが自分の攻撃を躱していたことに気づく。

それと同時に、サナエ目掛けて再び薙刀を振り抜く。

「くっ…」

歯がみをしながら、サナエはさらに後方へ。

だが、き出しで遅れたサナエは、簡単にマサタに追いつかれる。

殘された手は………迎撃のみ。

サナエは手にした日本刀を高く振り上げ、至近距離へと接近したマサタへ向け、それを振り下ろす。

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その太刀筋は真っ直ぐにマサタのを両斷する。─────────はずだった。

ガギッ。鈍い金屬音。サナエの刀が弾き返された。

明らかな手応えの違和に、サナエは驚愕した。

マサタは───左腕でサナエの攻撃を防いだのだ。見ると、その左腕は銀に変していた。

まるで──────────鏡のように。

「んな……!」

サナエの日本刀は振り下ろす途中で、マサタの左腕によって止められた。それはつまり、サナエのから下が完全に無防備になったことを示唆している。既にマサタは、サナエの懐にり込んでいる。

回避はできない。

死が、訪れる。

マサタは、次いで自の右手から薙刀を放すと、そのまま拳を作る。その右手は、鏡のような銀に変している。

拳は、迷いなくサナエの鳩尾にぶつかった。「がは…っ!」

橫隔に拳がぶつかり、呼吸が止まる。

肺の中の空気が全て抜けるような覚。

激痛が、肺を満たす。

だが、サナエは一瞬を逃さなかった。

屈んだ勢でサナエに拳を打ち込んだマサタは、サナエから見れば、その背中が大きく開いていることになる。手にしていた日本刀を逆手に持ち替え、そのままマサタへと刀を突き立てる。

しかし────。

「んくらい、読めてんだよ」

マサタはを翻し、鋒を躱した。

結果、マサタという到達點を失った鋒は、そのまま進み…………サナエ自の腹を刺し貫いた。

鋒が、背中から顔を覗かせる。

「ぐぁはっ………」

の奧からが噴き出す。頭からの気が引き、意識が遠のいていく。

傷口と鋒から、止めどなくが垂れ流れていく。

サナエはそのまま…地面へと倒れ込んだ。

「アンタ、いい腕だったよ」

マサタは突っ伏したサナエにそう言うと、背を向けて立ち去ろうとした。

だが。

背中から、れて、今にも途絶えそうな聲が聞こえた。その聲は言った。

「開…華……〈司じ…刻刀ごくとう…〉魅ミ…遡ソ……斬ギ…」

それを聞き、マサタが振り返ると───サナエが不敵に笑っていた。

瞬間、サナエのアテスターが赤橙に輝く。

すると、重力を無視するようにサナエが立ち上がる。

まるで────倒れ込む過程を逆再生しているかのように………。

サナエは立ち上がると、自らのに刺さっていた刀を引き抜いた。それと同時に、傷口から溢れ、周囲に撒き散らされていたが、傷口へと収束していく。やがて傷そのものが無くなり、彼はみるみるうちに修復される。

そして、サナエのは─────完全に治癒した。

「説明してくれ、鵞糜の才華は一どんな能力なんだ…?」

「彼の才華は─────時間をる能力だよ」

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